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思ったこと、考えたこと。

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日常のなかで思ったこと、考えたことなどを、綴っていこうと思います。
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記事一覧

【本の紹介】高井ゆと里編『トランスジェンダーと性別変更』(岩波書店)

 岩波書店から刊行された、高井ゆと里編『トランスジェンダーと性別変更』は、編者合わせて5人の執筆陣から成る一冊です。「岩波ブックレット」シリーズゆえ、80ページほどの分量で活字も大きく、専門性の高い内容については、著者たちがわかりやすく解きほぐしながら解説してくれます。高校生くらいから、十分に読める難易度かと思います。  読了後、私の胸には、さまざまな思いや記憶が去来しています。それらをまだうまく言葉にまとめることはできないのですが、いま、このときに私の思うところを、sta

【国語トーク】大人のためのジュニア向けレーベル!

【自著の宣伝】 『14歳からの文章術』(笠間書院) 書くことを、もっともっと楽しむために。

【国語トーク】「読んだ本の内容を忘れちゃうんです…」

国語とか現代文とかを教えていると、しばしば、こんな質問や相談を受けることがあります。すなわち、 だなんて。そしてそうした質問や相談に対する私の第一声は、 おお、なるほどなるほど。実は私も! です。 というわけで、今回の【国語トーク】、お題は「読んだ本の内容を忘れちゃうんです…」。どうぞお聴きください!↓↓↓ 【自著の宣伝】 『無敵の現代文』(かんき出版) どうしても読んだ本の内容を覚えておかねばならないときは、やはり[要約]が効きます。学参ですが、広く大人の皆様に

【国語トーク】複数テクスト問題について思うこと

もはや、なし崩し的に世の中に受け入れられた感すらある現代文の[複数テクスト問題]について、私はやはり、懸念を抱いています。これまでもあちらこちらで発言してきたことですが、出題の仕方によっては、"思考力"なるものとは対極的な方向へ行ってしまうのではないか、と。 【自著の宣伝】 『14歳からの文章術』(笠間書院) 伝わる文章を、いかに構成するか──というテーマについて、豊富な具体例や対話などを通じて楽しく学べる一冊です!

【国語トーク】「おすすめの詩や詩人を教えてください!」と言われたら?

国語や現代文の授業で、「詩、読もうぜ!」みたいな話をすると、「どんな詩がオススメですか?」とか、「読んだほうがいい詩人を教えてください」みたいな質問を受けることがあります。 嬉しい。 とても嬉しい。 とても嬉しい……のですが、私、こうした質問に答えるのがめちゃくちゃ苦手なんです。なぜって、 詩ほど、個々人で好き嫌い、わかるわからないが別れる文章もなかなかにない! と思うゆえ……。 というわけで、stand.fm[ちゃんねるヨージ]【国語トーク】の第2弾は、「『おす

【国語トーク】国語と文体について。

 先日、threadsでこんなことをつぶやきました。 https://www.threads.net/@koike_yoji/post/C2Wdu20PkBg/?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==  どうしてこんなことを考えたか……と言うと、そのきっかけは、伊波敏男『ハンセン病を生きて』(岩波ジュニア新書)を読んだことです。  なぜこの一冊を読んで「国語」と「文体」というものについて考えたか。ご興味を感じられた方は、以下の放送をお聴きいただければと思います。

「うみかじ」1号を読んで

 それにしても、誰か──しかも、会ったこともない、顔を見たことすらない人の「日記」を読むとは、いったいどういうことなのか。  書く人も、印刷物にそれを載せる以上、読み手の存在を意識していることは間違いない。  とはいえ「日記」が「日記」である以上、そこに刻まれる言葉は極めてプライベートなものであり────などと考えながら「うみの辺野古日記。」(「うみかじ」1号に所収)に目を通しているうちに、ふと、目にとまる一節に出会った。  日付には、10 月29日(土)とある。  

2023年に出版した自著

2023年に出版した自著は、以下の3冊になります。 『現代評論キーワード講義』(三省堂) 受験参考書です。現代評論を読み解くうえで重要な100のキーワードについて、それぞれ見開き両ページで解説しています。何より、読み物としての"面白さ"あるいは"読み応え"にこだわりました。また、200冊を超えるブックガイド、それにミニ辞書なども掲載。高校生や受験生が、受験勉強を通じて知的好奇心や社会の未来への関心を高められることを企図しています。そして……願わくは、高校生、受験生のみなら

さ…る…と…か…に…

初めて一人で読めるようになった絵本は、『さるとかに』だった。もちろん音読だったが、よほど嬉しかったのか、幼い私は、 などと、一字一字を拾い上げながら声に出し、親や、親戚や、来客に"読み聞かせ"をしたものだ。 親も、親戚も、来客も、「すごい、すごい」「ご本を読めてえらいねぇ!」と褒めてくれた。 黙読、ということを意識したのは、小学校一年生のときだ。家に遊びに来ていた同級生が、古田足日の『大きい1年生と小さな2年生』を、声を出さずに読み耽っていた。それを見た私の親が、一緒に

「あはれ」について

中学生のとき、抜き打ちの「古文単語テスト」が実施されたことを覚えている。 無論、まったく対策などしていなかった。 だが、さすがに0点は取りたくない。 さはれ──などという古語はもちろん知らなかったが──と心を固めた私は、とある作戦を決行した。 そういえば、古文の授業でやたら「趣き深い」という言葉を耳にした記憶があったのだ。 ならば「趣き深い」──と言われても当時の私には、この現代語自体の意味がよくつかめなく、いわばシニフィエなきシニフィアンとして脳裏に漂う音にすぎな

目標、一つ。

これからの目標。 何かしらの言葉を知っている/知らない、ということを、その人を評価する基準とするのはやめようと思う。 大切なのは、知ろうとする意志だ。 ただし、自分が知らなかったことについては、素直に恥じること。とくに、知らないくせに知っているかのように語ってしまったときには。あるいは、自分の無知が、誰か──とりわけ、社会的に弱い立場にある人たちを傷つけ、虐げてしまっていた場合には。 【自著の宣伝】 『14歳からの文章術』(笠間書院) 『深読みの技法』(笠間書院)

「しろすな」かけよーぜ!

子どもの頃、つくりましたよね、どろだんご。で、そのとき公園の"ひみつのばしょ"から白い砂をかき集めてきて、 だなんてドヤ顔してませんでした?? 私の場合、記憶にある"ひみつのばしょ"は、すべり台の、すべるあそこ(なんて呼ぶんだ?)の下の空間でした。 すごいなぁ……と思うのは、こうした文化──私は、こうした物事を、比喩でも誇張でもなく、文化と呼びます。いやむしろ、これが文化でなくて何が文化だ、とすら──が、いまも、確かに、子どもたちのあいだに受け継がれていること。先日、公

『いたずら きかんしゃ ちゅう ちゅう』の思い出

本にまつわる、原体験とも言える思い出は多々ある(原体験なのに"多々"というのはおかしいかもしれないが……)。 なかでも、『いたずら きかんしゃ ちゅう ちゅう』──寝る前に母に読み聞かせてもらった、この、絵本にしては長い、壮大なストーリーが展開される物語の、とあるページには、なんというか、存在の根源に関わるような、恐れにも似た思いを抱いたものだ。 そのページとは、いたずらで悪ガキな蒸気機関車「ちゅうちゅう」が、暴走に暴走を重ね、気づけば廃線に迷い込み、そして、ひとりぼっち

菅野真文「「困難」なのは誰なのか」を読んで

 思うところあり、菅野真文の論考「「困難」なのは誰なのか」『教育』12月号No.935(旬報社、2023年)を読む。  論者である菅野はいわゆる「教育困難校」で教鞭をとる高校教諭で、専門は、地理歴史・公民である。 自分のこととして  菅野は言う。学習における様々な主題において、生徒たちが、それを「自分事と考える」ことのできるような授業の重要性を(p. 26)。「社会の実態を自分事として捉えたうえで、どう生きるかを考える学習」の必要性を(p. 27)。  当事者であると