見出し画像

【絵本原作】ぎゅうにゅうまく


ぼくは 牛乳が 大好きだ

冷たい牛乳も いいけれど、

冬に飲む あたたかい牛乳は、

本当にさいこう!

心もからだも あたたまる。

マグカップを持って、フーフーしながら牛乳を飲もうとする『ぼく』

でも、

『ぎゅうにゅうまく』は

ちょっと苦手。

『ぼく』のカップの中には牛乳膜が……

もちろん残さないで

ぜんぶ飲むよ。

だって お母さんが

「もったいないから、ぜんぶ飲みなさい」って言うんだもの。


それに……


『アイツ』がじーっと見ているから。

《謎の生き物》登場。陰から不安そうな顔で『ぼく』を見ている。

最初は おばけ? って思ったよ。

だけど アイツはこうやって 昼間も顔を出してくる。

ぼくが 牛乳を飲んでいる ときだけに。


ある日、ぼくは 気がついた。

あの 白い シワシワのからだは、

よく 見ると 『ぎゅうにゅうまく』!

アイツは きっと ぎゅうにゅうまく の ようせいだ。

『牛乳まく』の妖精、相変わらず、相変わらず『ぼく』をじーっと見ている。


アイツは何もしないよ。

牛乳を のんでいる ぼくを

ただただ じーーーーーーっと見ているだけ。

『ぼく』、横目で背後の『牛乳まく』の妖精を見る。

『ぼく』、不意打ちで勢いよく振り向く。慌てて身を隠す『牛乳まく』の妖精。

向き直る『ぼく』。『牛乳まく』の妖精、またぬーーーっと顔を出す。

そして『ぼく』、また不意打ち。『牛乳まく』の妖精もまた慌てて身をかくす。

まったく……なんなんだよ。

ぼくが ぎゅうにゅうまく を のこすのが 心配なのかい?

そういえば

きみは、あまり 人気が ないもんね。

ぼくの ともだちも 

「ぎゅうにゅうまく は 好きじゃない」

…って言ってたし。

また現れる『牛乳まく』の妖精

あーあー

そんな顔しないでよ。

涙目の『牛乳まく』の妖精

はいはい

わかった、わかった。

ぼくは そろそろ 出かける時間だし、

ここから 一気に のみほすよ。

『ぼく』、牛乳を膜ごと全部飲み干した。それを見届けた『牛乳まく』の妖精はホッとした表情で姿を消す。

ヘンな奴……

『ぼく』、さっきまで『牛乳まく』の妖精がいた場所を見つめる。

玄関を出る『ぼく』。

行ってきまーす。

『ぼく』、空を見る。

12月の青空には ぎゅうにゅう のような 白い雲が、
ぷかぷかぷかぷか うかんでいた。

クマのような形の白い雲

おーい! ぎゅうにゅうまく

きみの 名前を さかさまにして

『ぎゅうにゅう くま』だったら、

しろくまみたいで 人気が 出たかな?

マスクのような長方形の白い雲。

それとも 『ま』と『く』のあいだに

『す』のもじを 入れて、

『ぎゅうにゅうマスク』なんて どうだろう?

うん、冬だから、きっとやくに立つぞ。


ぼくもヘンなの。さっきからずっと、アイツのことばかり考えているよ。


次の日

ぼくは また ぎゅうにゅう を あたためて もらった。

今日は めずらしく まくが できて いない。

『牛乳まく』の妖精の姿はない。

何だか物足りない『ぼく』。

「お母さーん! もう少し あたためてぇ!」

《おわり》

『ぎゅうにゅうまく』の妖精です。私は絵が下手なので次女に描いてもらいました(笑)

#創作大賞2023
#オールカテゴリ部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?