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自己紹介と最近の講演録

note開設にあたり、自己紹介を兼ねて最近の講演で話した内容を掲載することにしました。次の記事からは、テーマ毎に深めていこうと考えています。


5名で創業

 私は、大学を卒業と同時に、現在の富士フイルムビジネスイノベーションジャパンという会社に営業職として入社しました。
 29歳で一所懸命働いていたことが評価されたのか、新規事業に抜擢されました。デジタルカメラが世の中に登場して間もないころで、建設現場で大量に撮影されていた工事写真のデジタル化を推進するためのソフトウェア事業を担当しました。
 所属会社はメーカー系の販売会社であり、社長も頻繁に変わりました。新規事業を開始してから2回目の社長交代時に、事業撤退方針を受け紆余曲折ありましたが38歳で退職し、1週間後には部下3人そして私の妻の5名で現場サポートを創業しました。
 私たちを信じてシステムを購入頂いたお客様や、パートナーの開発会社を裏切れない気持ちと、事業自体への可能性を信じての独立でした。なけなしの退職金200万円と借金800万円からの船出でした。

「事実前提経営」から「価値前提経営」へ

 現場サポートは建設業向けのITサービスを提供する会社です。 
 サラリーマン時代に行っていた建設業向けのソフトウェア販売から開始し、現在は建設業向けのクラウドサービスを主力事業としております。販売先は全国で、主なサービスは、工事を発注する官公庁と受注する民間建設会社の書類の決裁等を行う「現場クラウドOne」、自社内や協力会社とのコミュニケーションツールである「現場クラウドConne」です。最近では、建設業以外でも活用できるファイル共有サービス「Conneポスト」も展開しております。このサービスは無料で利用可能ですので、是非一度お試しください。
 数字でみる現場サポートをみると、社員数が77名、平均年齢35歳、育児休暇の取得も復帰も100%、3年以内の離職者は8年間0名を継続しています。又、社員一人当たり一時間当たりの粗利が7,100円です。フルタイム正社員一人当たりで換算すると、年間1,400万円程になります。
 売上は、2012年頃までは1億5千万円程で停滞していましたが、今期(2023年6月期)は12億5千万の着地見込みです。一方で離職率は、ピークの2009年から2010年にかけては、なんと27%もあり人の定着が極めて悪い状態でした。
 目先の利益を追い求める「事実前提経営」から、理念を追求する「価値前提経営」への切り替えが必要と決断したのがこのころであり、真っ先に経営理念の策定から着手しました。振り返ると、教育もせず、できない社員はやめるのが当たり前と考えていた自らの未熟さを恥じるばかりです。

心のコップが上を向く教育

 価値前提の経営に舵を切ると同時に、教育の必要性を感じて始めたのが、人間学を学ぶ月刊誌「致知」を使った読書会です。私は2008年から購読しておりましたが、業績が悪化して賞与の額を下げた時に「せめてもの償いに」と社員15名に「致知」の購読をプレゼントしたことがあります。その後、宮崎の取引先での読書会の取り組みを見学させてもらい、「これこそが我が社に必要だ」とその日に導入を決意しました。2012年2月のことでした。
 会社をより良くするためには社員の能力を高める必要あり、そのためには教育をしなければなりません。よくよく社員を観察すると、ほっといても学習する人とそうでないない人がいます。何を学習するかよりも、学習したいと考えるようになるために、どうすれば良いのだろうかと常々考えていました。
 下を向いたコップには水ははいりません。心のコップが上を向くことで、様々な知識や技術が入ると考え、心のコップを立てる教育である「致知」を使った読書会を始めました。
 弊社の教育体系を、有名なカッツ理論で表現すると、全ての階層に必要なヒューマンスキルのど真ん中にこの読書会が位置付けられます。その上で、テクニカルスキルやコンセプチュアルスキルが機能するのだと考えています。
 読書会でコップを立てながら、同時に方針を共感するための勉強会である社長勉強会や、私と社員との面談も開始し現在も常に見直しながら継続しています。
 この社長勉強会は、弊社の理念・信条・ビジョン・戦略と、それに基づく考え方を約130ページにまとめたGSPolicyと命名する指針書を共感するための勉強会です。年に80回ほど開催し、私が40回、常務2名がそれぞれ20回行っています。
 社長面談は、現在は3ヶ月に1回全社員と行っています。仕事の事は勿論プライベートの相談や報告もあります。人を大切にする基礎中の基礎である社員との向き合い方は、面談を何度も繰り返し、全身全霊で社員を受け入れて始まるものと実感しています。

”調和”を目指した組織づくり


 ここで、弊社がどのような組織を目指しているかについて、紹介致します。私が考える理想的な組織の状態は、システム・制度、仕事のやり方、人と人との関係が調和した状態であると考えています。システム・制度は、氷山の一角のように海面にでており、外からも良く見える部分です。ここについては、「個の欲求と組織の欲求を相互に補完できるシステム・制度が整っている」ことが理想だと考えます。社員が求めるものと会社が求めるものは、一般にトレードオフの関係にありますが、双方が歩み寄らなければならないと考えています。
 次に、システム制度をより良くするためには、仕事のやり方を変えなければなりません。仕事のやり方は、「自律した個々の社員が、仕事のやり方を工夫し、付加価値生産性を高める仕事のやり方を、常に考えて実行している」この状態が理想です。ポイントは社員が自律していること、つまり会社ごとを自分ごととして捉えて、現場で工夫をすることです。
 仕事のやり方を変える際の障壁は、部門間のセクショナリズムや変化を好まない人等があります。人と人との関係の理想像は、「感謝と承認によって、笑顔あふれる社風が醸成されている。又、変化を許容できる先進的な風土がある」この状態が理想です。
 システム制度については、2012年頃から実力に合わせて徐々に整えていきました。働き方改革に関連する項目も多数あります。政府が進める働き方改革には、様々な意見があると思います。私たちは、働きやすさだけを追い求める生ぬるい会社になろうとは思っていません。そのために重要な指標として「人時生産性」を上げています。
 人時生産性は、粗利÷投入時間で求められます。システム制度を整えて働きやすさを追求し投入時間を減らす一方で、やりがいを高めて付加価値の高いビジネスをひとり一人が考えて実行するが大事だと考えています。やりがいを高めるには、コミュニケーションが極めて大事です。

社員の主体性を育てるコミュニケーション

 仕事のやり方の見直しには、何よりも社員が主体的になることが必要です。そのステップとして、まずは社員と会社との関係性の確立が必要で、ベースである理念への共感は欠かせません。
 その次に徹底的な情報の公開です。
 そして双方向コミュニケーションです。コミュニケーションについては、質のアナログと量のデジタルで最適化することを、方針としています。読書会や面談等のアナログコミュニケーションは勿論大事ですが、私はたちはそれだけでは足りないと考えています。それを克服するために、自社開発の現場クラウドConneでオープンコミュニケーションを毎日とっています。良くアナログVSデジタルで語られる方がいます。双方一長一短あることは間違いありませんが、双方を使いこなすことによって最適化ができると私たちは考えています。
 情報開示と双方向コミュニケーションによって自立したら、あとは思い切って権限移譲し任せることができます。ただし、任せたからと言って放任はしません。そこはデジタルを活用したオープンな環境によって、常に仕事を見える化し、困っている社員をフォローできるよう、目配り・気配りができる環境を作っています。
 最後に人と人との関係についてです。
 社員の生活への配慮と、特定の社員へ依存するリスク軽減のためには、仕事の属人化防止が必要であり、2人以上が同じ仕事ができるようにしなければなりません。ダブルアサインメントを実施すると、残念ながら仕事の生産性は下がります。一方で生産性を高めるためには、分業や兼業が必要です。分業では、得意な人が得意なことに特化することによって生産性向上がのぞめます。兼業では、複数の仕事をできるようにすることによって、生産性向上がのぞめます。
 これをやろうとした時に立ちはだかるのがセクショナリズムです。セクショナリズムを取り除くために必要なことは、相互理解であると考えています。相互理解の先に相互信頼が生まれ、そして相互作用があります。そのために「感謝と承認の文化創り」を行っています。ここでも、コミュニケーションが大きな役割を果たしています。
 その他の取り組みとして、毎日「ありがとう」が飛び交う「ありがとう掲示板」、半年に一回賞与査定時期に実施する「ありがとう大賞」、監査役である私の妻が開催してくれる「きまぐれCafé」、社内報の発行なども、この文化創りに繋がっています。

チームを活かす、だれもが活きる

 私たちの理念を紹介します。
 現在の理念は、2009年に私が作ったものを捨てて、2020年に完成したものです。2018年頃の業績と、2030年の在りたい姿であるVision2030と照らしたときに、このままでは達成できないと危機感を覚えました。2018年の社員満足度調査の結果は、高止まりをしている状態でした。もう一段ギアを上げるために何をすべきかと考えた際に、会社の最上位目的である経営理念を真っ先に作り直す事にしました。
 社内では、現場サポートVer.3構想と命名し、プロジェクトを立ち上げました。ちなみに、創業からの理念も定まっていない事実前提経営のころをVer.1、理念を策定してからの10年間をVer.2と定義しています。
 理念策定に当たっては、1年かけて全社員で8つのテーマについて、延べ60回の議論を行いました。
 最終的にでき上った理念は、「チームを活かす、だれもが活きる」です。当時の全社員で作ったので、「経営理念」と呼ばずに「私たちの理念」と呼びます。
 解説文は次の通りです。

私たちはジグソーパズルのような チームを目指します!
そこには、不要な人がいません
それぞれ個性の集まりで、だれもが尊重されます
そして、ビジョンに対して、 だれもが役割を果たします
役割の大小に関わらず、だれもが活躍します
私たちは、そんなチームを目指します
そして、お客様・地域社会・ビジネスパートナー
それぞれのチームが活きるサービスの
提供を通じ貢献します

図らずも、全社員で作った理念は「人を大切にする経営」を色濃く表現しています。

人を大切にする経営の実践

 最後に私自身が何をしてきたかについて触れることにします。簡単に申し上げますと、誰でもできることを、年単位・半年単位・月単位・週単位・日単位でやることを決めて、ひたすら続けてきました。
 まず、年間を通してGSPolicyに記載する指針を共感するための勉強会を継続しています。累計730回を超えています。
 現在、やり方の見直しにも着手しました。一方的にしゃべって、参加者全員から感想をもらうパターンから、ワークショップ方式に変更中です。
 半年ごとに行っている取り組みに、「ありがとう大賞」というイベントがあります。予算は一人2万円、自らの感謝する仲間にありがとうポイントとメッセージを贈るものであり、表彰もしています。一回で1,500通を超えるメッセージが集まり、全て私は確認をしています。読書会を通じて美点凝視の能力が身に付けている社員たち同士ですから、毎回涙する社員がいるほどです。
 週単位では、朝礼スピーチをかれこれ540回近く行っています。必ず原稿を起すことが特徴です。毎週末に一週間を振り返って、社員に何を伝えるかを思考し続けています。
 毎日やっていることは、現場クラウドConneに「ありがとう投稿」をひとり以上にすることです。2011年10月から10年以上、やり続けています。ちなみに社員には月1回以上の投稿をお願いしています。
 
 人を大切にする経営には、社員が働きがいをもって、わくわくいきいきするような環境作りが必要です。働きがいには「働きやすさ」と「やりがい」の双方が必要ですが、それを個の特性を重んじながら組み合わせて事業を成功させなければなりません。
 常に高い目標を掲げて成長している弊社では、課題も山積していますが、仲間である社員と引き続き学び続けて、お客様や地域社会へ貢献できるよう、頑張ってまいります。


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