陰謀論という楽観論

先日陰謀論者に出会った。
どうやらコロナワクチンを打ったおれは3年後に突然死ぬらしい。解毒するためにはハーブティーを飲むといいらしい。
コロナワクチンで日本人全滅させてここに住もうとしてるらしい。
それが正しいかどうかは3年後にわかるから、3年後におれが死んだら土下座してやるよ。

陰謀論を掲げる方達は結構危機感が強いと自分では思っているだろう。だが私は思う。彼らはなんて楽観的なんだと。
なんだか知らないが悪い意図を持っている人たちがいて、そいつらが世界を好きなようにしようとしている。そんな簡単な筋書きで今の世の中が捻じ曲がっているなら、こんなに幸せなことはない。
その場合少なくとも世界は誰かが意図を持って動かせば動くということになるし、諸悪の根源を倒せば世界の歪みは正されるだろう。
だが、現実世界はドラクエの世界ではない。

悪の組織がいることが問題なのではない。
悪の組織がいないことが問題なのだ。
誰もこのような世界を望んでいるわけではないにも関わらず、歪んでしまっているのが問題なのだ。
だから我々はこの世界の歪みを認知しながらも、歪みの正体もわからなければ、原因もわからない。解決方法なんてもってのほかだ。

世の中を悪くしよう、と思って何かをしている人は多くないだろう。世の中に良いことと悪いこと、どちらが良いか。考えるまでもない。
ただ世の中は良き意図が良き結果をもたらすようにはできていない。

地球に優しいと思って有機野菜を食べている人たちは、肥料を使わずに世界の人口を養う食糧を生産可能かどうか、という問題について考えたことがあるだろうか。
チベットの労働者の人権を正そうとする人たちは、それによる物価高騰で凍える人がいるかもしれないと想像するだろうか。

また、少しでも科学をかじったことがある人間ならば、事象の間にある普遍原理を見つけることの難しさをわかっていただけるだろう。
世の中はどう考えても陰謀論で説明するには複雑すぎるのだ。

そんな世の中で、何が正しいか、何が世の中に取って良いことか、という問いに答えはない。自分で決めるしかない。
その答えを自分の中で決めた人たちが色々な場所で頑張っている。
少しでも良き意図が良き結果をもたらすことを願う。


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