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マネージャーが語る、Platform Engineering Chapter設立の背景とこれから

「世界一のエンターテイメント・テックカンパニー」を目指すGENDA。プロダクト開発のパフォーマンスを最大化させるために、2024年7月に「Platform Engineering Chapter」を設立しました。拡大を続けるGENDAの開発組織に耐えうる体制を構築すべく、これまでのテック組織における各部署の役割を整理し、組織変更を実施。

今回は、新設された「Platform Engineering Chapter」設立の意図と背景、将来の展望について、Platform Engineering Chapterを率いるエンジニアリングマネージャー、池田さんに伺いました。

プロフィール

池田健人
株式会社GENDA Platform Engineering Chapter マネージャー

2011年にヤフー株式会社に入社。Yahoo!ニュース トピックス等のリプレイスや開発・保守運用を担当。その後、マネジメントや新規本部の開発組織立ち上げを行う。2019年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現 株式会社ZOZO)に入社しCTO室やZOZO CSIRTの設立に携わり、エンジニア採用や教育など幅広くエンジニアリング組織のマネジメントを行う。現在は株式会社GENDAでエンジニアリングマネージャーとして従事しながら、株式会社ZINE 取締役CTOに就任。AWS Community Builder(Front-End Web & Mobile領域)に2021年から継続して採択される。AWS User Group Leaders。Amplify Japan User Group 運営メンバー。一般社団法人 日本CTO協会 個人会員・スタッフ(プロボノ)。NPO法人CancerWith 理事。

ーGENDAのテック組織で組織変更が実施されたそうですが、背景を教えてください

池田:はい、今回テック組織では将来を見据え、組織変更が行われました。

私は2年ほど前、2022年5月に一人目のEMとして入社し、EM ChapterのChapter Leadとして「優秀な人材を集め、その才能を十分に発揮できる文化・組織を組成し、誰しもが憧れる企業にする」というミッションで従事してきました。入社時には、それまでCTOである梶原やVPoEの荒井が個人で担っていた業務に対し、EM Chapterとして、つまりチームとして取り組める体制を作り、それらの業務をスケールできるようにする狙いがありました。

そして、今回は組織拡大を見越した体制・環境構築を意図した組織変更が行われたため、その狙いや今後の展望をお伝えしようと思います。

ー新設された「Platform Engineering Chapter」とはどんなチームですか?

池田:まず、「Platform Engineering Chapter」の役割を説明します。

先日、「Platform Engineering Kaigi 2024」が開催されるなど、「Platform Engineering」は一部では注目されはじめており、認知が拡大していますが、まだまだ耳慣れない方も多いと思うので、まずはこの「Platform Engineering」という言葉が指す内容からご説明します。

Gartnerが公開している『プラットフォーム・エンジニアリングとは何か?』の説明を見てみると、以下のように書かれています。

プラットフォーム・エンジニアリングは、セルフサービス機能とインフラストラクチャ・オペレーションの自動化により、開発者のエクスペリエンスと生産性を向上させます。開発者のエクスペリエンスを最適化し、プロダクト・チームによる顧客価値のデリバリを加速させることが期待できるため、大きく注目されています。

プラットフォーム・エンジニアリングとは何か?

つまり、開発者体験(Developer Experience)の向上を目指していると言えます。

さらに、以下のような記載もあります。

 また、プラットフォーム・エンジニアリングは、従来の枠組みを超えて技術的な作業と知識を活用します。つまり、開発者だけでなく、オペレーションチームやビジネスチームなど、異なる役割の人々が技術的な作業に参加することにより、組織内の異なる部門や役割間でのコラボレーションが促進され、より効率的なプロセスと意思決定が可能になります。

プラットフォーム・エンジニアリングとは何か?

ここに記載のある「従来の枠組みを超えて技術的な作業と知識を活用します」に着目してみると、特に「知識の活用」は、小さな仕組み作りをするだけでも、開発者体験を改善する場面が多いかと思います。

例えば、プロダクト開発をする上で従うべきお作法があった場合、都度その場面に遭遇した人がやり方を調べるのではなく、あらかじめその道標となるドキュメントを用意しておく、さらには簡単に対応できるようなテンプレートを完備しておくだけでも、開発者体験の向上は実現できます。その際には、実際に工数を削減するといった実用面での効果もありますが、何よりも、開発自体ではない慣れない作業への心理的な負担を軽減できます。

このように、開発者が一番パフォーマンスを発揮できる「開発」に集中できるように仕組みを整えて、全体を効率化させる、そうした環境の実現を目指しています。

では、どう実現するのか? その答えが、今回の新チームの組成です。

GENDAにおける、効率を最大化させたプロダクト開発を実現させるために必要な機能が「Platform Engineering」だと考えました。

しかし、「Platform Engineering」で提供すべきプラットフォームは、各社・チームによっても異なります。もちろん、共通となる考え方やノウハウはあるため、その部分は先人たちの知恵・経験を参考にしていきますが、それぞれの現場でニーズや課題が異なるため、最終的にその現場で必要となる活動は自ずと異なってきます。

「Platform Engineering」という言葉・概念が一般化され、各社で実践され始めてきた時期でもあるため、GENDAにおけるあるべき将来像から逆算し、Platform Engineering Chapterを設立しました。

ー今回の組織変更によって、GENDAのテック組織はどう変わったのですか?

池田:今回の組織変更の説明の前に、以前の組織の形からお伝えしますね。

テック組織は、GENDAグループ各社の成長をプロダクト開発の側面からリードしていくことを使命としています。そして、テック組織は、プロダクト開発部・プロダクトマーケティング部・IT戦略部という3つの部で構成されていました。

私は元々プロダクト開発部にEMとして所属していました。プロダクト開発部は、下図のように、複数のChapterで構成されており、実際にコーディングを含む開発を推進する機能が部内に集約されていました。

プロダクト開発部における開発体制のイメージ

テック組織の拡大に伴い、初期はモバイルエンジニア、FE/BEエンジニア、SRE/インフラだけの組織から、順次EM・QA・HRBPが追加され、Chapteが6つまで増えていきました。

2024年5月までのプロダクト開発部の構成

徐々にプロダクト開発部の機能が拡大してきたこともあり、今回の組織再編を進めるにあたって、各チームの役割・使命をより明確にすることができないか、CTO・VPoE・EMで議論を行いました

また、HRBP Chapterに関しては、役割が横断的なものに拡大しており、プロダクト開発部からVPoE付として独立し、3つの部+1つのChapterという状態になっていました。

HRBP Chapterの独立の流れも受け、実は、最初の構想では、単に「EMも横断的な役割が大きいため、HRBP Chapter同様にEM ChapterもVPoE付で独立させてはどうか?」というものでした。そして、同時に「EMという名称は、エンジニアを中心とした技術職の人にはよく知られているが、全社・グループという広い組織に向けてももっとイメージしやすい名称はないか?」という点も課題に感じていました。

ーそこからどのように今回の組織構成に行き着いたのですか?

池田:「EM」の代替となる名称案の1つとして出てきたのが「Platform Engineering」でした。ちょうどテック組織の戦略の一つとして「Platform Engineeringの構築」というものも打ち出された状態ではありましたが、最初はEMの名称を単に「Platform Engineering」に置き換える姿だったので、この名称にすることには違和感があり、候補から外そうかとも思っていました。

しかし、ディスカッションが進むなか、発想を切り替えて「EMだけではなく、SRE/インフラとQAも一緒にしたらPlatform Engineeringでは?」というひらめきに近い流れが誕生しました。EMもSRE/インフラもQAも、これらの役割はプロダクト開発を支えるものであり、これを一気通貫でカバーできる部署があればより効率的だし、これぞPlatform Engineeringが目指している形だと思いました。その結果、プロダクト開発部に残す役割と、新組織に切り出す役割を整理していくと、これが思いのほかしっくりきましたし、テック組織の戦略ともぴたりと一致することに気が付きました。

こちらの図が、3つの部と2つのChapterの立ち位置・役割を整理したものです。特にプロダクト開発部をアプリケーション開発にフォーカスした部隊、Platform Engineering Chapterがプロダクト開発をする際のサポート・伴走役という、分かりやすい組織の関係性を描けたと思います。

役割が明確になったことにより、今後やるべきこと・目指していくことを考える際にも、よりシンプルに意思決定ができる利点もあると思います。また、社内・グループ内の他のチームから見ても、相談時の窓口や、各組織への期待値も明確になったと思います。

ちなみに、先ほど何度か触れてきたテック組織の戦略に関しては、後日このnoteの記事でも紹介していこうと思います。

ー今後、このチームをどう成長させていきたいですか?
池田:先ほども説明した通り、この組織再編は未来を見据えたもので、「Platform Engineering」というキーワードに対しては、まだまだ提供できているものが足りていません。しかし「Platform Engineering」という考え方に関してはChapterのメンバー全員が違和感なく、「自分たちが目指す先はまさしくPlatform Engineeringだ」と言える状態になっています。

今後、さらに「Platform Engineering」を実現させていくために、以下の3点に注力して取り組んでいきます。

  • 小さく始める
     → 「1年かけて何か仕込んで提供開始」といった長期的な方針ではなく、アジャイルに施策を進めていく。試行錯誤を細かく繰り返し、よりニーズにマッチしたPlatform Engineeringを提供していく。

  • 「強制的に使いなさい」と押し付けない
     → セキュリティやガバナンスなど、ルール化すべきところはありますが、あくまでも「Platform Engineering Chapter」は伴走役という立場でプロダクト開発を支え、必要な人が気軽に使えるような姿を目指していく。

  • セルフサービス化
     → 今は人数の面からも、提供できるリソースに限りがあるので、ガイドラインやポータルを有効活用し、それを見て基本的な部分は利用者(プロダクト開発の担当者)が自ら動ける部分を大きくしていく。

上記の考え方を念頭に置きながら、今ある役割・機能で開発組織に提供できる内容を充実させていくと同時に、「Platform Engineering」として必要な新しい領域も検討し、Chapterがカバーする範囲を拡大させていきます。

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