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メルヘン宇宙~いろんな星のショートショート~ オフローズ・宮崎駿介

神保町よしもと漫才劇場所属 オフローズ・宮崎の連載第九回。
いろんな星で起こるお話を一回読み切りで展開していきます。
今回は、とある星で卒業課題に頭を抱える学生のお話です。

第九回 『卒業課題~サルの星~』


緑生い茂るジャングルで、僕のサルたちは美味しそうにバナナを頬張っている。

おしまいだ。もう間に合わない。

神学部天地創造学科の卒業課題であるサルの星の作成。提出期限は明日。

同じゼミの他の学生の作品は……

サルが火をおこし肉を焼く星。

サルが手を合わせ信仰する星。

サルが銃を持って殺し合う星。


僕の作品は……

サルがバナナを頬張っている星。

もうおしまいだ。こんなんで卒業できるはずがない。

僕は四畳半の下宿の真ん中にサルの星を浮かべ、つらつらと後悔を始める。

もっと前もって取り組むべきだった。

女神たちと合コンなんてしている場合じゃなかった。

いや合コンは良かったとしてもバーベキューはするべきじゃなかった。

でもバーベキューも楽しかったし、今度の旅行も楽しみだ。


僕がそんなことを考えている間もサルたちは美味しそうにバナナを頬張っている。


よし!このまま提出しよう!

ある意味このサルの星が一番原初的な生命の営みを感じさせるものであって素晴らしい、とひねくれきった教授たちに評価される可能性も無きにしも非ずとも言えなくない。


いやだめだ!

こんな星を提出して卒業できないなんてことになったら内定先の輪廻転生斡旋会社に顔向け出来ないし、家族も地元で後ろ指を刺されることになること請け合いだ。


でも今の僕になにが出来る?

課題の提出まであと1日。

他の学生は星を完成させるのに少なくとも一万年はかかっているらしい。


あと1日でサルを劇的に進化させる方法は……

あれしかない。バレたら退学どころの騒ぎじゃすまないけどもう僕にはこの方法しかない。
僕はサルの星から2匹のサルを掴み取ると卓袱台の上に置いた。

天地創造において対象に直接干渉することはタブーであり、学者がそれを行えば二度と学会で発言することは出来なくなるほどの重罪だ。

でも僕はただの学生だ。卒業さえ出来てしまえば多少の不正はかまうものか。

卓袱台の上で2匹のサルはあたりの様子をうかがいながらもバナナを頬張っている。

2匹のサルのバナナを取り上げ僕は言った。

「おまえたちは選ばれたのだ。選ばれしおまえたちに禁断の果実を与えよう」

僕は2匹のサルに禁断の果実を与えた。


僕は留年した。


あれから一万年以上経った今でも僕の提出した星のサルたちは美味しそうにリンゴを頬張っている。

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■オフローズ
2016年結成。カンノコレクション、宮崎駿介、明賀愛貴のトリオ

著者/オフローズ・宮崎駿介
絵/オフローズ・明賀愛貴

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