ゲコの酒つづり 2

下戸だが、暑い夏はビールの気分だった。
今巷には数々のノンアルコールビールが出回っている。
湿度と暑さに1日耐えた後、パッッカン!とプルタブを開ける音と、シュワシュワと弾ける炭酸はたまらない。
下戸なのでコーラでも癒されるが、今時のコーラはたいがいペットボトルである。
シャワーでさっぱりしたところへのパッカン、喉を鳴らしてゴクゴクと飲んだ後の「あ"ーーー!」は、ノンアルビールでこそだ。 

そんなノンアルビール党の私だが、このところの急な秋の訪れに、家人が飲む日本酒に目が行った。 

『ぷくぷく醸造』の名と、タヌキ。
およそ下戸の思う日本酒像とはかけ離れている。

まるで昭和のケーキ屋の定番「タヌキケーキ」のような絵柄。
ラベルには酒の名前がない。いや、このタヌキの絵が名前なのか?
プリンスが突然名前を捨ててシンボルマークだけになったのを思い出す。

ラベル裏のQRコードから探ると、クラフトビールの文化や技術をかけ合わせた日本酒づくりをしているとあった。
ビールの季節から日本酒の季節への中継投手としてぴったりではないか。中継ぎ投手はどんな試合展開の時にも登場する。枝豆にもサンマにも適応してししまうのかもしれない。

香りに甘みは少ない。タヌキケーキから想像する甘みではなく、すっきりとした香り。
舌先で舐めると、これは、まだ少し青みの残るバナナのような味わい。
決して完熟した甘みではない。さっぱりとしているのに最後に濃厚さの可能性を感じるような。 
家人は「葡萄のよう」と言ったが、私は違うと思った。葡萄のような弾けるフレッシュさではなく、もう少し複雑な感じがしたのだ。
いわゆる米のフルーティーさとは違う奥行き。

作り手の方は、きっとお若くて感性豊かな方なのだろう。ぷくぷくとは発酵の様子だろうか。


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