Amazonプライムビデオで知らないタイ映画を探る

 AmazonプライムビデオはAmazonプライムが提供している動画配信サービスで要はNetflixとかHuluとかと同じようなものであり、オリジナル作品も用意してはいるものの、おすすめ作品とか新着作品とかの一覧を見ている限りラインナップ的には一見普通。

 が、何かの拍子にたまたま英語タイトルに英語解説、スタッフキャストも英語でしか書かれていないあからさまにB級以下な感じの知らない洋画作品がいくつか見つかった。作品ページに表示されている「この商品をご覧になったお客様はこんな商品もご覧になっています」リストを見てみたところ、これまた邦題不明の謎の映画がずらっと並ぶ。おそらくその大半は日本未公開、未放映、未ソフト化。音声は基本的に原語のまんまで日本語字幕なしだが、これ、新宿ビデオマーケットに通うような、あるいは通いたいような人たちにとっては宝の山なのではないか。

 ということでごくたまに思い出したようにテキトーに言葉がわからないまま日本未公開と思われる映画を観たりしているのだが、鑑賞後に確認すると実は日本でもかつてのビデオバブル時代に字幕付きでリリースされていた作品だったりとか、劇場公開されたこともある作品だったりとかいうことがある。ゴミのような作品であれば別にこのまま観ちゃっても構わないのだが、万が一面白い作品に出会ったときに、手を尽くせば日本語字幕入りで観られたはずなのに、もっときちんと内容把握できる状態で観るべきだったのに、などと後悔してしまいそうである。そんなわけでAmazonプライムビデオの字幕なし洋画を観る際は、事前調査が自分の中で必須になってしまった。

 今回気になったのはタイ映画と思われる『The Citizen』という作品。

 全然知らないのでまず検索である。が、書き忘れていたけどAmazonプライムビデオでは英語圏以外の作品も基本的に英語名で登録されており、しかしこれがかなりの確率で超テキトーな独自の題名で、検索してもその作品の正体にたどり着けないことがある。結構ある。
 今回もタイ映画のためAmazonプライムでしか通用しない独自題名の可能性があるし、独自題名でなかったとしても『The Citizen』では膨大な無関係な作品が引っかかってわけがわからなくなりそうである。そこで今回は同ページに表示されている監督名「M.C. Chatri Chalermyukol」で検索。が、まず日本語の映画データベースサイト「allcinema」では引っかからなかったので、続いて海外の映画データベースサイト「IMDb」で検索すると、「Chatrichalerm Yukol」という人物が検索結果として表示される。

 Amazonプライムの作品ページに記載されている製作年は1977年。「Chatrichalerm Yukol」監督のフィルモグラフィーに『Taxi Driver (Citizen I) 』という1977年作品があり、ほぼ間違いなくこれでよろしかろう。今回は割とあっさり見つかった。素晴らしい。

 しかしまだ気になることはある。この作品が日本公開されたことがあるのかどうか、あるいはビデオリリースやテレビ放映されたことがあるのかどうか。しかしIMDbでの監督名「Chatrichalerm Yukol」でallcinemaで検索しても見つからず、『Taxi Driver』では当然のようにマーティン・スコセッシの『タクシードライバー』と最近話題になった韓国映画の『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』しか出てこないし、別題の『Citizen I』では膨大な無関係な作品がずらずら出てきてしまう。
 うーん、まあじゃあ、日本未公開作品ってことでいいな、字幕ないから内容把握できないところはいっぱいあるだろうけど、どうあがいたって日本語字幕入り版がないんだから仕方ないな、と思いながら、しかし国際社会の世の中なので「タイ映画 Taxi Driver」とかでGoogle検索などをして本作を観たことのある方の日本語での記事はないかと探していると、「爆音映画祭2016 特集タイ|イサーン」および「爆音映画祭2018 特集タイ|イサーン VOL.2」にて『タクシードライバー』の邦題で日本でも上映されていたことが発覚。

 うーん、ということはきちんと内容把握しながら観られる状況がタイミング次第ではあるわけで、字幕なしのAmazonプライムビデオで観るのはどうかなあ、と躊躇している間に日が暮れていきます。

 なお、この『タクシードライバー』の監督のフィルモグラフィーをあれこれ上記同様に検索していったところ、日本では「チャトリ・チャラーム・ユーコン」と「チャートリーチャルーム・ユコーン」の表記が混在しており両者を同一人物と判断するまでも一苦労だったのですが、日本で紹介されている数少ない作品の一本がなんと永瀬正敏主演の『アジアン・ビート』シリーズのタイ編「パウダー・ロード」だったことが判明。

 日本語サイトの「allcinema」では1991年作品となっており、実際に自分もその頃だったように記憶しているのだが、英語サイト「IMDb」では1991年作品として『Asian Beat: Powder Road』が登録されている他、『Heroin』のタイトルで1994年作品としても登録されていて、ややこしいことこの上なし。

 ちなみに私は初海外旅行が1994年のタイで、その際にバンコクにあったボロっちい映画館に入って超どうでもいい感じのB級アメリカホラー映画とB級香港アクション映画の二本立てを観たのだが、そこで上映されていた予告編の一本が『アジアン・ビート パウダー・ロード』でした。本来スタンダードサイズだかワイドサイズのフィルムをシネスコで映写していたため、永瀬正敏が太った状態で画面に映し出されていたのを覚えております。数年後に同所を再訪したらこの映画館は解体されていた。

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