見出し画像

スライムとグリセリン

洗濯糊で作るスライムに、グリセリンを使うことがあります。
洗濯糊にグリセリンを混ぜてゲル化させる方法と、ゲル化させた後に混ぜる2つの方法があります。
スライムは洗濯糊とホウ砂だけでつくることが出来ます。
では、グリセリンを混ぜるとどんな効果があるんでしょうか?

実際に、グリセリンの有無でどう変わるのか試してみます。
作り方は、市販の洗濯糊 : 水= 2 : 3 の比率で混ぜ、そこにホウ砂水溶液を加えてゲル化させます。
ホウ砂水溶液は、ホウ砂1gを30mlのぬるま湯に溶かして作りました

〇 Aのスライム(グリセリンなし)
 洗濯糊:20ml
 水:30ml
 ホウ砂水溶液:10ml

〇 Bのスライム(グリセリンあり
 洗濯糊:20ml
 水:30ml
 グリセリン:3ml
 ホウ砂水溶液:10ml

グリセリンは水の10分の1程度加えて混ぜます。

このグリセリンを使いました。

A, Bそれぞれの水溶液にホウ砂水溶液を加えてゲル化させると、Bの方が少し柔らかく感じます。
ゲル化させて1時間寝かせた後、できたスライムを触ってみます。

Aのスライムは切れやすく、あまり伸びません。
ただ、硬いわけではないので、柔らかくて触り心地は悪くないです。

一方、BのスライムはAよりも柔軟で、少しだけ伸びやすいです
触った感触も違います。

違いは出ましたが、これだと効果が薄いので、次は水をグリセリンに変えてみます。

〇 Cのスライム(グリセリンなし)
 洗濯糊:20ml
 水:5ml
 ホウ砂水溶液:5ml

〇 Dのスライム(グリセリンあり)
 洗濯糊:20ml
 グリセリン:5ml
 ホウ砂水溶液:5ml

Cのスライムは水を加えたのに対して、Dのスライムは水の代わりにグリセリンを加えました

作っている段階で違いが分かります。
Cは硬いスライムになりましたが、Dはゲル化しません
厳密にはしていますが、流動性が高く、ほぼ液体です。

Cは硬い、伸びないスライムになった
Dは少し粘性の高い液体のようになりました

はっきりと違いが現れましたね。

実は、グリセリンにはゲルの網目構造を緩くする効果があるんです。
スライムはポリビニルアルコールの水酸基をホウ酸イオンが橋架けしたゲルです。

青い点線は水素結合を表しています

つまり、水素結合によって橋架けされているわけです。
グリセリンはこの水素結合を弱めます
そのため、ごく少量添加するとゲルは柔らかくなり、大量に混ぜるとゲル化を解いてしまうんです
*水素結合で橋架けしているゲルにのみ、効果があります。

グリセリン(Wikipedia)

グリセリンは水酸基を3つ持つ、3価のアルコールの一種です。
甘い物質で、食品添加物として甘味料や保存料、増粘安定剤などに使われています。練り歯磨きやシロップの成分にグリセリンと表記されていることがあります。
他に、保湿剤や潤滑剤としても利用されています。
また、-100℃にならないと凍らないため、水冷エンジンなどに使う不凍液としても使われています(不凍液には、エチレングリコールやプロピレングリコールも使われています)。

グリセリンの水酸基がホウ酸イオンやポリビニルアルコールと水素結合を作るため、橋架けが阻害されてしまうんですね
グリセリンがポリビニルアルコールを橋架けするパターンもありますが、邪魔してしまう効果の方が大きいんです。

グリセリンのように、添加することで材料を柔らかくする物質可塑剤(かそざい)とよびます。
私たちが普段使っている樹脂製品にも可塑剤が使われています。
可塑剤を添加することで、樹脂材料は柔らかくなります。
例えば、包装フィルムやビニルシートなどを柔らかくしています。
塩化ビニル樹脂(塩ビ)はとても硬い材料ですが、可塑剤を加えることで加工し易くしています。
塩化ビニル樹脂はポリ塩化ビニルという高分子でできています。
通常、ポリ塩化ビニルの分子どうしはファンデルワールス力によって強くくっついていますが、分子の間に可塑剤分子が入り込むと、その力は弱くなります。
分子間の力を弱めることで、可塑剤は樹脂材料を柔らかくしているわけです。

ちなみに、グリセリンを入れていないAのスライムに5ml程度グリセリンを加えて混ぜると、ゲル化が解けてドロドロになりました。

グリセリンを入れすぎるとドロドロになってしまう

実験するときはこれで良いんですが、スライムを柔らかくしたいときは、入れすぎですねw
くれぐれも、入れすぎに注意して下さい。



読んでいただけるだけでも嬉しいです。もしご支援頂いた場合は、研究費に使わせて頂きます。