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音曲漫才師になるまでの音楽珍道中

【NSC入学〜音曲漫才師へ】


どうも、ラニ山です。

バンドマンだった僕が芸人になり音曲漫才師になるまでを描く
芸歴9年目にして早すぎる自伝コラム第3弾

全部で3回あるので段階を3つに分けています

第1回目「幼少期〜バンド結成まで」
第2回目「ラニーノイズ結成〜カナダ音楽留学」
第3回目「NSC入学〜音曲漫才師へ」


今回はラスト
【NSC入学〜音曲漫才師へ】


前回の記事がとても長くなったので
今回は短めに終わらせます。

それでは行きましょう


チンチンチンチン珍道中〜♪(メロディは各々で)


帰国後


カナダから帰ってきた山田は燃えていた
刺激的な毎日
1日も無駄にしなかったカナダ生活
この勢いのまま俺は熱い日々を過ごすと思っていた

勘違いだった

1年ぶりの日本、久しぶりの友人、親のご飯
全てに興奮したが数日で慣れてしまい
嘘みたいにいつもの日常に戻った

なんだったらカナダに行く前よりもだらしのない日々
特にすることもなく地元の友人の児玉(第一回目に登場した高校時代のバンドメンバー)と施設のジムと銭湯に行く日々

ここで学んだ
置かれた環境の大事さ
山田はケツを叩かれないと
本当に何もしない
超絶だらしのない人間だった

バンドメンバーがいないのでネットでメンバー募集をする

ベーシストとドラマーはすぐに見つかった
音源をネットに上げていたので
それを聴いて気に入ってくれた

ただ、山田はこの時
お笑いをしたくなっていた

子供の頃からの夢 〝芸人“
カナダで撮った映画がお客さんにウケて
笑いをとる快感を覚えてしまった
カナダでの特殊な経験を語る場が欲しい

音楽活動をするためのカナダ留学でまさかお笑い芸人になりたくなるという
珍現象だった

気付けばネタのことばかり考えていた

友人の児玉に相談する

《芸人したいねんけど、どう思う? さらにバンドも続けたいねん》

「いいんちゃう? バンドだけするより売れるかもな」

他人事のように返事をしているが
彼は一年後
山田のバンドに加入することとなる

自分だけで考えていてはダメだと
もしNSCに入るなら
異国の激烈な日々を共にした洲崎が相方だと決めていたので
本人に相談することに

洲崎と2人で銭湯へ
当時よく行っていた寝屋川の水春だったと思う
大事な話をするときは銭湯と決まっていた

露天風呂に入りながら


《芸人になりたいねんけど、一緒にNSC入らへん? でもバンドも続けたいねん》


「えぇな! 任せるで!!」

任せられた
洲崎からしたら今まで音楽活動だけをしてきて
カナダまで行って
日本に帰ってきたら突然、芸人を誘われた
普通驚くはず
洲崎が嫌がったらやめるつもりだった

でも、即答で任せてきた

「俺の人生の舵はお前が握ってるから」

船長やった!!
俺は知らんうちにスザキ号の船長を勤めていた!!


洲崎からお笑いをしたいなんて一度も聞いたことがない

それなのに任せるだなんて

変態だった!!


ただ、なんとなく予想もできていた

なんとなく俺の提案のってくれそうやなぁ〜

という気はしていた

カナダ行く時もそうやったし
この感じは芸人になった今もずっと続いている


結局ダメで元々
叩かれるの覚悟でバンドをしながら吉本の養成所NSCへ入学することに
カナダから帰ってきて1年が経っていた

NSC

オーディションを無事に合格(学費さえ払えたら誰でも受かる)
社員さんとの集団面接では現在YouTubeを一緒にやっている大村ジーニアスもいた
めちゃくちゃ人相の悪い半グレがいると思ったら
上手なヴォイスパーカッションを披露していたのを覚えている

僕はここぞとばかりにカナダで強盗に遭った話をした
少しでも笑い話にして消化したかったし
こんな経験している奴はまずいないだろうと思った

洲崎は愛犬が死んでしまった話をして
社員さんに
「犬が死んだ話では誰も笑わない」
と怒られていた

相方を間違えたかと思った

この日以来
彼から愛犬の話を一度も聞いていない


NSCの授業では
ずっとコントをしていた

先生の印象に残らなければと変なネタばかりしていた

初めてのネタ見せでは全校生約500人の中で
唯一ラニーノーズだけネタを最後までやらせてもらえなかった

【就職の面接で笑いを取ろうと新喜劇のノリをしたら怒られて謝る】
こんな内容のコントだったのだが
ネタ中に講師に
「もうえぇわお前ら!! こんなん新喜劇のパクリやないか!!」
と怒られた
ネタ中でも謝ってたのに現実でも謝ることになった

別に新喜劇のボケで笑いを取りたかったわけではなく
新喜劇のボケをした後に気まずい空気になっているのが面白いと思ったのだが
今思えば0年目の若手がこんなネタをしていいはずがない

〈ラニーノーズというネタを途中で止められたやばいコンビがいるらしい〉

悪評が拡まることに

その後も懲りもせず一言も喋らないサイレント漫才とか
ホラーやったりSFやったりいろんなことを試した

インパクトを大事にしていた

歌ネタは一度もやらなかった
できるとも思っていなかった

当時深夜番組で『バカソウル』という歌ネタ番組があった
毎週音楽が得意な芸人が歌ネタをライブハウスで披露していた

俺らには絶対無理やな

バンドをやっている
ギターが弾けるというだけで
ネタに取り込めるとは思わなかった

1年経ちNSCを卒業

まだ歌ネタはやっていない


歌ネタで劇場メンバーへ

芸歴1年目の秋
バンド仲間から弾き語りライブに誘われる
歌い手としてではなく芸人として
バンドマンが歌った後の転換中、繋ぎとしてネタをしてほしいと頼まれた

音楽イベントでネタをしたことがなかったので
せっかくやしギターを使ったネタを作ることにした

路上ライブしているシンガーが日本の政治をディスっているが
曲がダサくて政治のことも全くわかっていないコント

とてもシンプル

そして
とてもウケた

シンプルイズベスト

今までにないくらいウケて手応えを感じたので
【5UP】の劇場メンバーをかけたオーディションでやってみる


合格


一回こっきりのつもりで作ったネタがまさかの大活躍

今思えば恥ずかしい話だが

歌ネタ処女作『日本の政治』
スベリ知らずで劇場メンバーにもなり
笑いの殿堂〝なんばグランド花月“にも立てて

当時は
このネタで売れると思っていた

このネタを超えるものはもう作れないと

天井だ

本気でそう思っていた

とても青く
なんと低い天井を見積もっていたのだろうか


全く売れることはなかった

それでも音楽は武器になると気付き、そこから歌ネタを作る

歌ネタといってもコントだった
どちらか1人だけがギターを弾く
元々やるつもりがなく
たまたま作った歌ネタで評価されたので
歌ネタもやれば普通のコントもするコンビだった


突然漫才師へ

5UPが【よしもと漫才劇場】に変わった
今では考えられないが劇場開設当初はコントをしてはいけないルールがあり
全員漫才をしなくてはいけなかった

俺たちは漫才のネタが1つもなかったのと
特に漫才をするつもりもなかったので
すでにあったコントをそのまま漫才でやった

伝家の宝刀
『日本の政治』である

歌ネタコントをそのまま38マイクの前でやる行為は
俺たちは漫才をやる気はないんだ、という静かな主張でもあった

政治に対する不満をいうネタをしながら
吉本という体制への反発でもあった(誰も気付いていない)

コントでやっているネタを漫才でやってもウケへんやろ
面白さ半減やろ

と思っていたら

漫才でも普通にウケた

さらに
寄席や営業では漫才の方が受け入れられるので

漫才の形を作っておいてとても助かった


ありがとう、漫才劇場

ありがとう、吉本興業


当時の山田は
とても青く、浅はかで、キモトガリしていた(キモい尖り方)

そして漫才の魅力に傾倒していくのであった


ヒップホップとの出会い

コントをそのまま漫才にするやり方で漫才ネタも増えてきた
それでも、ギターは1本のみ
歌ネタではないコントもたくさんしていた

そんな中

同期の芸人にある動画を勧められる

ラップバトルの映像
存在は知っていたけど見たことがなかった

そこで何を言ってるかわからんけど
ただならぬ存在感を出している男がいた

『鎮座ドープネス』


それまでパンクロックばかり聴いていたので
日本のラップは駄洒落を言うてるのか?
くらいの認識
全然触れてこなかったのだが
鎮座のバトルを見てからのめり込むようになる
フリースタイルバトルはめちゃくちゃ面白かった

鎮座は韻を踏まないスタイル
フローというトラックに合わせて自由に歌う
卓越したセンスに日本人離れした発声
簡単に言うと

パナイ


かっこいい〜

ラップやりたい〜

でも芸人だからできない〜

でもやりたい〜

ラップするネタ作ろう〜


ということで好きなだけラップができるラップバトルのネタを作った

2年後の2016年に歌ネタ王でこのネタを披露

この頃世間は『フリースタイルダンジョン』(ラップバトルのテレビ番組)の影響で
ラップブーム真っ只中

ヒップホップが市民権を得ていた

ラップバトルのネタはネットでバズる

さらにその2年後にMVを作ってYouTubeにアップ(遅すぎ)

ラップブームは現在も尚とどまる事を知らず
その動画もあと少しで200万再生

みんなラップ大好き


大人になってからの音楽の好みは10代でだいたい決まるらしいが
20代後半でヒップホップにハマり
新しい音楽は脳に良い刺激を与え
結果良いネタができて万々歳だった
鎮座ドープネスさんに感謝

そしてこの時思った

このネタで売れたと

このネタを超えるものはもう作れないと

天井だと

相変わらず
すぐ天井に手が届く山田であった


ダブルギター漫才

ラップバトルのネタは
2016年の歌ネタ王決勝で披露する前
2015年の歌ネタ王準決勝でも先に披露して落ちていた
自信作だったため決勝に行くにはどうしたらいいだろうと悩む

この時はギターで漫才を作る方法が全くわからず
コントのネタで漫才にできそうなものを無理やり落とし込んでいた
ギター1本のみで、どちらか1人はギターを持っていなかった

2人ともギターを使っていたら今の時代そんなコンビがいないし
面白いものができそうだなと
漠然と考えていた

話題にもなるだろうし
なんとか方法はないかな〜と

お遊戯会、園児の前で
俺が思想強めの激しい曲を歌うコントを作った

これは漫才にできそうだなとそのまま38マイクの前でやる


夜、劇場帰り

チャリンコを漕いでいた

ふと
洲崎もギターを持って
ナルシストのキャラで歌ったらダブルギターのネタにできるのでは……

思いつく

あの瞬間は今でも覚えている

桜川のライフの横を走っていた

ダブルギターのネタを完成させて
翌年初めて歌ネタ王の決勝へ進むことができた


音曲漫才師へ

この時、歌ネタ王は準優勝で終わる

これ以降ダブルギターのネタは増えたが
今までと変わらずいろんなスタイルのネタをしていた

しゃべくり漫才やったりギター漫才やったり歌ネタコントやったり普通のコントやったり

沢山のことしたがり屋さんという理由もあるが
1番はダブルギターのネタを作るのが難しかった


参考にするものがない
昔の音曲漫才を見ても楽しいが今の笑いとは違うし
ギター2本使っている意味があり、2人とも歌って
ネタとして成立しているものを作ることができなかった

そう言い訳して他のスタイルに逃げていた

さらにお遊戯会のネタで
はい売れました
もう天井ですと

天井を頭で擦っていた


いっそのことギターを使うのをやめて
しゃべくり漫才をしようかと迷い始める


そんな中

大きな出来事が起きる

2018年の年末
チーフマネージャーと担当マネージャーが2人とも変わり
4人で今後について話し合いをすることになった

そこでチーフマネージャーに
〝ラニーノーズはいろんなスタイルのネタをやっていてバンドもしてYouTubeでは映画を撮ったりしている。いろんな事をしているせいでコンビの色がわかりずらい。1つに決めて、全ての活動がそこに繋がるようにした方が良い“

そう言われた


音曲漫才に絞ることを勧められる

ギターを置こうか悩んでいた
確かに音曲漫才をした方がバンド活動も綺麗に繋がる
NSC在学中に意識していた印象に残るネタになるし
昔から親に言われてきた

〝他の人と違う事をしろ”

という教えにも沿う

2人にしかできない個性
唯一無二な音曲漫才

ネタ作りが難しいからと逃げていたが
腹を括って音曲漫才と向き合うことにした


2019年から毎月オトカケ漫才という
新ネタをおろす単独ライブを打つようになる(今も続いている)

担当マネージャーも精力的にフォローしてくれた

このオトカケ漫才でできたネタ
『ABCの歌』『だるまさんが転んだ』
これでこの年の歌ネタ王に優勝することができた


そして
もちろん思った

売れた

天井

もう天井に頭突っ込んでいると


それでも全然売れていない

とんでもない世界に入ったなぁ〜と思うが

限界なんてないんやなぁと
今日も天井を少しづつ押し上げています

でも冗談抜きで

NGK満席やホール営業など大勢の前で音曲漫才を披露して
最後に拍手喝采
スタンディングオベーションさながらの盛り上がりを肌で感じたときは

天井とは言わないが

音曲漫才師として一つのゴールに辿り着いたんじゃないかと思った
(もちろん他にも目指すべきゴール多数あり)


最近やっと
音曲漫才師には不可欠な
漫才冒頭で歌うテーマソングを作り
舞台で歌っている

ミキの昴生さんがそれをえらく感動し
「音曲漫才はなくなりかけてた文化やから素晴らしい」と絶賛してくださった


音曲漫才師である平和ラッパ・梅乃ハッパ師匠も僕たちの存在を大変喜んでくださり
先日ハッパ師匠のオリジナルピックをいただいた
NHKの番組で4人でコラボ漫才をさせていただいた時はとても嬉しかった


NSCで変なコントして怒られていた奴が
気が付けば文化・伝統を継承する役目を背負っていた
人生どう転ぶかわからないから面白い

バンドの方はネットで見つかったメンバーが1年で辞めてしまい、その後地元の友達の “デリカシーはないが筋肉だけはあるドラマー児玉” と彼のパートナーである “涙腺ゆるゆる泣き虫ベーシストのテツヤ” が加入
現在も精力的に活動している
こちらも今後どうなるか楽しみでしょうがない

はてさてコラムはこれで終わりです

これから音曲漫才もどうなっていくか全くわからない
ハマった音楽がすぐネタに影響を与えるし
最近クラシックを弾いているので
いずれモーツァルトみたいな
自律神経を整えるクラシック音曲漫才師になっているかもしれません
それでも
音は鳴らし続けていると思います
これからもどうか見守ってくださいな

3回に渡り(しかも毎回長文)
読んで頂きありがとうございました♪

珍道中でした!!


■ラニーノーズ プロフィール
山田健人洲崎貴郁のコンビ。2012年結成。
山田健人の特技はギター、フリースタイルラップ。
洲崎貴郁の特技はギター、弾き語り、英語、イラスト。
2019年 歌ネタ王決定戦2019 優勝
2020年 第5回 上方漫才協会大賞 話題賞

ラニーノーズINFO

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執筆/ラニーノーズ・山田健人

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