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「まだまだ発展途上」令和ロマンが語る神保町よしもと漫才劇場…彼らが求める後輩とは?

7年目以下のお笑い芸人がしのぎを削る『神保町よしもと漫才劇場』が今年オープン。ランキングシステム“花鳥風月”のトップクラス“花”のメンバーとして、若手を引っ張っているのが、芸歴3年目の令和ロマンだ。今月には『NHK新人お笑い大賞』で優勝し、いま勢いに乗る彼ら。しかし『M-1グランプリ2020』準々決勝でまさかの敗戦。GYAO! ワイルドカードでの復活を待っている状況だ。負けを力に変えて、さらに進化しようとする2人の心境を伺った。

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名刺がわりにもなる賞レースの優勝

――『NHK新人お笑い大賞』優勝おめでとうございます。

ケムリ:嬉しいです。決勝も初めてだったので、何も分からなかった(笑)。ただ時間がすぎた感覚というか。

くるま:僕ら1年目のときに『M-1グランプリ2018』のワイルドカードでの準決勝進出によって、注目が集まり、そこからいろいろ呼んでいただいたり、吉本の人にも覚えてもらったりしたんですけど、“準決勝行った”って言っても形がないわけじゃないですか。番組に呼んでもらった時に『準決勝進出』とは出ないから、さらにさかのぼって、養成所での『NSC大ライブTOKYO 2018優勝』っていうのが(テロップで)出るんですよ。一般の人には分からないことだし、スタジオでも変な空気になっていたので、“なんかごめんなさいね……”みたいな苦しさがずっとあって。だから『NHK新人お笑い大賞優勝』っていう名刺ができて良かったなっていう。

――確かに『NHK』っていう名前はインパクトが強いです。

くるま:獲ってから思いましたけど『NHK新人お笑い大賞』って名前がすごいですよね。“お笑い“の“大賞”って(笑)。NHKが認めた新人大賞ということで、急に自信がわいてきました。しばらく元気でしたね。

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――優勝したことで先輩芸人さんにも声をかけられる頻度が増えたのではないでしょうか。

くるま:特に大阪の先輩に声をかけられました。多分、こっちより西の方が賞レース文化があるので「すごかったな」「おめでとう」って。初めて喋る先輩もいましたし、それが嬉しかったですね。

ケムリ:めっちゃ上の先輩も、よく分かっていないけど、何かで優勝したのは分かっているみたいな(笑)。ダイアンのユースケさんからも「何か……勝ったんやってなぁ」と喋りかけていただいて、それだけニュースになっているんだなって思いました。

くるま:今年の『M-1』の予選のときも、四千頭身とかEXITのお2人とか、すごい人たちが話しかけてくれたので嬉しかったですね。

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――魔人無骨から改名して約1年半。さらに調子もいいのでは?

くるま:どんどん勢いを増しているってわけではないですけど、今年(NHKで)優勝できましたし、これで『M-1』の準決勝に行けたらさらに良かったんですけど、落ちちゃって。まぁ……でも、ウケた方での負けだし、あとはこれから番組のオーディション頑張って、年末にテレビで引っかかるとかで、良い1年にできればなって思います。

――『M-1』は、試合には負けたけど、勝負には勝っていたと。

くるま:去年より“(準決勝に)行ったっぽい笑い”のとり方はできたと思います。次の出番だったインディアンス・田渕(章裕)さんにも「いったんちゃうか? いく人の笑いのとり方してたなぁ」とおっしゃってくれて。落ちても見栄えが良かったんだなって思いましたし、来年に繋がるウケ方だったなって。

ケムリ:負けでの悔いはあるんですけど、ネタも変わったネタだったので、常に(落選の)可能性ははらんでいたのかなって思います。

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良い劇場になるためにも“後輩を尖らせたい”

――神保町よしもと漫才劇場では花クラスとして活躍されていますが、出演メンバーやお客さんなど、劇場の雰囲気について、どう感じていらっしゃいますか?

くるま:お客さんも演者も手探りで、ゼロから作っている感じはします。(以前出演していた)ヨシモト∞ホールで、若手がひとつに括られていたときは、大きな歴史やシステムの中に、演者もファンも入っていく感じでしたけど、神保町は歴史もなくて、システムも定まっていない中で、リピーターが多く、“自分たちで劇場を作ろう”という熱意を感じますね。こっちもなんとか楽しませられるように、新しいネタをどんどんやって盛り上がればいいかなって思います。まだまだ発展途上ですね。

ケムリ:コロナでコーナーがやれていない状態なので、そこで生まれるノリみたいなものがあると、もうちょっとよくなるかなって思います。いずれできるでしょうから、それは楽しみですね。

くるま:あと、僕らも含めて、上のランクの人が後輩に尊敬されるくらいまでにいきたいですね。

――尊敬される立ち位置なのでは?

くるま:いやいや。芸歴も近いですし、僕らが∞ホールに入ったときに上のクラスにいた、相席スタートさん、ニューヨークさんみたいな存在にはなれないわけじゃないですか。花クラスにいる芸人を“一番”尊敬している1年目はいないと思うんですよ。

ケムリ:全芸人の中だったらね。

くるま:そう。僕らが入ったときはニューヨークさんを一番尊敬していて、一緒の劇場にいることで、モチベーションも上がったわけで。“ここに近づきたい”と思われるようなパワーをもっと出せるように、引っ張れたらいいかなって思います。もっと上がるには、それが必要だと思うんですよね。そういう意味では、賞レースでもっと結果を出せたらなと。

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――そうなれば、超若手芸人の有望株も増えそうですね。

くるま:粗削りで変なヤツがもっといてほしいですけどね。尖っている芸人を世の中の人がさんざんへし折った後に出てきた子たちなので、非常に難しいと思うんですよ。だからもう一回後輩を尖らせたいですね。

――令和ロマンさんも“尖っている”と言われる方ですか?

くるま:言われますよ。それは賞レースをちゃんと頑張っているから。僕らみたいな人たちは“尖っている”の一言で済まされちゃうんです。そういうのが恥ずかしくなってみんな“尖っていませんよ”、“熱くないですよ”って人が多いので、俺らが恥かきながら先頭を走れば、後輩たちも(追随してくれる)。ゆにばーす・川瀬名人さんみたいに「『M-1』優勝したら芸人やめます」とか、ナミダバシさんみたいに「決勝に行かなければ解散」っていう子がいてもいいというか。『M-1』が大正義ではないんですけど、そういうヤツがいたほうがいいですよね。

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コロナ禍で感じた“自分が強い人間ではない”ということ

――月刊芸人で連載を始めていますよね。ケムリさんは『松井ケムリの喫煙所探訪』。書いてみていかがでしたか?

ケムリ:初回は喫煙所ランキングにして、お茶を濁したんですよ。本当は、喫煙所で起こった出来事を書きたかった。先輩との思い出がいくつかはあるんですけど、いずれ足りなくなるんで、タバコの本数を増やさなきゃなみたいな。意外と大変なテーマにしちゃったというか(笑)。

――くるまさんは劇場紹介用の連載を書かれています。披露したいテーマはありますか?

くるま:あまり皆さんが知らない芸人さんの裏側を叙情的に書き連ねていけたらって思ったんですけど、全然うまくいかなくて……。昔から文字を書くのが本当に苦手なので、文章力の成長を皆さんに見ていただけたらと思います。自分は雑な人間なので、筋とか表現とか考えると、脳に負荷がかかるというか。

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――連載やっていけそうですか?

くるま:苦しみながらやってはいますけど、本当にありがたいんです。人に“やって”って言われないとできなかったことなので、誠心誠意頑張ろうかと。ただ、他の花メンバーも同時に連載やっているんで、そこには絶対負けたくないですね。ネイチャーさんとか9番街さんとか面白いですけど、僕よりはアホですから。文章では負けたくないですね(笑)。

ケムリ:芸人さんの書く仕事ってお仕事に繋がることも多いですよね。でも、それって文章のウマい・ヘタってわけでもないと思うので、内容重視でやっていけたらと思います。

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――最後に、少し早いですが、令和ロマンの1年を振り返ってもらっていいですか?

くるま:僕らみたいなものがいうのもあれですけど……激動の1年だったんじゃないですかね。

ケムリ:そんなことはないよ(笑)。

くるま:表面的なことはあまりないかもしれないけど、内面的に、渋谷に家を借りた直後だったので、神保町に出る(活動の場が移る)ことになったのはショックでした。行くんだったら一番上になって食えるようになろうって思っていたら、花クラスになれて。“これから頑張ろう”と思ったら今度はコロナになっちゃって……。けっこう絶望して、自粛期間中、まったくネタを作っていなかったんですよ。

『NHK』には去年、一昨年のネタで優勝できて、そこからやる気沸いてきて。今年の『M-1』のネタを考えてワーッと詰めて、準々決勝は勝てなかったっていう。『M-1』は(開催が)ダメだろうなって思っていたので、諦めない方がいいっすね。あの期間中に頑張っていたコウテイさんとか本当にすごいなって思います。自分が強い人間じゃないって改めて感じた1年だったので、無理しない中でも、努力はしっかりして、期待に応えられるように頑張りたいなと思います。

ケムリ:僕、2019年の記憶がほぼなくて。

くるま:分かる!

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ケムリ:1年目は、ワイルドカードで準決勝行かせてもらえて、∞のファーストクラスに出させてもらえて、いろいろチヤホヤしてもらったんですけど、それからセカンドクラスに落ちて、『M-1』も準々決勝で負けてっていう。2年目の記憶がほぼなくて。3年目の今年はコロナもあったけど、良かった方だと思います。思ったより記憶に残りそうだっていう。

くるま:記録より記憶に残る一年に(笑)。2年目は改名とかあったでしょ。

ケムリ:でも、それだけだな。2年目はそれしかしていない。だから、今年は自粛期間があったのにも関わらず、大健闘です。

――(笑)。

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■令和ロマンプロフィール
2015年結成。NSC東京校23期生。髙比良くるま(左)、松井ケムリ(右)のコンビ。2020年NHK新人お笑い大賞受賞。

■インタビュー動画 「BEHIND THE STAGE」



■取材協力
神保町ラドリオ

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ライター/浜瀬将樹 撮影/越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE:CAMSIDE

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