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【試し読み】『シモーヌ Les Simones』VOL.1 特集:シモーヌ・ド・ボーヴォワール

国際女性デー特集

現代書館フェミ本試し読み④

3月8日の国際女性デーにちなんで、現代書館のフェミニズム関連本をご紹介しています。4冊目は2019年11月に創刊した雑誌感覚で読めるフェミニズム入門ブック『シモーヌ Les Simones』です。

創刊号特集は哲学者、作家であるシモーヌ・ド・ボーヴォワール。1949年に『第二の性』が刊行されてから70年、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」からもう一歩踏み出すために、5人の研究者に彼女の思想をさまざまな視点で平易に論じていただきました。ここでは、この特集の序文をご紹介致します。

シモーヌ帯あり・大

シモーヌ・ド・ボーヴォワール「女であること」:70年後の《第二の性》

 作家・哲学者として、生涯「書くこと」を通して「女性の解放」を体現し続けたシモーヌ・ド・ボーヴォワール(1908-1986)。
 今日その名が挙げられるべきは、「ジャン=ポール・サルトルのパートナー」としてではなく、1949年に発表されたフェミニズムの古典『第二の性』をはじめとするエッセイや小説、回想録など、多くの作品を遺したひとりの豊かな作家としてである。
 当時のフランス社会にスキャンダルを巻き起こし、世界中の多くの女性たちの意識を揺さぶったこのエッセイ。
 彼女自身、それまで自分が「女であること」を意識したことはとくになく、この本を書くことを通して「発見」していったのだという。
 「女である」とはどういうことなのか? 
 その事実に向き合い、歴史的・社会的につくられる「女というもの」の宿命と条件とを自らの意志で超越しようとした、ボーヴォワールの「個人的革命」。
 それはやがて「女たちの革命」となり、今日においてもなお、すべての人が人として生きるための「指南の書」として、私たちの意識を支え続けている。

ボーヴォワールとサルトル(1920年代、パリ)

ボーヴォワールとサルトル(1920年代、パリ)

On ne naît pas femme, on le devient.
人は女に生まれるのではない、女になるのだ。

Simone de Beauvoir, Le Deuxième Sexe II, Gallimard, 1949.
(シモーヌ・ド・ボーヴォワール 『[決定版] 第二の性 Ⅱ 体験[上]』、『第二の性』を原文で読み直す会訳、新潮文庫、 2001年)

 あまりにも有名すぎるこのフレーズ。実際のところ何を意味するのか? 「女という神話」とは?
 ボーヴォワールは言う。「女」とは「つくりもの」である、と。それは、それぞれの女の子が育ってゆく過程において、しつけや教育や社会の慣習といった環境によってつくり上げられる「女という神話」だ。
 女性は大人になるにつれ、それが外から押しつけられた「つくりもの」のイメージだということに気づくことなく、あたりまえのように受け入れ、内面化してしまう。
 そしていつのまにかそのイメージこそが自分のあるべき姿なのだと思い込み、知ってか識らずか、そこから外れないよう、イメージに沿った生き方を選択する。
 「女である」とは、「男である」とは、どういうことなのか?
 ボーヴォワールがそう問うたのは70年前。
 今、私たちはどれくらい「自分」を生きられるようになっただろうか?

テキスト:新行内美和

●特集 シモーヌ・ド・ボーヴォワール「女であること」: 70年後の《第二の性》
木村信子 シモーヌ・ド・ボーヴォワール『第二の性』
棚沢直子 『第二の性』から七〇年後、日本から問う新たな女性思想)
佐野泰之 哲学的問題を生きるということ――ボーヴォワールの小説作品の魅力)
中村彩 「育ちの良い娘」はどうやって知識人になったのか――ボーヴォワール『娘時代』と女性解放)
藤高和輝 「なる」ものとしてのジェンダー
ボーヴォワール・ストーリー
はじめてのボーヴォワール

●エッセイ・コラム寄稿
斎藤美奈子 「冬の時代」に関するちょっとしたお話
北村紗衣 シモーヌのBB、スタイネムのマリリン――フェミニストが愛したセックスシンボルたち
鈴木みのり 好きなリップを塗る自由――ハロプロの新しい魅力を模索するアイドルたち
福田和香子 乾いた喉、土砂降りの夜。
上間常正 ファッションとジェンダー、フェミニズム
坂井セシル 日仏間の女性の眼差し
山下恒男 「かわいい」と「怖い」
小林美香 身体の見方を学ぶために
玖保樹鈴 裸のかかとを踏み鳴らし、彼女は今日も声をあげる――女優・石川優実のこと
なとせ #0727 #その後
想田和弘 夫婦別姓訴訟の原告になる
新行内美和 魔女たちのスープ
小野春 マンガ・女同士で子育てしたら
和田靜香 「第1回わんぱく相撲女子全国大会」を観に行く

●連載
インベカヲリ★巻頭グラビアRenaître――女は生まれなおしている(No1石川優実)
ふみがわのフェミ短歌塾(二三川練)
パリのシモーヌたち Les Simones à Paris(アトランさやか)
シモーヌシネマレビュー(中野理惠)
シモーヌブックガイド
書店からはじまるフェミニズム(西荻窪・今野書店/水越麻由子)
ずるこのおんな食べ物帖(江戸川ずるこ)
未来のシモーヌ


VOL.2の特集は印象派画家メアリー・カサットです(2020年4月下旬発行予定)。どうぞお楽しみに!

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