住民投票と今 その2 忘備録

住民投票の告示後は各在阪テレビ局で「都構想討論会」が開催される。ツイッターではよく反対派が偏向報道だと指摘するが、維新側にも言い分はあった。<自民・北野妙子市議、共産・山中智子市議VS松井一郎市長、公明党議員>で各局が激論を放送。松井市長が女性市議と議論する様は本人のキャラもあって印象は良いとは言えず、賛成票を削っているんじゃないかという思いはあった。これを今井府議に聞くとボルテージが上がった。

「松井一郎もわかってんねん。どうしたって女性議員をイジメているように見えることは。だから『吉村知事を出演させてほしい』とテレビ局には訴えていたが全部蹴られた。それは自民と共産の戦略でメディアが乗ったいうことでしょう。吉村知事が出演するなら自共は出演しないと言った。テレビもそれでは討論にならず、松井市長が出演を続けることになった。吉村知事も怒っていた。だから維新党本部でも吉村知事を出演させるように言ったがはねられた。1回目の橋下徹のときもそう。大阪府全体の都構想の話でなぜ知事が議論できないのか。おかしいやん。あれも僅差否決の要因違うか」

反対派だけでなく維新支持者がメディア偏向だと憤る決定打となったのは投票がまじかに迫った時期に飛び出した毎日新聞の「218億円」報道。せめて告示前なら丁寧に反論できたが、直前ではそのまま放置したら報道が正しいことになるので反論はしたいが丁寧に訴える時間は残されていなかった。それを認識したタイミングで戦略的に報道したものだと思っている」(今井氏)

反対派にとっては反論したくなるところではあるが、「218億円」報道が維新、維新支持者のメディア不信を強めたものであることは間違いない。都構想の戦略本部を立ち上げて昨年8月から事務局長として広報戦略を練ってきた横山英幸幹事長もこう指摘する。

「200億円と自民党が党の主張として出すのはいいです。しかし、あのタイミングであんな形で放り込んでくるのはルール違反ではないか」。毎日新聞は「大阪市 4分割で218億円増」と報道、後追いの朝日新聞とNHKは「都構想でコスト増」と報道して訂正をすることになる。「メディアでさえ間違う問題を毎日はアウトにならない表現であのタイミングで報じることができた。何らかの狙いを持って報道したと感じるのはそこです」

行政区から4特別区になることでコスト増になる。どれだけ増えるのか。独自で200億円と試算し、法定協議会で議論はされてきた。あの時点ですべてをクリアにして解決していれば、毎日の218億円騒動はなかったのではないか?

「あれを川嶋議員と法定協でやり切ったとしても、毎日の報道はどうなっていたかわからない。都構想で議論すべき論点は複雑で多岐に渡り、最後まで何がトリガーになっていたかもちょっとわからない…」

維新の新旧幹事長に話を聞いた。両者が挙げた敗因に「218億円」報道がある。今井府議はそれに加えて大阪市民の独特の土着愛を上げた。何度も街宣に入った平野区など市南部には祭りを愛し、大阪市を愛する気持ちが強い。いくらメリットを掲げても、自民党ポスターが煽ったような澪標が消えるイメージ。大阪市がなくなるイメージは根強い」※「大阪市がなくなる、なくならへんねんけどな~」という会話が続くとき、維新の政令市・大阪市はなくなる、住んでいる町が消えるのとは違う!という心の叫びが聞こえた。

では3度目の住民投票は頭にあるのか。「それは先の世代が考えること。論点の多い都構想は1時間半個別指導や10人ほどの座談会でみっちり説明したらメリットは伝わる。しかし、街宣で『住民サービスがよくなります』だけでは伝わらない。逆にそういうやり方は住民に不誠実と思います。説明不足といわれるが、永遠に説明不足…(笑)可能な限りで改革を続けていきますが、これをクリアして次に都構想住民投票をやるというのは…10年スパンちゃいますかね…」※制度を熟知するがゆえ、それほど論点の多い都構想をいかに伝えきるか。住民投票というやり方が正しいのか。それを維新は考え始めている。それは議論のひとつではあるが、大阪市存続を希望する人にとっては怖い話だと思う。広域一元化条例というルートなのか住民投票以外の何らかのよりよいルートなのかわからないがその先に澪標はなくなるのだから。




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