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私がその店で働くきっかけになったのは、一杯のコーヒーだった。

July.2022
ベルリンに来て、最初の数日は寝込み(思い返すとあれは知恵熱なんかじゃなくて多分ふつうにコロナだった)そこから2、3週間は観光気分だった。

空はどこまでも青くからっと晴れていて、ヨーロッパの街並みが美しく映える。
目新しいものがたくさんで、見たことのない果物、映画の中でしか見たことがないような古くておしゃれなカフェ、宝探しができそうなほど素敵なアンティークショップ。見て回るだけで楽しくて、いろいろな場所を歩き回った。

ベルリンに来る前に読んだ「ダーリンは外国人 ベルリンにお引越し」編でもさおりさんとトニーさんがベルリンを気に入った理由の一つに挙げていたことなんだけど、ベルリンのいいところの一つはユニークな小売店が多いこと!

せっかく海外に来ても目につくのはグローバルチェーンの店ばかりという経験は少なくない。どれも日本で買えるしなぁって感じで気分は上がらない。

その点ベルリンはまったくの例外だった!見たことがない小さな店がたくさん並んでいてウィンドウショッピングが楽しめる。

例えばのお気に入りは
U2のEberswalder Str.駅から歩けるこのあたり。書店やカフェ、雑貨屋、アパレルのセレクトショップなど盛りだくさん!トラムも通っているのでアクセスもよし。↓

そこからトラムに乗って行ける次の通りはここ。Rosa-Luxemburg-Platz
そこから別の駅まで繋がっているこの通りにはたくさんのお店が並んでいる。主にファッション系のお店と飲食店。↓


今日はここへ行ってみよう、明日はこちらという感じで街中をめぐってみた。

7月後半、夏真っ盛りのはずなのに、急に肌寒い日があったりして、いつでもジャケットが手放せなかった。

日本の蒸し暑さとは無縁な土地で、私は自分の肌に触れる湿度が恋しかった。

ある日は川沿いでやっているトルコマーケットに行ってみようと思い立って向かう。
野菜や果物のお店が週に二回ほどマーケットを開いている。

東京にいたときは市場みたいな場所には縁がなかったけれど、ヨーロッパの国々では至る所でマーケットに出会う。旅先では少しずつ買って、宿で朝ご飯にしたり、おつまみにしたりするのが好きだ。

ベルリンのトルコマーケットはこんな感じだった。

あいにく小雨がぱらついてきて、一番近くのテントに駆け込む。
ちょうどほしかった生姜が安く売っていたので、おじさんに頼む。
基本的には量り売りなので、欲しい量を手に取ってこれくださいというか、○キロください、という感じで注文する。
買い出しに来ているトルコ系のお母ちゃんなどはキロ単位で買っていくけれど、我が家はそんな量は食べきらないのでどれも少しずつ。

お金を払い終わってもまだ雨は降っていて、もう少しだけテントの中で待たせてもらった。

おじさんが「どこから来たんだ?」って話しかけてきた。
Duolingoを何十日も続けているパートナーが流石聞き取れて、「ヤーパンだよ」って返す。
おじさんはそうか、という感じで一つ頷いて、自分の目のあたりを指さした。
優しい笑顔だなぁと思って、ちょっと名残惜しい気持ちでテントを出た。

あとでパートナーと答え合わせをしたら。
私はあのおじさんは『「日本人は目でわかる』って言ったんだと思うよ」と言ったら、彼は「俺は目がいいんだって言ったと思う」って。

真相はおじさんの笑顔の中。

そのあとマーケットで買った桃を食べながら川沿いを散歩していると、隠れたところにある小さなコーヒーショップを見つけた。
その頃には空はすっかり晴れ間を取り戻していた。

誰もいない時間帯で、店はひっそりとしていて、よい雰囲気が漂っていた。

コーヒーを二杯注文して、日陰のベンチに座って飲む。
変わり種のコーヒーだったんだけどそれがとても美味しくて、その場所の雰囲気が居心地がよくて。とても幸せな時間を味わった。

帰りがけに勇気を出して店員さんに話しかけてみる。
「ここって今人を募集してたりしますか?」
「してると思うよ!お店のサイト見てみてね」

綺麗なダークブロンドの男の子はとても感じよく教えてくれた。
そのあとはウキウキして家に帰った。
ベルリンでの生活が楽しくなりそうな予感がしていた。


▶次回!【ベルリンでの職探し】


プロフィール
日本で抜毛症のボディポジティブモデル&ブロガーとして活動したのち、ベルリンに引っ越し。
現在はエッセイスト、ライター、バリスタ、ダイバーシティーモデルとして活動中。
インスタ遊びに来てね▶ Gena_2046

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