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閲微草堂筆記(213)懺悔

巻五 懺悔
 滄州の樊氏が扶乩(フーチー。占いの一種。清代に流行した。)をおこなった時のこと、その場には河工(沿岸工事に携わる役人)の某がいた。

 扶乩で降臨した神は関帝であったが、たちまち大きな字で書き付けた。

曰く、
「某よ、前に進み出よ。汝は何やら懺悔を書き記しておったが、回りくどく自ら弁護する言葉のなんと多いこと。神に対してもこのようなのだから、人に対しては推して知るべしである。そもそも、誤って人を傷つけてしまうのは過失であるが、それを隠し弁護するのは悪である。天は過失に寛容であるが、悪には天誅を下す。一体どうして汝の巧言を聞くことができようか。」と。

 某は地に伏し恐怖のあまり息を荒げ、流れ落ちる汗は雨のようだった。それからというもの、彼は何かを失ってしまったかのように怏怏とし、数カ月後に病死した。
 彼が一体何のことを懺悔していたのかは、ついぞわからなかった。 

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