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檜(ひのき)とヒノキチオール

ヒノキの放つ独特の香り。
日本人は特にヒノキの香りを好むようです。
ヒノキは加工がし易く、シロアリなどの害虫被害に遭い難いため、建材として古くから重宝されてきました。

ヒノキの匂いの元となっている成分は複数あります。
中でも有名なのはヒノキチオール。
以下のような構造をしています。

ヒノキチオール(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%8E%E3%82%AD%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB)

ところが、ヒノキチオールはタイワンヒノキに多く含まれていて、日本のヒノキに含まれる量はごく僅かです。
日本のヒノキにはアルファ・カジノールとヒノキオール(紛らわしい...)という物質がたくさん含まれていて、これらが匂いの元となっています。
では、なぜヒノキチオールだけ有名になったのでしょうか?

実は、ヒノキチオールは抽出が簡単で、人工的に合成することが可能なため、入手し易いんです。対して、アルファ・カジノールとヒノキオールは抽出が難しく、大量に入手出来ない。
そのため、市場に出回っているヒノキチオールの名前が独り歩きしてしまったようです。


ヒノキの匂いの原因物質はテルペン類によるもので、ヒノキチオールやアルファ・カジノールはその一つなんです。
テルペンは以下のイソプレンを基本構造とする炭化水素のことで、植物や昆虫などによって生成されます。

イソプレン(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%B3)

ちなみに、イソプレンが沢山つながったものが天然ゴム(ポリイソプレン)です。
普段の生活でイソプレンを扱う事は滅多にないと思いますが、イソプレンは引火性のある特殊引火物で、人体にも有害です。
ヒノキチオールなどのヒノキの匂いも、人によっては過敏症を起こすことがあります。

テルペン類に限ったことではないのですが、自然由来だから安全とは限りません。中には僅かな量で命を脅かすものもあります。
逆に、必ずしも人工物だから危険というわけでもありません。
平気で間違ったことを記載しているサイトもあるので、厚労省や環境省のサイトや、よく知っている人に聞くなど、信頼出来るところから情報を得て判断してほしいです。

ネガティブな事を書いてしまいましたが、もちろんヒノキの香りには良い所も沢山あります。前述したようにシロアリなどの害虫を寄せ付けません。抗菌性があり、カビやダニの発生を抑制する事が分かっています。


僕は以前、ヒノキチオールを樹脂に混ぜて、ヒノキの香りのする材料の研究をやったことがあります。
匂い物質そのものなので、強烈なヒノキの匂いに悩まされながら実験を行いました(最初は良い香りだなと思っていましたw)。
しかも、実験器具に付着したヒノキの香りが何度洗ってもとれません。
手に付いた匂いもなかなか消えない......
そして、研究は失敗に終わりました。
でも、それで良かったです。もし上手く行って研究を継続していたら、ヒノキの香りがトラウマになり、二度と嗅ぎたくないものになっていましたw

読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。