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細い手の内

時期的に足元の悪い率の高い中、ありがとうございます。
ピン芸人の真輝志です。
コラム連載も三回目になりました。
そして今回の記事が最終回です。

これまで駄文にお付き合い頂きありがとうございました。
最後の駄文も思う存分に駄文ですので、駄文気分の時にご駄文ください。

目的地までの移動中、あと十分は歩かなければならない地点で雨が降りだす。
エンジン全開で豪雨に進化したそれは「ゲリラ」を名乗る。
人々は走ったりどこかに避難したりと慌ただしく適応する。
僕は額に濡れ髪をはりつけたまま呟く。

なんや偉そうに。

遥か昔、雨は売れていた。
農民を中心に莫大な人気を集め、長く日照りが続いた日には「恵みの雨」と崇められていた。
時には雨乞いと称して舞いの接待があり、村一番の生娘がアテンドされることもあった。
今ではコンプラ的にアウトだが、そういう時代だった。
まあ理解できないでもない。
雨の有無は飢えに直結していたため、需要が半端ではなかったのだろう。

だがそれは昔の話だ。
現代では雨が降らずとも水を確保する術がある。
もう雨の時代はとっくに終わっているのだ。
そのことに気づきもしない雨は、未だに上から偉そうに降ってくる。
こちらが煙たがっていることなどお構い無しに「俺がきてやったぞ」とレジェンド面をしてやってくる。
完全に老害だ。

せめて予報通りに来てくれれば、まだ我慢はできる。
雨を好む人もいるので連日でなければ、まあ傘を刺してやらんでもない。
だがご本人登場ばりにゲリラで来られた日にはもうダメだ。
ザーザーと当時に流行った曲を歌われてもウルトラ知らんがなだ。
早く帰ってくれとしか思わない。

だから僕はゲリラ豪雨が来た時は徹底的にスカすことにしている。
まずはお前のことなど全く興味がないという態度で「はぁ、来ちゃったんすか」という表情を作る。
そして決して本走りはせず怠そうに小走りで屋内に入る。
さらに洗濯物も躊躇いなく部屋干しして、お前の登場など何の影響もないと思い知らせる。
悪態をついたり無視しすぎると「この前なんか尖ってるやつおったわ(笑)」で片付けられそうなので、あくまでスカし続けるのだ。
いつまでも乞われる立場だと思わせてはいけない。

もちろんリスペクトはある。
雨がいなければ食いっぱぐれていた若手は数え切れないだろうし、自分の先祖も世話になったことだろう。
正直、日によっては風流だなと思ったこともある。

雨よ、もしよければ今度話さないか。
お互い思うところもあるだろう。
一度腹を割って共に進む道を探ろうじゃないか。
大丈夫、君と僕ならまた地固まる。


■真輝志 プロフィール
NSC36期。趣味は、B'z・バスケ・読書。特技は空気椅子。

真輝志 INFO

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著者:真輝志

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