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〜The origin of Laugh〜 feat. ニッポンの社長

笑いを追求する芸人さんの起源て何だろう。
ふとそんなことを思い立って聞いてみました。
今回は今もっとも賞レースにがっつり引っかかっていると噂されているコンビ、ニッポンの社長の笑いの起源。

お笑いの元

辻:小学校低学年の頃、テレビで放送されている吉本新喜劇で、内場(勝則)さんが出てらっしゃっるのを見たときにめちゃくちゃツボに入って、ものすごい笑ったと同時に衝撃を受けたんです。子ども心にあれは、台本がなくてアドリブでやってるんやと思ってて、なんて面白い人なんだと尊敬してました。
内場さんがボケながらも話を進めていくっていうのが本当に凄いなと思って、自分もなんとなくそういうことをやってみたいなと思いました。

ケツ:僕が最初に影響受けた原点ていうのは、『ダウンタウンのごっつええ感じ』という番組の中の、エキセントリック少年ボウイ(※番組内で生まれた戦隊ヒーローもの)ですね。実は他のコントはあまり憶えてないんですが……。辻さんの言うてる吉本新喜劇は日常の中にあった感じです。
それこそ、親は土日休みだったので、一緒にそうめんを食べながら吉本新喜劇を必ず見てました。

そういえば小学校3年か4年の時、仲のいい友だちと学期末に出し物をする会があって、コントごっこみたいなのをやったの思い出しました。ネタもオリジナルで。今思うと死ぬほど面白くなかったと思います(笑)。

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辻:僕はもっぱらお笑い番組を見る日々を過ごしてました。でも別に学校のクラスでは前に出て、笑わせるって感じではなかったですね。見た番組を翌日、3〜4人の友だちと話すのが楽しかったです。

僕、野球をずっとやってたんですけど、朝練のために毎朝5時くらいに起きなきゃいけなかったんですけど、『内村プロデュース』、中学では『はねるのトびら』がゴリゴリコントをやってた初期、『ロバートホール』とか深夜のお笑い番組を見たくて、夜中に一回目覚ましをかけて起きて番組を見てました。で、見終わったら、寝てまた朝起きるってのをやってました。

ケツ:ナマでお笑いを見たのは、母親が新聞屋さんからなんばグランド花月のチケットをもらったりすることがあって、それで行ったのが初です。もう本当にワクワクしましたね。奈良の子どもですから、まず難波へ行くのも嬉しいし、ましてや普段テレビに出てはる人たちが出てる劇場に行くなんて夢の夢でしたからね。その時に出ていたチュートリアルさん、ブラックマヨネーズさん、ショウショウさんとかに大笑いしたのを憶えてます。興奮したなぁ……。

そして中学の時、『M-1グランプリ』が始まって、そこで見た笑い飯さんが衝撃で、そっからですね、漫才ってかっこいいなって思い出して、出身が同じ奈良っていうことで親近感も湧いて、笑い飯さんにファンレターも出したことあります。そんな影響もあって、その頃、別に披露するわけでもないんですが、自分なりに漫才のネタを書いて、母親に見せてたりしてました。

辻:やっぱり『M-1グランプリ』は影響受けましたねぇ。第1回目の時は生で見て、それから録画したのを30回ほど見ました。それ以降も毎年生放送で見てはそれから2ヶ月ほど、繰り返し繰り返し見てました。
当時はリビングにしかテレビがなかったので、オカンに「何回見てるねんな、テレビ占領しな!」って怒られてました(笑)。あと、結構ゲラなんで、大声で毎回笑ってたんで「どんなけ笑うねんな!」ってまた怒られてましたね(笑)。

高校でも相変わらず野球しながらお笑いはチェックしてました。で、文化祭で出し物をやらなくてはいけなくて、高1は合唱、高2は演劇、高3は自由ってなってたんです。2年生の時、演劇をやらなきゃいけなかったんですよ。そこで僕がなんか仕切ることになりまして、フリーで使える台本を用意されたんですけど、全然面白くなくて、それやったら、袖からバレーボールを投げてそれに一切リアクションせずに芝居を続けるということにしたんですよ。先生にバレないように、いはる時は普通に稽古して、先生が去ったらバレーボールを投げたバージョンでの稽古をして。

ケツ:おもろ(笑)。

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辻:いざ本番を迎えたらめっちゃウケて、リアクションしなくてもウケるし、してもウケるしで盛り上がったんですけど、終わってからは、先生に「ナメてんのか!」ってめっちゃ怒られました。けどその時の見てた生徒たちの反応は興奮しましたね。今思ってもあの時、よう考えついたなって。

ケツ:本当ですね。

辻:そして高3の時は、コントをやりました。クラス全員出さないといけないので複数のコントを作ったり、ザ・プラン9さんみたいに、5人でやったり。それも盛り上がって笑いとか舞台って面白いなぁってさらに思いましたね。

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NSCへ

ケツ:高校生の時はお笑いへの興味はちょっと熱は冷めて音楽の方に興味が移ってまして、ギターをやりはじめてたんで、そっちに時間を割いてました。高校生活もなんか2年3年てちょっとやんちゃなクラスになって、そこではいじられといじめの境目にいた存在になってしまって……だからひたすら音楽に向いてました。

で、そのまま大学に入学して、やっと新たな気持ちで大学生活を過ごすことができました。そんな時に母親が「お笑いはもういいの?」って言われて。「大学3年なったら就職活動も始まるし……」って。
中学の時、漫才のネタも見せてたの覚えてくれてたし、一応、『オールザッツ漫才』や『M-1グランプリ』も見てましたから、そういうので2回生になるタイミングでどうなのって感じで言うてくれて。

あと、バンドを組んでたんですけど、その時のボーカルやってる友だちも「興味あるならやったほうがいいで」って後押ししてくれて、冷めていたお笑い熱がブワッと上がってきて……自分は全然ブスで1ミリもモテへんし、イケてるグループでもなかったですし、なんか自分がフツーのところに並びたかったんです。人としてフツーの扱いをされたかったんです。フツーって何やって話ですけど、なんか自分の中のフツーなんです。

それがお笑いをやったらそのフツーのゾーンに行って、認められるんちゃうかなと。このまま就職してもそのゾーンに入れるかわからないから……。
それで思い切ってbaseよしもとに願書を取りに行って、入学しようと決心しましたね。でも正直、NSCでコンビを作ることができる自信がなくて、一応友だちを何人か誘ってみたんですけど、いい返事をもらえず、ついには弟まで誘ってました(笑)。結局1人で入学しましたが。

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辻:僕は高3の時にひとりコンビを組みたいやつがおって、お笑いの世界にどう?って誘ったんですけど、断られた後、もうひとり誘ってきた奴がいて、1回ネタを提出し合おうと言うことで持ち寄ってみたんです。で、互いにネタを見たんですけど、そいつの書いてきたのが昔ダウンタウンさんがやってた誘拐のネタを丸パクリで(笑)。僕が知らんと思ってドヤ顔してるんです。でも元ネタ知ってる身にしたらもうどうしようかなと。

で、結局そのまま消滅して、自分もお笑いを諦めて大学へ。ずっとやってた野球で入学できたとこやったんですけど、野球にも無気力になって辞めてしまって、そっから音楽と映画にハマるんです。バイト行って帰ってきたら夜は映画4本くらい見ての毎日で、バンドも組んでてそれがライブハウス関係の人から一目置かれる存在になって、そっちへ行こうかなと思ってたらボーカルが就職することになり、あえなく解散。

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辻:自分もこれからどうしようかなと思ってNSCのことは頭に浮かんだんです。でも、大学卒業したり、就職してから通うやつなんていないやろうと思ってたんですが、これはもしかしたらラストチャンスかもってことで一応、NSCの願書を取り寄せてみたんです。

おかんが「あんた、NSCの資料みたいなん来てたで……それやったらちゃんとお父さんに言わなあかんよ」って。おかんはわかってたんでしょうね。昔から吉本新喜劇とかお笑いが好きなんをよく知ってたし、やっぱりNSCに入りたいんやろなって。

不動産会社に内定はもらってたんですけど、おとんにも説明して許してもらいました。裏では反対してたみたいですけど。それでも今このタイミングでやらないと後悔するやろなって思ったんで入学を決めました。

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コンビ結成

ケツ:僕はNSC33期生で辻さんは32期生で、僕はコンビを組んでました。

辻:自分はNSCを卒業してピンでやってたんですけど、イベントでケツの前のコンビのネタを見て面白いなと思ったんです。それで一緒になった時に「こないだ面白かったで」って。そしたら無視されたんですよ。

ケツ:人見知りすぎたんですよ。悪意はないんです。

辻:でもまぁそこから先輩後輩としてちょいちょい遊んだりするようになって。そこから絡みだして、ケツみたいな顔やったからケツって呼ぶようになって、今は呼び名も正式になりましたけど(笑)。言うてるうちにケツはコンビも解散して、そしてコンビを組みませんかと声をかけてきてくれて……。

ケツ:で、今年で8年目になりました。『キング・オブ・コント』、『M-1グランプリ』と昨年は決勝と敗者復活戦まで行けて、優勝という目標も見えたことを踏まえると今年も、どちらも決勝に行って取りたいですね。チャンスやと思うので。

辻:昔、ピン芸人の人に言われたんですけど、「決勝に行って跳ねんかったら考えなあかん。決勝行った後、“跳ねへん”のはそういうことや。それまで笑いとして考えてたことが問題なんや」と言われて。

僕らは実際、去年『キング・オブ・コント』の決勝出たあと、反響ありましたから“跳ねない”ということはないだろうと。だからこそ今年は決勝行ってさらにその先に行ってほんまに跳ねるのを経験したいなと思います。

僕らは本当はコント100で行きたいんですけど、発想が舞台に追いつかない時があって、逆に漫才でやったら表現できるなということで使い分けてます。僕らの漫才はノリをやる感じ。でもそれも楽しいのでうまいバランスでやっていきたいですね。

ケツ:僕もどっちや?って聞かれたらコント師ですって言いたいですけど、『M-1グランプリ』見て、実際出場して、漫才はやはりかっこいいです。だから漫才を求められる時は、漫才のニッポンの社長として笑いを発信していきたいです。

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【思い出の場所】

平尾商店街
辻:僕がルームシェアしてた一軒家があったのがこの商店街のすぐのとこでした。NSCの同期6人で住んでた。家賃は12万円で頭数で割ってました。一人一部屋もあったんです。

それぞれの可愛がってる後輩や同期が遊びに来る家でしたね。ケツもたまに来てたし、コンビ組んでからはネタ合わせもしてました。
そこでたまに雑にケツを呼び出してましたね。後輩3〜4人と散々盛り上がって、でも最後にもうひと盛り上がりしたいなって時はケツに連絡して、しかも深夜に。そしたら自転車に乗って難波から30分くらいかけてき来てくれてました(笑)。

ケツ:一番最初に呼び出された時はドッキリかなと思いながらチャリ走らせていったんですけど、大正区のハズレというか、海に近いところで、もしかしたら沈められるんかなってドキドキしながら家に行ってました(笑)。

辻:そういえば、劇場オーディションのチャンピオンシップみたいなんが開かれて、一旦それまでのランキングをチャラにしてイチから劇場の芸人ランクを決めようってイベントがあって、前日、ネタ合わせも兼ねてケツが泊まりに来て、ご飯食って、大会に臨んだんですけど、その時に食べた牡蠣が当たってトイレで吐きまくって……。劇場に行っても2人ともえらいことで、早くオーディション終われと。その時がゴングショウスタイルで、面白くなかったら途中でストップになるんですけど、もうネタやりながら早くストップにしてくれって思いながらやってました。でも、後半でストップしちゃいましたけど(笑)。

ケツ:終わったらすぐにトイレに駆け込みましたね(笑)。

辻:あと、商店街はユニットライブで流す映像をそこをロケ地で撮影したりしてましたねぇ。

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【行きつけの店】

「ニホンネコ」
劇場の進行を引退した青野さんて方がやってはる雑貨屋さんです。もともとイベントでも手伝ってもらったりしてて、今もチラシのデザインとかお願いしてます。僕らにとってのチームの人がいる事務所みたいな感じです。

住所/大阪市浪速区湊町1-1-32-4F
営業時間/14:00〜18:00
定休日/火曜、金曜(2/24で店舗は閉店。以降は通販やイベントにて出店)

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【初めて喧嘩した場所】

なんばパークスWINS前

辻:ネタ合わせの場所なんですよね。

ケツ:喧嘩というか……辻さんが大学の時から好きな映画が『ニュー・シネマ・パラダイス』って聞かされたんで見たんですよ。で、ネタ合わせの時に「僕も見ましたよ、面白いっすね」って言うたら目の前の距離で無視されたんです。

辻:これね、いろんな要素があるんですよ。ケツは趣味がないんですよ。それに松本人志さんの信者で松本さんだけしか勉強しないし、漫画も古谷実さんだけ知ってるみたいな。通ぶりたいだけでその間や枝葉を勉強とか知ろうとしないんです。

お前は古谷実さんの良さを何もわかってない。松本さんもベタがあるからあれが面白い、もっといろんなものを見たり聞いたりして感受性を高めたほういいって話になったんですよ。だからこそ「面白いっすね」みたいな薄っぺらい言葉に腹が立って。面白かったらもっと具体的に言えよって思って無視したんです。喧嘩というより、呆れた場所です(笑)。

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【ネタ合わせの場所】

ロイヤルホスト桜川店

辻:2人とも家が近いんでここでネタ合わせしてます。それまでマクドナルドでコーヒー1杯で粘ったり、サイゼリヤでドリンクバーで長いこといたりしてたんですけど、ロイヤルホストはドリンクバー若干高めなんですね。だからその分、ちゃんと払った分、無駄にしたらあかん、何かを生み出さないとって。

ネタ作りは基本、僕が思いついたものをメモして、こんなんどうかなってケツに喋って、それに対して返してもらってそれをノートに書いてたんですけど、でも、基本喋っても相槌打つくらいで返してこないんです。ただ目の前におるだけで。それはあかんなということで話しかけるから書いてくれと。

ケツ:書記係みたいになってます。自分自身、辻さんの面白さについていけてないことがいまだにあるので、書くことで理解しながらついていけるようにしてます。

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■ニッポンの社長 プロフィール
ケツのコンビ。
辻の特技はボーリング。ケツの特技はギター(学生時代は軽音楽部)。
2020年「第9回ytv漫才新人賞決定戦」準優勝

ニッポンの社長INFO

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取材・構成/仲谷暢之
撮影/渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)


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