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短編小説『盟友ガルベアス』執筆・九条ジョー(コウテイ)

『我が友よ。
神が先か土地が先か探しに行く。
我が友よ。
出会いと別れを手短に記す。』

ガルべアス


彼を忘れる為だけに、
毎回深い眠りについているように思う。

やはりジークムント・フロイトは
人類史上最も偉大な人間である。
現実世界に嫌気が差し、
死なずにして自在に夢を操ろうとしたのだ。

人類の三大欲求である睡眠と協議し合い、
長い年月を費して味方につけたのだ。
彼が生し得た偉業は
その後の人類の精神環境を大きく変化させた。

しかしながら
実験に成功したフロイトが最初に見た夢は、
奇しくも夢を叶えたいと思う夢であった。

今ではその意味がよく分からないでもない。

成功を侵奪している渦中である自分自身が、
細胞の一粒一粒が最も隆起し
滾り合っていたのを覚えている。

その先に待っているのは莫大な虚無だ。
叶えてしまうと人間は死ぬのだ。
人類は未だに誕生した意味を知らない。

また新たに次の目的地を定めなければならない。
大脳や小脳が海馬を通して
限界を掲示しているのがよく分かる。

ボクは嬉しかった。
つまりは最初から何もなかったという事だ。


それを踏まえるとガルべアスは
最強の人間であった。

躊躇なく人類の生存本能に抗い、
中立を殺す事が出来る。

「私が西南西を向いているのに
キリストはそっぽを向いているではないか。」

「私の独断でアルファベットを順番に
並べ替えさせて頂く。」

「脳ある鷹は恥部を隠すのであります。」

「私が女になるべきだ。
それが本来の男気である。」

彼の詭弁は止まる事を知らない。


彼との出会いは偶然を装った必然で
あったに違いない。

彼は偶然を装うような人間では到底ないが、
彼自身が掲げた確証の無い人生の賛美歌を
近くで庇う人間が必要だったので、
神がボクらを引き合わせたように思える。

結局のところ、
ガルべアスも孤独には勝てなかったのである。

その点に於いて、
ボクも彼とは合致していた。

彼はボクを、ボクは彼を、
上手く利用していたのである。


彼は突然置き手紙だけを残して
ボクの前から消えていったのには少々戸惑ったが、
彼と過ごした時間を振り返ってみると、
内容のない映画を
毎日観賞し続けているような状態だったので、
特に問題は無かった。

彼は、彼を選んだのである。


深く眠っていたので
朝陽なのか夕陽なのか
判断することが出来ない太陽が、
自らの球体を地平線にどっぷりと沈めている。

そんなに眠くはないが、
止まらない彼の探究心への恋路に思いを馳せて、
再び寝る事にした。


ガルべアスよ。
永遠に我の心の中で高笑いし続け給え。


ズィーヤ★🤞🏻


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