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2人は“最高のビジネスパートナー”!? オールドルーキー・シシガシラのちょうどいい距離

シシガシラがバトルライブ「ムゲンダイユースカップ」を勝ち上がり、昨年12月にムゲンダイレギュラー入りを果たした。芸歴14年目と15年目のアラフォーコンビだが、結成は2018年とまだ日が浅い。もともと親しかった先輩・後輩が、唯一無二のハゲネタで勝負するコンビとなった紆余曲折、そして脇田が嘆く“距離感”の変化を語る。

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(左:浜中英昌 右:脇田浩幸

意地悪が似合って、でも嫌な感じに見えない人

――昨年12月に「ムゲンダイユースカップ」で優勝し、ムゲンダイレギュラー入りを果たしました。昇格して何か変化はありましたか?

脇田:ロッカーがもらえました。野球選手みたいに自分のロッカーがもらえるんですよ。

浜中:漫才師なんであんまり使わないんですけどね(笑)。


――2月からは∞ホールで定期トークライブも始まります。

脇田:今年は年間のライブ計画を立てさせていただきまして。これまでは主催ライブが年に2回くらいだったんですけど、トークライブのほかにも新ネタライブだったり単独だったり、毎月何かしら打っていこうと思ってます。

浜中:東京・大阪の4組で、両方の劇場を行き来するユニットライブもやる予定です。

脇田:集客できる芸人になって自信をつけたいですね。

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――2人はもともと仲のいい先輩・後輩だったそうですね。

脇田:一緒に旅行行ったり、飲み行ったりしてましたね。お互い解散してひとりだったときに、僕から「よかったら組まない?」と誘いました。ステーキ屋さんに呼び出して、おいしいステーキを食べさせて。その場では断られたんですけど、1週間後くらいに「仮だったらいいですよ」って連絡が来て、新ネタライブに定期的に出るようになりました。そこから半年たって「じゃあ組みましょうか」と言ってもらって。

浜中:「もっとポップな子と組みたい」って考えがあったんで、すごく悩んだ6カ月間でしたねぇ。


――『マイナビ Laughter Night』(ラジオクラウド)で浜中さんは「EXITみたいになりたいと思っていた」と言ってましたね。

浜中:そうです。前のコンビを解散して、次が最後の一撃になるだろうからそれくらい必要かなと思ってました。

脇田:EXITの片方を自分が担えると思ってたのがねぇ。

浜中:りんたろー。がいるからいけるかなって。

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脇田:りんたろー。はちゃんときれいにしてるじゃん。


――脇田さんは後輩コンビとして見ていた頃から浜中さんが面白いと思っていた?

脇田:そうですね。それと、僕が解散してライブも出てなかった頃に、バイト先の先輩だったシマッシュレコード嶋田さんに「どういう相方がいいの?」って聞かれたんです。そのときに「意地悪なことをするのが似合っていて、でも嫌な感じに見えない人がいいです」と言ったら「じゃあ、浜中じゃねぇか?」って言われて、「たしかにな……!」と思って声をかけました。

――浜中さんは脇田さんの以前のコンビ・ヨコハマホームランをどう見ていたんですか?

浜中:面白かったですね。新ネタライブが一緒のときが結構あったんです。なかなかコンスタントにはいいネタが出てないけど、『M-1』予選のネタなんかを観ると「やっぱ面白いな」って思う、そんなイメージでした。

脇田:たまにそれこそホームランが出るくらいで、普段はもうチップ、チップだったからね(笑)。

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脇田さんは“かわいそう”だけどかわいそうに見えない

――今やっている漫才はいわゆる“ハゲネタ”が多いと思います。組んだ当初からそういうネタをやろうという考えだったんですか?

脇田:いや、仮で組んで一発目はまったく普通のネタをやろうとしてました。そのときに出たのがちょっと特殊なライブで、事前に出演者が全員集まって互いにネタ見せして、ダメ出しをもらって直してから本番を迎えるような形だったんですね。そこで僕らが普通のネタをやったときに、芸人から「せっかく2人が組んだのに、普通の漫才やってほしいと思いますかね……?」って言われて。それで「あ、そうなのかな。じゃあハゲネタつくってみるか」って、そこからです。


――大きな武器になると考えていたわけではなかった。

浜中:そうですね。そこまで思ってなかったです。

脇田:トレンディエンジェルさんが2015年に『M-1グランプリ』で優勝したことで、「ハゲネタはもうやり終わった」みたいな空気があったんですよ。だからそこにわざわざ行くつもりはなかったです。


――自分たちの漫才について、以前別のインタビューで「ロジカルなネタ作りをしている」と仰っていました。それは具体的にはどういうところなんでしょう?

脇田:放送禁止用語」のネタだったら、「“ハゲ”は禁止されてないんだよ、おかしくない?」と最初に言うんじゃなくて、一回別のことを言っておいて「ダメなんですよ」「あ、すみません」「脇田さん、そのままじゃただのハゲですよ」「そうだよね」ってやりとりがあって、一旦話を続けていって途中で「おかしくない?」って気づく、そういう流れがロジックの部分ですね。

浜中:トレンディさんとかギャロップさんがいるんで、そことは差別化しないといけなかったんですよね。ハゲのくくりで、ほかの人がやっていないものをやっていこうとしたらロジカルなネタに行き着いたところはあると思います。

脇田:それこそ、優勝したトレンディさんがいらっしゃるから、「ハゲネタってこういうもの」ってフリがあるんですよね、多分。それで僕らを「ハゲネタなんだ」と思って見始めると「あれ?なんか違うな?」って、そこが注目していただいてるのかなと思ってます。


――ギャロップさんは2018年の『M-1』決勝で「自虐はあんまりウケない」と評されていましたね。

脇田:あれは「マジか」って思いました(笑)。僕らはトレンディさんよりもギャロップさんに近いところをやってると思ってたんで。

浜中:ただ、脇田さんは、自虐なんだけど「自虐だな」ってあんまり思われない気がするんですよ。かわいそうなんだけど、かわいそうが面白く見えちゃう人というか。だからそのへんは大丈夫かなと僕は思ってます。


――“かわいそう”が”かわいそう”だけにならないのはなぜなんでしょう?

浜中:……ハゲかなぁ。でも実際、キャラクターじゃないですかね。“負け似合い見た目”というか。

脇田:ハゲが嫌だと思ってないというのはあるのかもしれないですね。イケメンもハゲも個性であって、それがネガティブかポジティブかは社会が感じることじゃないですか。僕はハゲをポジティブに感じてるんで、そういう気持ちが出てるのかもしれないです。

浜中:ネタの中でも(浜中に)反抗してくるけど正論で説き伏せられちゃうだけで、自ら負けに行ってるわけじゃないですからね。

脇田:そうそう、結果的に負けちゃうだけで。浜中はそういうのがうまそうだったので組んだんです。


――なるほど、それが最初の「意地悪が似合って、でも嫌に見えない人」なんですね。たしかにネタを見ていると浜中さんの雰囲気や言い方から妙な説得力を感じます。

脇田:気づいたら不利になってるんですよ。

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「誕生日だけは飲もうよ」「いいです、嫌です」

――浜中さんはラジオで脇田さんのことを「ビジネスパートナー」と呼ぶ件を咎められていましたが……。

浜中:違います、「“最高の”ビジネスパートナー」ですよ。

脇田:いやいや。“最高の”をつけようがビジネスパートナーはビジネスパートナーですからね。以前、『M-1』の予選でめっちゃくちゃウケたときがあったんです。終わってからダイヤモンドの小野と飲みに行こうとしたんですけど、小野の都合が悪くなっちゃって僕が一人になって。すごい高揚感があった日だったからそのまま帰りたくなくて、浜中に連絡したんですよ。浜中は浜中で後輩と飲みに行ってるのを知ってたし、もともとは飲みに行ってた仲だから良いかなと思って「そっち行って1杯だけ飲んでもいい?」って聞いたらマジで断られて。

浜中:(笑)。

脇田:「1杯だけ飲んだら1000円置いて帰るから、いいでしょ?」って言っても「マジで無理です」って。しょうがないから家帰って発泡酒飲んでふて寝しました。しかも僕、その日誕生日だったんですよ!

浜中:俺はあの日、その出来事のおかげで酒が進みましたよ。後輩に「断ったわー!」って言って(笑)。

脇田:悲しかった〜。それまで一緒に旅行も行ってたのに、コンビ組んだ途端に1杯すら飲めないのかよ! って。

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――しかも『M-1』予選後ですもんね。コンビで分かち合いたいと思うのは不思議じゃないというか。

脇田:そうですよ! 「よかったなぁ」くらい、あってもいいじゃないですか。でも舞台降りた時点でピタッと線を引かれるんですよ。そこまで徹底しなくていいって、マジで。

浜中:いやいや、距離感って大事なんで。

脇田:コンビでメシ行ったりする人もいるもん。

浜中:俺と脇田さんの距離は違う。今がちょうどいい。

脇田:な〜んでよ〜! 悲しいよ、本当に。

浜中:コンビ組んだのが遅いし、イラッとしてケンカになっちゃったりしたらややこしいから、これくらいの距離がちょうどいいんです。でもほんと、“最高”ですから。舞台上は最高の相方です。

脇田:誕生日だけは行くようにしよう? 誕生日だけ!

浜中:いやいや、いいです、嫌です。

脇田:なんでだよ〜! ふざけんなよぉ。

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――浜中さんとしては、芸歴を重ねての結成だからぶつからないようにしたい?

浜中:ぶつかりたくないわけじゃないんですけど、お互い苦労はもういろいろしてきてるんですよ。それをもう一回繰り返す意味はないと思うんですよね。ずっと一緒にいたらイラつくこととかもお互いわかってるわけで。話し合うことはあってもプライベートで飲みに行ったりするのはいいかな、って感じです。

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――あぁ、大人同士の組み直しだからこそ適切な距離の大切さがわかる、と。

浜中:そうそう、そういうことです、マジで。コンビでケンカしてるやつらも近くでいっぱい見てきてるわけですから。

脇田:(インタビュアーに)なんか納得しちゃってません?


――はい。脇田さんがネタ中で納得させられてる感覚がちょっとわかりました。これなんですね。

脇田:これなんですよ。気をつけないと。妙に理論ぶってて、「あ〜、なるほど」ってなっちゃうんですよ。


――「“最高の”ビジネスパートナーってそういうことか〜」と思ってました、今。

浜中:(笑)

脇田:もう、むしろ「良い」とすら思ってるじゃないですか。おかしいな、一気に味方がいなくなるんだよな……。

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シシガシラ 
(左:浜中英昌 右:脇田浩幸
2018年結成。愛されハゲ脇田と、強面ダンディ浜中による実力派漫才師。4年連続M-1準々決勝進出。
あらゆる角度からの絶妙なハゲイジリと、凄まじいアンテナで受信して跳ね返す秀逸なハゲツッコミは誰も真似することはできない。
2021年12月にムゲンダイユースカップで見事優勝し、ムゲンダイレギュラーに昇格。


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■撮影協力

attic room 渋谷
東京都渋谷区宇田川町31-3 第3田中ビル7F


■シシガシラINFO

シシガシラトークライブ『トルコキキョウ』
日時:2022年2月21日(月) 20:10開場/20:30開演
会場:ヨシモト∞ホール
出演者:シシガシラ/ゲスト:カナメストーン(マセキ芸能社)
料金:前売¥1,800|当日¥2,300|有料配信¥1,200

トークライブ



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ライター/斎藤岬 撮影/瀧川寛(CUBISM)
企画・編集/小林亜美



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