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【73歳父の小説】あのころ②トムとスシエのころ

73歳になる父親が趣味で小説を書いている。

ちょこちょこいろんな賞に応募したりしているようだが、なかなか多くの人に読まれていないようなので、せっかくなので私がnoteに置いてあげることにした。

あのころシリーズはこちら


あのころ②トムとすしえのころ ポール守谷(著)

中学で英語の科目が増えました。
中一で初めて英語の教科書を手にした時、みんな大きな興味と共に大きな不安がよぎったことでしょう。
理解できるかなあ授業についてゆけるかなあ。
赤い表紙の、B5版のサイズで紙質はまさにざら紙。
タイトルがJACK and BETTEYでした。
挿絵は劇画風でアメリカの少年と少女が描かれていて。
まずaからzまでの大文字と小文字のか基準を覚えるところから始まり,I am a boy.You are a girlのbe動詞の用法へと進む。
アルフアベットのつづりを覚えて、なんと英語の辞書もかってもらった。
かなり興味が湧いて、かつ勉強もしたつもりだ。
やがて1年の3学期、翌年使う教科書が配布されて。
数Ⅱ、社会2、国語二年生などの新しい教科書が配られて.更に英語Ⅱの教科書が渡されました。
学制改革で教科書の内容が変わりますと担任の先生が言われた。
が、何がどう変わったのかはわからない。
「来年用だから、なくさないようになア。」配られた教科書の印象は、今までの物より紙の質が良くて、ざら紙はない。
色を多く使いカラフルな感じがして勉強しやすそう。

特に英語の教科書は、それまでのj and bでなくて「トム アンド すしえ」でした。
トムアンドすしえ、すしえって、日本人の女の子かえ、なあ、すしえって珍しいよなあ。
トムは普通にいるだろう、dその名前の子達は。
でも女の子で、すしえさん。
わざわざ英語の教科書に日本人の名前を使わなくても。
それにもし使うなら花子ちゃんとか幸子ちゃんとか淑恵ちゃん、美恵ちゃんとかが普通だろう。
わざわざすしえ、特別なんか意味あるのだろうか、お寿司のような名前。

友達とも話してみて。
「今までジャックアンドべテイ、だったじゃん。来年からさあ、トムアンドスシエだよ。なんでスシエなんだろうねえ。」友達はそんな名前なんかどうでもいいという風で。
「おら知らねえずら。」と皆口々に言う。
教科書を作られた人の思いがあるわけで、すぐには推し量ることができない。
ずーっと答えがないまま、時間は過ぎて行き三学期は終わり。
4月二年生に進級して。
最初の英語の授業。
「なぜトムアンドすしえというタイトルなのか。」という難問に終止符が打たれて。
正しい答えが出ました。
「今日から英語の授業はこの新しい教科書、皆もっつて来たかな。二年生から新しい教科書になりましたよ。これこれね。トム アンド スージー、ね。」

すしえ(sushie)ではなくて、スージー(susie)だったんですねエ。
お疲れ様。


73歳父の小説シリーズはこちらにまとめてあります。


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