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〜The origin of Laugh〜 feat.ダブルヒガシ

笑いを追求する芸人さんの起源て何だろう。ふとそんなことを思い立って聞いてみました。今回はダブルヒガシの笑いの起源。

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笑いの原点

東:やっぱり吉本新喜劇ですね。土曜日、学校から帰宅したらインスタントラーメンを食べながら見てました。これが原点ですね。ただ、お笑いが好きってわけじゃなく、普通に放送されてたら見てるってスタンスでしたね。

大東:僕はまごうことなきダウンタウンさんです。小学生の頃からひたすら松本(人志)さんのマネばっかりしてたんですよ。話す内容はもちろん、喋り方が面白い、言い回しも魅力的、語彙力は豊富。僕にとって完璧な人で物心ついた頃から惹かれてました。
僕らの時のダウンタウンさんは、ネタよりもトークの人たち。「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」「ダウンタウンDX」は毎回見ていて、その時の面白いフレーズなどがあったら、翌日学校で、そのキラーフレーズを言うための会話を作ったり、言えるトークを仕掛けたりしてましたから。それは今のネタ作りにも反映されてるとは思います。

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子どもの頃

東:クラスの中心にいるタイプではなく、その中心の周辺にいるタイプの子どもで、バリバリのサッカー少年でした。
両親がセレッソ大阪のサポーターということもあり、サッカーもやってましたし、自分もサポーターとして、親子で全国の試合に行ってました。
大東が「ごっつええ感じ」のビデオ見てる頃、僕はセレッソ大阪の勝った試合を100回くらい見てましたし、中学の時に、実力的に選手を目指しても無理やなと諦めて、将来はセレッソ大阪の裏方の仕事をしたいなとずっと思ってる子でした。

大東:小中高は、いわゆる人気者でした。でも大学へ進学して、パチンコや麻雀という僕的に悪いことを覚えてしまい、やがて学校も行かなくなり、友だちもいなくなって、それまでの社会とは違う、リアルな社会を知り、しばらく闇落ちしてましたね。

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二人の出会い

東:初めて会ったのは高校一年生の冬くらいで、共通の友人でヒカルくんという子がいるんですが、彼が企画したお泊まり会に誘ってもらい、そのメンバーの中に大東がいたんです。
僕の名前(東)に“大”が付いたやつおるってのと、おもろいヤツって噂は聞いてたんですけどそれまでは縁がなくて……で、いざ集合場所に行ったら、もう今のまんまなんです。
なんか態度はでかいし、ニューエラのキャップを逆にかぶって、眉毛ないし、髪のスソ毛伸ばしてるし、今まで会ったことないデブやし、THE・ヤンキーで完全仕上がってました(笑)。

大東:そんなデブやったか?

東:凄かったよ(笑)。でも高校一年って、まだ子どもじゃないですか。だからこんなヤツとお泊まり会したらアカンと。
ヘタしたら寝ている間に殺される可能性もあるって最初はビビっていたんですけど、30分くらいしたらええヤツやんて思い始めて、さらに時間が経つにつれ噂に違わず面白いやん。こいつはいいやんって気持ちになった時、ヒカルくんが「翔生(大東の名前)、なんかおもろい事言うてや」ってエゲツないムチャぶりをしたんです。そしたら間髪入れずに「猫のしっぽ!」って言うたんですよ。僕、それに爆笑しまして、ここで確信したんです。レジェンドやって。

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大東:別に言うたことに意味はないんです。でもこいつ、出会いのエピソード聞かれたら絶対言うんですよ。

東:いや、ムチャぶりされて、そんなもん誰が「猫のしっぽ」って言います?

大東:小馬鹿にしてるやろ。

東:するか! 今もずっと覚えてるってことは、衝撃が凄かったってことやん。

大東:でもレジェンドってなんやねん。

東:高校一年でこんなおもろいヤツおんねんぞというレジェンドや。それがきっかけで、僕の方から“面白いから一緒にいてくれ”って言いました。以後、常に行動してましたね。

大東:まぁこいつもおもろいし、明るいヤツやし、今でこそおっさんなってきましたけど、ピュアな可愛らしい、おぼこいサッカー少年で、いかにもそういう子が着てるジャージをいつも正しく着てね、何よりも僕が言うことに笑ってくれるので気持ちよくなるじゃないですか。だからいつも一緒にいてました。そして、翌年、高校二年でクラスも一緒になって、さらに仲が深まりましたね。

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お笑いを目指す

東:僕は高校卒業して、学校が工業高校的な部分もあったんで手に職つけようと電気関係の資格を取って、その関係に就職して働いてたんです。大東は大学に進学して。それぞれの道を歩んでいたんですけど……。

大東:二回生の時に大学から留年決定ですって言われまして。まぁ悪い遊びを覚えて学校にも言ってなかったので四回生になったとしても、単位が足りず五回生になることが必然的に決まってて、それはアカンと。親にバレたら変な感じになるし、奨学金も払ってもらってたし。それで辞める方を選んだんです。
僕はほんまダメ人間で、逃げる方、逃げる方をチョイスしてしまうんです。バイトもできひんから逃げてたし、朝も起きられへんし、欠陥だらけで。じゃあ大学を辞めたら何ができるんやって思った時に、昔から人よりは若干面白いヤツやと言われてたなって。それで芸人になるしか方法はないなと。今考えると失礼極まりない動機ですけど……それでNSCに入ろうと決めたんです。
でも、それでオカンに芸人なるから大学辞めるって言うたら、もうめちゃめちゃ怒られました。そら怒りますよね。反対にオヤジはボクサーや格闘技を仕事にしてたので、“ええやん!”と理解は示してくれたんですけど、オカンは“大学卒業してからにしたら”って正論を言われて……。
なんか、大学の留年を隠したくて辞める、それを芸人になるって理由にして逃げてる自分が情けなく、最低やなって思って号泣して……でも、結局オカンも折れてくれて。そうなったら本気で芸人に向き合おうと決心しました。
そやけど、NSCに一人で行く勇気がなかったんです。どうしようって考えた末に、東を口説きにかかりました。

東:高校卒業してからも僕は土日休みで、大東は大学をずっとサボってヒマやったんでちょくちょく会ってました。ある時から、メシに行くタイミングで冗談交じりに“お笑いに興味ない?”みたいなことを言いだしてきたんですね。でも僕としてはこのまま仕事を続けて、いい相手を見つけて、結婚して子どもも授かって、ザ・人間するから!ってハッキリ断ってたんですよ。
でも、会社の配属先で僕だけちょうど仕事のない時期に入り、社内ニートみたいになってしまったんです。別に干されたとかではなく、タイミング的に。朝、出社して、メールをチェック、あとは退社時間まで机でぼーっとしてるってルーティーンが3ヶ月くらい続く感じで、一番働きたい盛りやのになんの空白期間やねん。メンタル的にもしんどくなって、あぁおもんないなって。

大東:逆プロポーズやったんです。NSCへの願書提出日も迫ってたんで、僕も口説くのを最後にしよってメシに誘ったら、「メシ食ってうやむやになる前に先に言うとく! 俺、芸人なるわ!」って。思わずグラスとグラス、ポチーンですよ(笑)。

東:盛ってますけど、流れ的にはそんな感じです(笑)。

大東:それでふたりして郵便局のポストに願書出したんですけど、投函する前に思わず“これ出したら、もう後戻りでけへんな”って。

東:“頑張ろうな! イエ~イ!”って盛り上がってたんですけど、数日後、願書が戻ってきたんです。実は、テンション上がりすぎて、切手を貼ること忘れてたんです。めっちゃ恥ずかしかった(笑)。

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NSCへ

大東:入学してまず感じたのはめっちゃ厳しいなと。高校がゆるい校風やったので、こんな規律がいっぱいあるのかと驚きました。
授業が始まる10分前には教室に入らないと帰らされる。それを最初に教えてくれないんです。それが「当たり前だ」みたいに。

東:だから僕ら的にはあんまり馴染めず、しんどかったです。

大東:いわゆるお笑いの猛者たちが集まってくるとこで、実際同期も最初は600人くらいいましたから。そんな中で僕らは最初から東とダブルヒガシってコンビ前提で入って、最初でこそ緊張していたら、あれ? あれ? 思ってるほどおもんないヤツ多いやん、どういう状況なん? これ、もしかしたら僕らコンビとしていけるんちゃう?って意識しだしてからは、頑張れるようになりました。

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コンビとして

大東:ネタとしては最初、まず書いてみるわって作ってみたんです。それをベースにやってみたら自然とボケとツッコミの役割が決まって。

東:どっちがどうするとかっていう話し合いもなく、高校からの関係性の延長で今に至るって感じで……。大東は元々、ダウンタウンの松本さんに憧れてましたからボケやるのも必然みたいでしたし。

大東:NSCを卒業して、5upよしもとのオーディションに出て、割と早くに合格して一番下のランクのメンバーになったんです。で、翌月くらいによしもと漫才劇場に生まれ変わって、5upよしもとのメンバー所属になってたらそのままよしもと漫才劇場の所属にもなれたんですが、そのうちに行われた再オーディションみたいなので落ちて、改めてオーディションに挑んだ2ヶ月後に再度合格しました。

東:割とエリートなんです(笑)。

大東:スピードはね(笑)。でも、実力や人気という結果はなかなか出せず、兄さん方は面白いことしてるのに、自分たちはただ舞台に上がってるだけやし、バトルライブでも最下位付近ばっかりにいて若干の焦りはありました。劇場ではちゃんとウケてはいるんですけど、反面、外に出たら何もでけへんってなって、なんもウケへんしって時期が長いこと続いてたんですが、色々変えながらやっと満足いく形ができるようになり、「ABCお笑いグランプリ」の決勝にも行けて、なんとなく今がいい感じになってきたと思えるようになってきましたね。

東:確かにコンビとして上がっていってる感じはあります。「歌ネタ王決定戦2021FINAL」での準決勝も含めて。

大東:でも「歌ネタ王決定戦2021FINAL」の決勝進出は予期してなかったんで単純にびっくりしましたね。

東:ほんまに行けたんやって。

大東:ただ、嬉しいけれど決勝本番までの1ヶ月くらいがめっちゃしんどかったです。2本目のネタもなかったのでイチから作らないといけないし。

東:だから、これでよっしゃっていう気持ちにはならなくて、今は、あくまでも通過点の一つですというような感じです。

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これから

大東:さっきも言いましたが今、コンビ的にもいい感じなんで、流れに寄り添いながら自分たちの跳ね方で頑張っていくのがいいかなと。

東:目指すところは色々ありますけど、その時その時によると思うので、まずは目の前の仕事を頑張って、結果を出していって、その結果で目指しているものをチョイスしていきたいです。そして、まだ行ったことのない都道府県で漫才やりたいですね。僕らのこと、ネタを知ってもらう機会を作りたいです。

大東:それと住吉区住みます芸人もやってるんで、いつか住吉区で単独もやってみたいです。

思い出の場所

東住吉総合高等学校
東:出会いの場です。ここに通ってなかったらまず出会ってないし、芸人の世界に進んでない、まさに二人にとって思い出の場所です。

平野西公園
大東:ほぼ毎日、学校が終わると、東を含めたツレとコンビニでお菓子やジュース買ってこの公園でずっと喋ってました。この公園が高校ん時のある意味、生活の中心でもあったかもです(笑)。

行きつけの店

カラオケマドンナ湯里店
東:どっかで遊ぶってなったらここに来てましたね。

大東:学校が規則に緩かったんです。まぁ今なら問題ですけど、仲の良い奴らが朝の1限目から仮病とかで早退していくんです。2時限目、3時限目と時間が経つごとに……それでこのお店で集合していくという。

東:nobodyknows+とか歌っとったな。あと、大東が全然知らない歌を歌うというノリを急にやりだしたりするんですよ。で、それが始まると一緒にいた女の子たちが“何、面白ないことしとんねん!”って顔して大東のこと睨んでましたね。しかも1曲、2曲じゃなく、1時間くらい続くんですよ。そら睨みますよね。

大東:あの時の顔、いまだに忘れられへんもん(笑)。

ネタ合わせの場所

長居公園
大東:ちょうど僕の住んでるとこと、東の住んでるとこの間くらいやったんでコンビを組んで2年目なるかならないくらいまでやってました。以後は、漫才劇場でやってますけど。

東:絶対、ネタ合わせしてるところを人に見られるのが嫌やったんで、夜中に、ほんまここなら誰も来ないやろっていう場所を探してやってました。それでもたまに人が通るんですよね。

大東:その気配感じたら、すぐに「ちょっと止めよか」って。

東:あと、ヤンキーとかが「あいつら芸人ちゃうん?」とか近づいてきたりするんでその時もサッと逃げるようにしてました。

大東:あと、東が夏場に短パン履いてネタ合わせに来てたんですけど、その度に蚊にめっちゃ刺されて、パイナップルみたいな足になって帰ってました。

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■ダブルヒガシ プロフィール
大東翔生東良介のコンビ。2014年結成。
大阪市24区住みます芸人(住吉区担当)。
2019年 今宮戎マンザイ新人コンクール 香川登枝緒記念敢闘賞

■撮影協力
・Kitchen&Parlor あーる
大阪府大阪市中央区難波千日前11-6 なんばグランド花月 1F 2-2区画

ダブルヒガシINFO

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取材・構成/仲谷暢之(アラスカ社)
写真/渡邉一生(SLOT PHOTOGRAPHIC)



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