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ストリップ劇場で働いていた体験記~赤青緑のパーライト~ たくみ

よしもと神保町漫才劇場所属 たくみの連載小説がスタート。
自身の経験に基づいた「ストリップ劇場のバイト」のお話をストレートな気持ちで綴ります。

はじめてみるストリップ


新宿にあるストリップ劇場。
そこで僕はバイトをしています。


そもそものきっかけは何かバイトをしようと思いTwitterのサーチで「バイト募集」と検索して1番上に出てきたところに行こうと思い試してみたことがはじまりでした。


1番上は打ち子寮完備、3桁稼いでる人もいますという明らかに詐欺みたいな募集が引っかかりました。


3桁も稼げるのか。今3桁稼げたらだいぶ楽になるよなとか服とかも沢山買えるよななんて妄想に気を取られました。けれど一旦冷静になり、それは見送りました。危なかったです。
何個かの明らかに危なそうな募集を避けて出てきたのが今働いているストリップ劇場のバイト募集のツイートでした。

簡単なイラストに「受付照明募集」とだけ書かれていたそのツイートがなんだか無性に気になって、気付いたら電話をかけていました。
これまで一度もストリップ劇場に行ったこともありませんでしたし、知識も何もありませんでした。

今までに経験をしたことないことが味わえるんだろうという好奇心があったのかもしれないですけど、どうしてその時それに引っかかって応募したのかあまり覚えていなくて、特段とした理由もなかったかもしれません。


面接の日。


はじめて訪れるストリップ劇場。

劇場の入り口には踊り子さんの写真が飾られていて、おそらくファンの人からのいいとものテレフォンショッキングの時に見るお花が飾られていました。
映画館とはまた違った独特な雰囲気を醸し出す劇場に、体の中のどこかをどきまぎさせながら、歩き方も普段の歩き方になっていないおぼつかない足取りで、ステージのあるらしい地下に向かって階段を降りていきました。
左手に受付が見えました。普段だったらそこでお金を払って中に入るんだろうなって構造でした。

レトロな映画館にあるような透明のプラスチックを挟んでお客様と対面する形のあれです。お金を入れるところだけ長方形に空いているあの受付です。そこだけはみたことがある光景だったので少し安心した覚えがあります。

バイトの面接であることを告げ、劇場のいわゆるテケツの中に案内されました。
一畳にも満たないほどの空間で壁の茶色の濃さが劇場の歴史を物語っていました。
あまりにも簡単ないくつかの受け答えで面接が終わり、二日後には出勤することになりました。
まったくストリップを見たことないことを告げると、「軽く見ていくか?」そう言われ僕ははじめてストリップをみることになりました。


臙脂色の革が貼られていて、それを囲むように黒の枠組みで覆われた観音開きになる扉。それを開けるとまさに踊りの真っ只中で、いろとりどりの光が空間を包んでいました。
はじめてみたはずなのにどこか懐かしさを覚えたり、単純な照明の熱量とは違った暖かみのある光の空間でした。


劇場の中は一般的なステージの真ん中に道が伸びてあり、その先にまた丸くなったステージがある。
後から知ると一般的なストリップ劇場のステージの構造でしたが、はじめてみるそれに僕は心を躍らせました。

見たことないステージで、見たことのない光の中で踊る踊り子さんは空間のど真ん中で存在感をありったけに出していて、それなのにどこかすぐ消えでしまいそうなくらい儚くて、それでも伝わってくる気迫や色気は客席に確かに届けられていてただただ立ち尽くして時間が過ぎました。


二日後にはここで働くんだと思うと期待感よりも大丈夫か?という心配と不安でやっぱり働くのをやめにしようかとも考えてしまうくらいのステージでした。けれど、今までにない体験をしてみたい関わりたいと思い、僕はここで働くことを決めました。
こうして僕のストリップ劇場でのバイトの日々がはじまりました。

たくみ(1990年8月14日)(31歳)
千葉県船橋市出身、NSC東京校20期
ナミダバシとして5年間活動、先日解散を発表。

著者/たくみ

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