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COVID-19の重症者・死者の傾向とmRNAワクチンの特徴

新型ウイルス流行から一年以上経過したので、データから重傷者・死者の傾向をみてみます。
加えて、ワクチンについて簡単に解説します。

死者の約90%が高齢者 ~半数以上が高齢者施設・病院での集団感染~

日本においては、死者の65%が80歳以上、24%が70歳以上です。高齢者が9割を占めています。
60歳未満の死者は僅かで、50歳代以下だと1%を切ります(厚労省の統計より)。
そして、死者の約9割は基礎疾患を持っていました
世界的にも80歳以上の死者が多くを占めています。
重症化するのも半数以上が高齢者であり、若い人も含め、基礎疾患を持った人が重症化し易いことが分かっています。また、肥満の方が重症化し易いという傾向も出ています。

さらに、死者の半数以上は、病院および高齢者施設で起きた集団感染が原因です
免疫力の低下した高齢者が集団で生活している施設では、必然的に集団感染が起きやすく、そこからウイルスも増殖・拡散されます。
日本以外の先進国でも、半数以上が病院や高齢者施設の集団感染によって亡くなっています。
昨年の同時期も、同じ状況でした。
施設で働いている方々への負担も大きくなっており、ここのサポートが最重要になります。

加えて、重傷者や死者は男性が多く、これは喫煙率の高さが男女の差となっていると考えられます。そもそも、喫煙によって感染症やガンなどのリスクは倍以上になります(一日に吸う本数が多ければ、10倍を超えます)。粘膜や肺を傷つけるわけですから当然ですね。
これは電子タバコでも同じです。

また、ほとんどの感染者は軽度から中等度の症状で、入院せずに回復します。過剰に恐れ、不安になることはありません。
適度な運動と十分な睡眠を取るなど、当たり前の健康維持に努めることが大切です
ちなみに、室内での運動よりも、外に出て30分以上ウォーキングする方が精神的にも良いですね。日光を浴びることも出来ます。
うつ状態を防止する効果もあるのでお勧めです。


2020年の死者数は11年ぶりに減少 ~呼吸器系疾患による死者数は減少、自殺者数は増加~

2020年の死亡数は前年比で9373人(0.7%)減の138万4544人でした。
高齢化の影響もあり、増加が続いていましたが、11年ぶりに減少しました。
インフルエンザなどの呼吸器系疾患による死者数の減少(約1万6千人減少)に加え、交通事故による死者数が減少したことが要因です(厚労省、人口動態統計より)。
新型コロナウイルスは呼吸器系疾患を引き起こしますが、呼吸系疾患全体で見ると死者は減少しているんです(新型コロナウイルスの死者数は3459人)。
ちなみに、出生数は2万5917人減の87万2683人で、過去最少でした。
過剰な自粛のため、今年は更に出生数が減少すると予測されています。

一方で、減少を続けていた自殺者数は11年ぶりに増加に転じました
2019年より912人(4.5%)多い2万1081人でした(警察庁の統計より)。
最も多いのは成人男性ですが、11年連続で減少しています。増加したのは女性と子供の自殺です。
生活環境の変化、パートなどの働き口が減少し、雇用の先行き不安が影響したと考えられます。女性の方が、自粛の煽りを大きく受けた飲食やアパレル業界かつ非正規で働いている人が多く、その影響だと考えられます。
そして、小中高生の自殺者数は499人となり、統計データのある1980年以来、最多となりました
少子化が進む中、子供たちの自殺者数が過去最多となったのは残念でなりません。
また、2021年の1~3月の自殺者数も前年比増(428人増の5334人)となっています。

厚労省のHPで相談(電話、SNS)することが出来るので、一人で悩むことなく、相談して欲しいです。
10年連続で自殺者が減少していたのは、相談窓口が増えたことが大きく寄与しています。

経産省の支援策も参考にしたいですね。


ウイルス干渉で感染症が激減?

インフルエンザの死者減少(約2千人減少)については、マスク着用や手洗いなどの感染対策の効果と、例年よりもインフルエンザの予防接種が早期に行われ、接種率も高くなったからと考えられます。
しかし、それよりも大きな要因があります。ウイルス干渉です。
一つのウイルスが多くの人に感染すると、ウイルスの吸着する受容体が激減するため、他のウイルスが感染し難くなります。これがウイルス干渉です。
要するに、ウイルスが宿主の奪い合いをしているんですね
代表的なのは、RSウイルスとインフルエンザウイルスです。夏はRSウイルス、冬はインフルエンザウイルスが猛威をふるいます。
実は2021年だけでなく、2020年の1~3月もインフルエンザがほとんど発生しなかったんです。
でも、昨年の1~3月は、今ほど過激な感染対策はされていませんでした。
インフルエンザの予防接種率が取り立てて高かったわけでもありません。
1月以降に接種した方も相当数います。
ということは、COVID-19は2019年末には日本で広まっており、年明けにはかなりの人が感染していた可能性があります。
また、手足口病などの他の感染症も2020年は激減しています。
それが結果的に死者の減少につながりました。
COVID-19の感染力は強いですが、他の感染症と比較した場合、ウイルス干渉の効果を割り引いて考える必要があると思います。

逆に、他の感染症が流行すれば、そっちに置き換わる可能性もあるということです。

非科学的な感染症対策とタバコ産業のロビー活動

気になるのは、昨年の初め、新型ウイルスの詳細が分からなかった頃から、日本は何も変わっていないという点です。
感染者数を見て、全てをゼロにしようとするだけで、重傷者・死者の平均年齢や特徴、どこで集団感染が発生しているのか、例年との違いの有無などを分析した上での対策がほとんど行われていません
本来は、症例等のデータを集めて分析し、その都度最適な対処を導き出す必要があります。特に自治体や国は、経済への影響や、2021年になっても増え続ける自殺者数も考慮したトータルな判断と対策が求められます
これは日本に限った話ではありません。他にも科学的根拠に乏しい対応をしている国はあります。
今のような対応では、似たようなことを今後も繰り返すことになります。

亡くなられた方々が、新型ウイルスが流行しなくても亡くなっていたかどうかや、関連死についての検証も、詳細に行うべきだと思います。
自粛については、重症化し易い高齢者に促すだけで十分です。
前述した通り、多くの死者・重傷者を出している病院や高齢者施設での集団感染を防ぐことに重点をおくべきです。ワクチン接種もそこに集中するのが効果的だと思います。
感染し易い高齢者が発症すると、そこから多くのウイルスが拡散されます。免疫力が低下しているので、ウイルスの増殖を抑えられないんです。

必要最低限の感染対策をしていれば、飲食店の時短営業・休業やレジャー施設の休業、イベントの中止は不要のはずです。
映画館や美術館・博物館が休止する必要はあるのでしょうか?
非科学的な対応をする前に、何が重要なのか、データを見て総合的な判断をする必要があります。

そして、様々な感染症や病気のリスクを大きく高めるタバコの問題がスルーされているのは異常と言えます。
日本呼吸器学会は、タバコは新型コロナウイルス感染の最大のリスクだと注意喚起しています。
政府や自治体はタバコ産業を黙認せずに、販売の規制に踏み込み、禁煙サポートを拡充すべきです。禁煙外来などの情報発信を積極的に行い、多くの人に禁煙を促すべきです。
ニコチン中毒になっていると、吸い殻やタバコの煙、タバコのパッケージを見るだけで吸いたくなります。薬物依存状態のため、公然とタバコが販売されないようにする必要があるんです(ニコチンは毒物に指定されている、薬機法で定められた薬物です)。
様々な業種に休業や時短を強いる一方で、タバコの販売を規制しないのは矛盾しています


一人ひとりが落ち着いて行動することが大切


私たちが冷静に行動することも大切です。
最初に起きたトイレットペーパーやティッシュペーパーの買い占めは酷かったですよね...。
オイルショックと同じことが繰り返されたのはとても残念です。
手洗い・うがいで十分なのに、手袋とエタノールが不足し、医療機関や高齢者施設に行き渡らなくなりました。消臭剤まで不足しましたよね。
いい加減な情報が元で、うがい薬の買い占めもおきました。
過剰に不安を煽るメディアの姿勢、個々人の情報リテラシーなど、原因はいくつもあげられます。
一人ひとりが自分本位にならず、冷静に対処していれば、医療機関や高齢者施設に余計な負担をかけることもなかったでしょう。
冒頭でお話ししたように、ほとんどの感染者は軽度から中等度の症状で、入院せずに回復します。
適度な運動と十分な睡眠を取るなど、当たり前の健康維持に努めることが大切です。

mRNAワクチンの特徴

今年に入って、COVID-19のワクチン接種が各国で始まっています。
早いところは昨年から始まっていましたね。
ワクチンに大きく分けて二種類あります。
生ワクチン不活化ワクチンです。

〇生ワクチン(弱毒化ワクチン)
毒性を弱めたウイルスや細菌を使ったワクチン。液性免疫(抗体による免疫)細胞性免疫(マクロファージや細胞傷害性T細胞による免疫)の2つの免疫反応を誘導することができます。
強力な免疫を得ることが出来ますが、開発に長い時間を要します。
なぜかというと、病原体を人以外の宿主を使って培養を繰り返すことで、変異させるからです。変異させることで、人の体内で増殖できないものにします。

〇不活化ワクチン
死んだ病原体やその一部を使ったワクチンです(*一般的に、ウイルスは生物とは言えないので、不活化というのが正しいですね)。
短期間で開発できますが、液性免疫のみで、生ワクチンよりも効果は薄く、持続期間も短いです。

これが従来からあるワクチンです。
mRNAワクチンは、このどちらでもない、新しいワクチンです。
生ワクチンも不活化ワクチンも、病原体を人の体内に投与する点は同じですね。
しかし、mRNAワクチンは病原体を投与しません
その名の通り、mRNA(メッセンジャーRNA)という核酸分子を投与します。

簡単に説明すると、病原体を構成しているタンパク質の設計図を、体内に入れるわけです。
すると、体内でその設計図を基に病原体が作られ、その病原体に対して免疫が反応します。
しかも、設計図にも免疫系が反応するため、液性免疫(抗体による免疫)細胞性免疫(マクロファージや細胞傷害性T細胞による免疫)の両方を活性化できます。

このmRNAワクチンの凄いところは、設計図を書きかえれば他の病原体にも応用できるという点です。加えて、病原体のタンパク質の配列(設計図)が分れば、1~2か月程度で臨床試験に入ることが出来ます。
従来のワクチンでは考えられないスピードです。
一年足らずでワクチンが登場したのは、mRNAワクチンのおかげなんです。

mRNAワクチンは30年以上前から研究されてきました。
急に実用化されて脚光を浴びましたが、その開発は多くの困難を伴うものでした。

ワクチン開発の遅れは政府だけの責任ではない

インフルエンザや子宮頸がんのワクチンに関するデマをマスコミが繰り返し流し、反ワクチン運動が起きたことは、日本政府のワクチンに対する姿勢をネガティブなものにしました。
インフルエンザの接種率は低下し、子宮頸がんワクチンについては勧奨接種から外れ、接種率は1%未満になるという異常事態が続いています。
もちろん、世間の雰囲気に関係なく、必要な決断を行うのが政府の使命です。
アメリカやイギリスなどはmRNAワクチンの接種を特別に許可し、早期の接種に踏み切りました。
もしも、どこの国も接種していなければ、日本はmRNAワクチンの接種をまだ行っていなかったかもしれません。

昨年、大阪大学がワクチンを開発しましたが、いつから接種出来るのかはまだ分かりません(こちらはmRNAワクチンではありません)。
様々な規制があることに加え、僅かしかない副作用のリスクを政府は気にしなければなりません。
もしもアメリカやイギリスなら、特例として許可し、接種を始めているのではないでしょうか?

ワクチン接種は都市部の高齢者から

ワクチン接種は、多くの重症者と死者が出ている都市部の高齢者施設・病院に集中投下すべきだと思います。特に高齢者の多い都市部ですね。
高齢者の集団感染を防ぐことが出来れば、重症者と死者を大きく減少させることができます。
全国各地で平等に行うのは効果的とは言えないです。
何が重要なのかデータを見て判断し、実行して欲しいと思います。
加えて、メディアは「ワクチンが足りない」と連呼して不安を煽り、政府批判をするのではなく、重要なのは高齢者施設や病院の集団感染を防ぐことで、多くの人はすぐにワクチンを打たなくても大丈夫だということを周知し、落ち着いた行動を呼びかけるべきです。
自分たちの利益ではなく、公共の利益を考えた報道を行って欲しいですね。
早く全員に接種させろと騒げば騒ぐほど、接種の方針は薄く広くになってしまい、効果的な対策を行うことはできません。
他の国もそうですが、ワクチンが足りない、接種が遅いと騒いでも、誰も得をしません。
昨年3月~5月にかけての混乱を思い出してください。
私たち一人ひとりの落ち着いた行動が何よりも大切です。

余談ですが、日本は死者数・重症者が他国に比べて桁違いに少ないため、どんなに騒いでもワクチンは後回しにされます。
3回目の緊急事態宣言が出されたタイミングでも、他国から見ると大げさに騒いでいるだけにしか見えません。

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