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〜The origin of Laugh〜 feat.滝音

笑いを追求する芸人さんの起源て何だろう。ふとそんなことを思い立って聞いてみました。
今回は言葉のチョイスをパワーワードに昇華させ、見る者の琴線にいちいち触れまくらせる“滝音”の笑いの起源。

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それぞれのお笑いの原点、リスペクトしたもの。


秋定:お笑い自体は小さい頃から好きだったんですけど、芸人として意識してハマったのはフットボールアワーさんですね。小学校の頃に初めて見てからずっと好きで、大喜利も強いし、漫才も面白いし、ボケも理想形でした。

お笑い自体は小さい頃から興味はあって見てたんですけど、芸人になることはまだ考えてなくて……ベタにプロ野球選手になりたかった。でも、中学生になったら中学校の先生になりたくて。でも、高校2年生の時に夢で、テレビの『踊る!さんま御殿!!』に出て、僕がひな壇の若手枠の端っこに座っている光景を見たんですよ。その夢をきっかけに先生という職業について考えてみたら、ある意味、収入は安定しているだろうけど、ただ最終的なゴールがなんとなく見えてしまって、なんだか物足りなくなり、それからむちゃくちゃ芸人になりたくなったんですよ。

ただ、これはもしかしたら一過性のものかもしれないと、大学に行って、4年間で思いがブレなければ、芸人になろうと決めたんです。で、そのままブレなかったので卒業後、NSCに入学することにしました。

そういえば、こんなことがありました。僕は高校の時、俗に言う“隠キャ”だったんですけど、そんな夢を見たことで、なんか自分の中でトリガー引いちゃってて、高校2年生の修学旅行の時、よく夜にクラス対抗で出し物みたいなのをやったりするじゃないですか、その時に他のみんなは歌を歌ったりする中で、僕、1人で大喜利をやったんです。

ザ・プラン9のヤナギブソンさんが『R-1ぐらんぷり』に出場した時にやりはった形容詞と名詞をランダムに選んだ題材で大喜利をするネタ設定をそのままパクって。

で、急に目立たない“隠キャ”の僕がやりだしたから生徒や先生みんな、ザワついて、やりきった後、生活指導の先生が目に涙浮かべて握手求めてきたんですよ(笑)。多分、僕みたいな暗い子が勇気を振り絞って頑張ったみたいな感じで受け取ったんやろなと思うんですけど。

自分の中ではお笑いやりたかったらこれぐらいのことはやらなきゃいけないんやろなっていうのと、高校生なんて厨二病じゃないですか、だからこれが将来お笑いで売れた時に伝説になるんだろなっていう意識があったと思うんです。“あの時から俺は、お笑いをやってた”っていう……。ただ、今、それを思い出してめっちゃ恥ずかしいですけど(笑)。

さすけ:大分はツッコミのない世界でした。ボケるというのはありましたけど。『M-1グランプリ』や『笑いの金メダル』、『R-1ぐらんぷり』はオンエアされてましたが、周りはみんなが見てるって感じではなかったですね。

初めて南海キャンディーズさんが『M-1グランプリ』の決勝に出てらっしゃった時、翌日、唯一見ていた同級生と話していて、“何が面白いの? 意味がわからない”って反応で……。今思うと、ある意味、南海キャンディーズさんは、2周目の笑いじゃないですか。だから普通のツッコミが浸透してない大分ですから、根本的に理解できなかったんだと思います。そんな場所でずっと生きてきて、あたし的にいちばん影響を受けた芸人さんは、レッド吉田さんでした。

『内村プロデュース』という番組を見ていて、最後に「今日のレッド」ってコーナーがあり、そこで“ギャグ3連発”っていうのをやってらしたんですけど、それに凄く影響を受けて、学校でマネしてギャグをやってましたね。
壁に張り付いて「スパイダーマン!」って言うだけとか……。

まぁ中学生ですからそんな程度で、しかもツッコミがないのでボケ逃げというか、ギャグしたらとりあえず周りは笑うって状況で。だからあたしはみんなからは面白いヤツ!っていう位置付けをされてました。今考えると恥ずかしいですけど(笑)。でも、同級生にgo!go!vanillasのベースの子がいるんですが、彼と一緒にギャグやったりして楽しかったんです。それでだんだんと芸人になりたいと思うようになり、親にも芸人なりたいってずっと言ってました。

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NSCへ。

さすけ:ただ、親に「大学だけは出ておけ」って言われたので、大阪大学に行きました。それで卒業してからNSCに入ろうかと思ってたんですが、なんとか4回生の時に行けそうだなと入学したんです。でも結局、スケジュール的にNSCにほぼ行けてなかったですね。
アッキーが当時、NSC講師のアシスタントをしていたんですけど、あまりにも行ってないからあたしのことは認識してなかったと思います。

秋定:確かに全然印象なかったなぁ。

さすけ:一応、大学を優先させてくれて授業を理由にNSCを休めることにはなってたんですけど、それでも出席日数がなさすぎるので救済措置として、NSCの卒業ライブの手伝いをしたら、卒業資格をあげると言われて、その時だけ行ってなんとか卒業という形にはなりましたけど。

秋定:大阪でお笑いをやるならNSCに入らなきゃいけないという意識がありましたから東京のNSCは考えてませんでした。とんがってるネタで注目されて、結局一発屋みたいになるよりは、地に足つけて、面白い奴として出たいと思ってましたから。

さすけ:今、思い出したんですけど、確か19歳くらいの時にネットの掲示板に相方募集っていうのを見つけてたんで、連絡してみたんですよ。
当時はNSC以外にもインディーズライブもあって、オーディションとかもあったんです。それでそういう掲示板のホームページがあったのかな。で、とにかくアポをとってみて会ったらその人は8歳くらい年上のNSCを卒業した方で、その時にネタ帳を持って行ったんですよ。それをパラパラって見て「NSCに入ったほうがいいよ」って言われたんです。多分、ネタ帳見てこいつあかんなって思われたんでしょうね(笑)。ま、それがきっかけでNSCに入れたわけですけど。
そしてアッキーがアシスタントをしてたというわけですが……。印象が嫌な感じだったんですよ。

秋定:そやな、嫌な役をやってたな。

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さすけ:初めての授業でアシスタントがひと言くれるんですけど、なんか軍隊みたいな感じで何でそんな嫌な感じでかましてくるんだろって思いました……。

秋定:前の代でそんな感じがあって継承してたんや。先生たちも怖かったし、「ネタ捨ててこい」とか言われたりもしたし、とにかくNSCは厳しいところってイメージがあったんです。だからさすけの時も、その方がいいかなと厳しめにいったんですよ。

僕のNSC33期生と、さすけの34期生ってゆとりの過渡期というか変わったんですね。33期生が厳しさでは最後でした。授業が始まる10分前に教室に入らなかったら先生がまだ来てなくても入れないとかいろいろ。でも、34期生で緩くなりました。10分前でも5分前でも入れてあげてとか、最悪、遅刻しても入れたげてって先生が言うたりしてたんですよ。

それが気になって、一回、NSC担当の社員さんとご飯に行った時に「結局、仕事遅刻したらダメじゃないですか。だから10分前に来なかったら教室に入れないっていう厳しさを見せてた方が、将来仕事の時に、活きてくるから以前のように10分前に教室にいない奴は、もう入れないようにした方がいいと思います」って言うたんですよ。そしたら社員さんも賛同してくれて「考え直してみるわ」って言うてくれたんですよ。そやのに、翌日、僕がトチったんですよ……。社員さんが「昨日の言うてたことなんやったん?」て、引いてました。

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そしてコンビに……。

秋定:NSCのアシスタントが終わって、当時インディーズライブにひとりで出てました。さすけは、SKⅡってコンビで同じライブに出てたんですけど、もうすでに結婚してて、それを隠してるって聞いてたんですよ。で、それちょっと面白いやんってことで話しかけまして……ま、それだけの間柄だったんですけど。

さすけ:そうだ! あたしが解散する1週間前に話しかけてきたんです。あたしはアシスタントの人という認識で、結婚してること、いじってくるなぁって感じで……。

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秋定:ある日の夜にツイッターのDMにさすけから「LINE教えてもらってよろしい? さすがにそれはエロいか?」って意味のわからない文面が来たんですよ。互いに連絡先知らなかったので、ツイッターは相互フォローしてたんでそれで来たんですけど。で、LINEアドレスを教えたら「実はコンビを解散することになりまして、すぐに相方を見つけたいから良かったらどうですか? ユニットでいいから良かったらやってみませんか?」ってメッセージが来たんです。

さすけ:解散したその日ですね。あたしが思い浮かべた3人に、メッセージを送りました。そう言えば、1週間前にいじってきたアッキーが「誰からも誘われへん」って言ってたし。

秋定:実際は誘われてたことあったけどな!

さすけ:(笑)。他にメッセージを送ったのは、当時NSCで割と面白いって言われてピンの子とやってた子、そしてよく一緒に喋ってたけど、あんまりお笑いをやってなかった子で、アッキーだけが唯一前のめりにお笑いをやってたし、メッセージ送ったらすぐ返事くれましたし。誘われたことないから誘われたことが嬉しかったんでしょうね。

秋定:だから誘われたことはあるから!

さすけ:一応、他の2人ともネタ合わせ的なことはやりました。ただその子たちは家が遠かったんですよ。あたしは早くコンビを組んで道頓堀のZAZAで「バトルZAライブ」って若手が出るイベントに出たかったんですけど2人はなかなか時間的、距離的にも合わず、アッキーだけがフットワーク軽く出てくれたんですよ。そのスタンスが自分的には大きかったですね。

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秋定:僕は当時26歳くらいやったんです。で、漠然と年内にコンビを組まなかったら芸人を辞めようと思ってたんですが、もう11月くらいになって、このまま相方が見つからずに辞めるなって感じになってたら誘われて。最後のタイミングだからとも思って、ちゃんとさすけの話を聞いたんです。

それで一回手合わせをしてみようとなって、お互いにネタを出し合いながらやってるうちに、さすけのネタが思ってたより意外とちゃんとしてるし、これだったら一緒にやってみるのもありかもなと。

中途半端に変な奴と組んで無駄に続けるのは嫌だったので、気持ちはやめるか、組むかの二者択一。それで僕が選択したのがさすけと組む方でした。
そしたら、いつまでにエントリーを出さなければ「UP TO YOU!」ってイベントに出られへんから、ちゃんと組むか、組まないかを選んでくれと言われまして。ちゃんと返事したのが2016年2月14日のバレンタインデーでした。

さすけ:早く次のコンビで活動したかったので嬉しかったですね。

秋定:ただ、組んだ当初はボケとツッコミが逆でした。さすけがボケというか天然みたいで、僕が突っ込まへんと言うか、どんどん、天然ぶりをおだてて、のせていくって感じで、ミスを突っ込みながらさらに誘導していくってスタイル。なかなか言葉では伝わりにくいですが……。

設定的にも、僕らはええなと思ってやってたんですが、オーディションライブに何回か出てもなかなか結果が出なくて……。そんな時に作家の里村さんにネタを見てもらったら「がっかりやわ」と言われまして。

里村さんは、以前それぞれが組んでいたコンビを知っていて、僕のボケが好きで、さすけのツッコミも好きやったんですって。で、どうなんのかなって見てたら互いの設定が逆になってネタをやってるって。それで「がっかりやわ」と。

でも僕はいいと思ってたので「キャラがないと目立てないので、こういう風にしてるんですよ」って答えたら「お前らは元からちゃんとキャラがあるから、一回シンプルに秋定がボケ、さすけがツッコミの設定でネタを作ってみてくれ」って言われたんで、改めて作り直してみたら、ライブでいい結果に転がっていって……。

さすけ:だからボケとツッコミを元に戻しただけで、こんなに簡単でいいのかなって正直思いましたね。それまでいじり、こねくり回してたのに。いや、こんなシンプルなの、ウケないって思ってましたもん。

秋定:自分たちでも拍子抜けしたくらいにポンポンってネタができたんですよ。だからこそ余計に不安でした。でもお客さんにちゃんとウケたんです。しかも作家さんたちからの評価も良くて、それがコンビを組むことの弾みになったと思います。

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二人の関係性は?

秋定:プライベートに関しては仲はいいと思ってますね。

さすけ:
アッキーとは思ったこととか全部ちゃんと話し合えるので、うちの家にも来ます。同級生でNSCに入ったコンビやNSCで仲良くなったコンビとかって、多分、次第に仲が悪くなったりするじゃないですか。

秋定:イメージと違ったみたいなね。

さすけ:それがあたしらにはないので。もともと相手のことをよく知らない同士が組んでいるので。悪い意味で言うと思い入れがないって言うんでしょうか。お互い、いい距離感がわかってると思いますね。

秋定:確かに距離感は他人から見たら変やと思われるかもですが、2人の間ではわかってると思います。ネタでぶつかることはありますけど、僕はさすけと1日中遊ぶこともできるし、旅行もできます。

さすけ:じゃあ、あたしは正直キスまではできるかな。

秋定:それは意味が変わってくる!(笑)。けどもしされたら目は瞑るかな。

さすけ:あたしは目は開けるな。

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これから

さすけ:それを聞かれると、毎回が目標ないって言うてるんですよね。
でもあえて目標は?って問われると……うん、国産のうなぎを食べるですね! 高級品ですから。

秋定:もうそれが目標やったら、僕がお金出して食べさせたげるよ!(笑)。

さすけ:家族の分も?

秋定:ハイハイ!(笑)。……僕は、今はバイトもせずにある程度お金もいただいて、安定して生活もできてる状態で、普通の会社員と比べたら少なめですけど、お笑いを楽しくできて暮らせてます。正直なところ、そんな今の状態を維持するか、ちょっと上くらいでいいんすよ。気持ち的には。

40万円あったら僕は十分。それ以上あったら失うものや犠牲にしなきゃいけないものが多い気がして。ただ「人気者になりたい」、「お金持ちになりたい」、そのためにめちゃめちゃ身を削ってまでやるっていうのは僕らにはあんまり…。でも、ネタはもちろん作って、何よりいいネタを作りたいです。
テレビとかに出ると家族や親族なんかも喜ぶし、出してもらった効果でお客さんも知ってくださることもあって反応もいいとは思うんですが、やっぱり舞台が一番ですかね。生の反応を肌身で感じるのが何より嬉しいので。だから漫才で暮らしていけたらっていうのが目標ですね。

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さすけ:子どもがテレビ出てたら喜んでくれるので、そういう反応を感じる上でメディアは良いなと思います。ただ国産うなぎ以外の目標はと言うと……目標を探すことを目標にします!

秋定:あともう一個ありました。売れてる人がやっている、後輩芸人を連れてプライベートでどっか旅行に行くとかやってみたいです。できそうなんで言うたら太ってる後輩芸人を連れて焼肉やバイキングに行きたいですね。

思い出の場所

島之内のコメダ珈琲

秋定:最初はなんばパークスにあった外から丸見えのちょっとおしゃれなカフェやったんですけど、ちょっと値段も高かったので、当時住んでた家の近所のコメダ珈琲でよく2人でネタの相談したりとかしてました。

さすけ:前のコンビの時に使ってたんですよ。だからあたしが指定しまして、まぁアッキーの奢りだったんで(笑)。

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いきつけのお店

秋定:日本橋ラーメン屋「魂心家」さん。週1で通ってるお店で、攻めてすぎないのがいいんですよ。本当に自分の味覚に合ってるラーメンなんです。が、ある日いつものように行くと、突然さすけのサインが飾られていて、面白いからSNSに投稿しようと思って、“写真撮っていいですか?”って聞いたら「ファンなんですか?」って言われました。いまだに僕のサインは頼まれてないです。

さすけ:石橋に「舌舌(たんたん)」というお店があったんですけど、牛タン専門店で焼きしゃぶとか、奥さんと昔から記念日やイベントごとには必ず行ってたんですけどある日突然無くなってて……。行きつけだったので今もどこかでやってらっしゃるのなら行きたいです。

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■滝音プロフィール
さすけ(左)と秋定遼太郎(右)のコンビ。NSC33期。
2020年 ABC「第41回ABCお笑いグランプリ」決勝進出
2020年 キングオブコント決勝進出

■撮影協力
THE MARK COFFEE SUPPLY 大阪店(大阪府大阪市西区南堀江2-5-19)

滝音INFO

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取材・構成/仲谷暢之
撮影/渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)


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