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今はとにかくウケたい『Jimbochoグランプリ』1位を獲得したナイチンゲールダンスの心境の変化


5月29日(土)、30日(日)に東京・神保町よしもと漫才劇場(以下、神保町)にて開催されたネタバトルライブ『Jimbochoグランプリ』において、ナイチンゲールダンス中野なかるてぃんヤス)が初の1位を獲得しました!
5月より神保町のリニューアルによって、芸歴8年目以下の若手芸人を神保町所属とオーディション所属に分けられることに。神保町所属芸人は2ヵ月に1回、4部構成のネタバトルライブ『Jimbochoグランプリ』にてランキング付けされ、下位約20組はオーディション所属との入れ替え戦『Jimbochoサバイバルバトル』に臨むことになりました。

『月刊芸人』では、『Jimbochoグランプリ』で1位となったナイチンゲールダンスをピックアップ。“ウケることを第一に考え始めた”という2人に、ネタについてたっぷりと伺いました。

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最近、急にネタのスタイルをチェンジした

――1位おめでとうございます。率直な感想を聞かせてください。

ヤス:ありがとうございます! けど、実は実感があんまりなくて。

中野なかるてぃん(以下、中野):そうですか? 僕は獲って当然だと思ってますけど。

ヤス:強気だなぁ!(笑)

中野:オッズも低かったでしょうからね。期待が少なかった分、獲るべくして獲ったと思っています。

ヤス:ネタが終わった瞬間、MCの田畑(勇一)さんが階段をガガガガって駆け上ってきて、「すごかったねぇ! ダンチ(段違い)やったで!」って言ってくれて。しかも、∞ホールで僕らがすごかったと触れ回ってるらしいです(笑)。

中野:それはちょっと……困るなぁ。


――ネタ終了後、手応えは感じていたんですか?

ヤス:たしかにめっちゃウケてはいましたね。この間の『M-1トレーニング』は緊張しすぎてボケ7個も飛ばしてしまったんですけど、評判がよくて。いろんな人から「ナイチンゲールダンス、仕上がってたなぁ」って言われたんです。

中野:
困ったもんですよ(笑)。飛ばすっていうのも頭が真っ白になるとかじゃなくて、ノータイムで平然と7個あとのボケを言ったんです。だから、ボケを飛ばしたヤスさんより僕のほうが慌てちゃって。

ヤス:俺の5倍くらい顔に出ちゃうもんな。

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――拝見しましたが、メリハリがすごくある漫才でしたね。

ヤス:最近、急にスタイルチェンジをしたというか。設定のあるネタをやめて、普通になかるてぃんがボケて僕がツッコむっていうかたちにしたら、すごくウケ出したんです。芸歴1年目の頃、中川家さんが大学生時代にやってたネタをYouTubeでたまたま観てくださって、番組でネタをやらせてもらったことがあるんです。今考えるとありえないくらいすごいことなんですけど、当時はよくわかってなかったし、すぐに売れたくて、中川家さんが面白がってくださったネタじゃなく歌ネタみたいなのをやっちゃったんです。その面白がってもらえたネタは、コンビニのコントだっけ?

中野:ファミレスかな。

ヤス:それも、なかるてぃんがボケて俺がツッコむっていうシンプルなもので。(褒めてもらいながらも)いやいや、誰でもできるものだからという気持ちだったんで、5年くらいこのスタイルはやってなかったんですよ。けど昨年、神保町ができて。5年間くすぶってたんで、やるネタがないなと思っていた時に、たまたまそのファミレスの漫才バージョンがあったのでやってみたらウケたんです。9番街レトロの(なかむら)しゅんさんが駆け寄ってきて、「あれなんなん? なんで今までやってなかったん?」って言われて。もしかして、このネタありなのかなぁということで、このスタイルのネタをまたやり始めたんですよね。以前はウケたいっていう気持ちがあまりなかった。



――先ほど5年間くすぶっていたということですけど、NSCを主席で卒業以降、そういう感覚を持っていたんですね。

ヤス:そうですね。すぐに売れたくて、毎週、漫才のスタイルみたいなのを変えてたんです。今思えばよくやってたなぁとも思うんですけど、誰もやってないことをやりたいっていう気持ちもあって、いろんなことをやってたんです。

中野:あと、試したスタイル全部がしっくり来なかったっていうのもありますね。僕ら、たまに『ネタパレ』(フジテレビ)に出してもらえるんですけど、毎回スタイルが違うから次に繋がりにくかったというか。ネタ番組って一度出ると次からも呼んでもらえることが多いんですけど、僕らはそうじゃなく、いつもオーディションなんですよ。

ヤス:毎回、オーディションから勝ち上がってるよなぁ。


――それはそれですごいことですけどね。

中野:オーディションに行くと、「(番組のスタッフさんから)また来たな」って言われて。

ヤス:「今回も新しくて面白いねぇ」って言われて出してもらえるんですけど、いつも(本番では)出演者やゲストの方からコメントをもらえずに終わってたんです。あそこに出演されるのって、いいものをたくさん観てる方々。コメントをもらえなかったのは、僕らのやってるネタが自分たちに合ったいちばん強い武器を見せてると思ってもらえなかったからだったんだと思います。それに、いろんなことを試している時は、ウケたいっていう気持ちがあんまりなかったような気がします。なかるてぃんがボケて俺がツッコむ……シンプルな設定なんて、みんなができることなんじゃないのって思ってましたし。けど、やるとウケる……なんでなんだろう? なんでウケるんだろうね? なかるてぃんが変な声だからかな。

中野:体型とか声とかいろいろあるのかもしれないですね。

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――ヤスさんにとっての普通が、みなさんにとっての普通ではないのかもしれないですね。それに、同じネタでもやる人の癖や喋り方、間とかで、同じようなネタでも違ったものになるんでしょうし。

中野:そうですね。あと、ヤスさんがお客さんを意識するようになったっていうのもあるかもしれないです。

ヤス:あぁ、そうかな? 昔から考えてなかったわけじゃないけど、たしかにそうかもしれない。前はこうなりたいみたいなものが強くあったんでしょうけど、今はなんのこだわりもない。ウケれば、なんでもいいです。


――そう思うようになった原因はなんだと思いますか?

ヤス:いちばんウケてる人がいちばん面白い。そう評価されることがわかったからじゃないですかね。

中野:ウケたほうが健康的だしね。自分たちの心も。

ヤス:周りからもウケてたほうが評価されますし……当たり前のことなんですけど、以前はわかってなかったんでしょうね。


――いちばんウケたいという気持ちは、ネタ作りにも影響はありますか? 例えば、ネタの完成までが早くなったとか。

中野:そう言われてみると、たしかに早くなった気がします。

ヤス:月に新ネタ7本くらい下ろしてるんですけど、今、単独ライブでも下ろしきれないくらい作っていて。前回の単独もネタ8本の予定だったんですけど、時間が余ったから、それまでおろしてなかったネタを10分くらいやりました。以前も月4本くらい作ってましたけど、今はさっき言ったようなスタイルのネタなので、より作るようになりましたね。

中野:前はネタ合わせを始めてから、何か1つフォーマットみたいなものを思いつかなきゃいけない作業があったんです。何も出ない時、息抜きのような感じで今やってるかたちのネタをやっていて。

ヤス:あぁ、そうだ、やってたなぁ。面白いんですけど、その頃は誰でもできるネタだからって外してたんですよね。


――けど、その外してたネタが自分たちに合ったスタイルだったと。

中野:今のところはそういう感じです。

ヤス:だから、たくさんネタを作ってますね。なかるてぃんはジャイアンの家にやってきたドラえもん!?

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――今、大学のお笑いサークルが注目されてますよね。おふたりもお笑いサークルの出身ですが。

ヤス:すごいですよね。『アメトーーク!』(テレビ朝日)でも取り上げられたりして。

中野:もしかしたらですけど、大学時代に結構好きなことをやれたから、今ウケることを優先できているのかもしれないです。1回、思いっきり好きなことをやるタイミングがあったから、メンタル的に切り替えられたというか。

ヤス:そうかもなぁ。大学時代、そしてプロになって5年間、全部のジャンルをフルスウィングでやってみたんです。2人ともボケだったり、歌ネタだったり、ボケとツッコミが反対だったり……でも、できないことがわかりました。

中野:それに、お笑いサークルの時はウケなくても別によかったですもんね。

ヤス:客席にいるのもサークルにいる人たちだから、逆にウケないだろうっていうネタのほうがウケたりもしてたしね。

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――以前、大学のお笑いサークル系のイベントを観て感じたのは、プロと笑わせる対象が違うんだろうなということでした。そのイベントでは、割ときつめの下ネタをやっている人も多くて。

ヤス:元々、下ネタはNGだったんですよ。僕、下ネタが本当に嫌いで。だって気持ち悪いでしょ。

中野:ラインが厳しくて、ヤスさんはオナラもダメです(笑)。

ヤス:本当にやだ。お金を払って観に来てるのに、汚い言葉は聞きたくないでしょ? それに、それ以外で笑いって取れるもんじゃないですか。下ネタは、なかるてぃんのおしりでギリ。なかるてぃんのおしりは好きだからいいけど

中野:おしりがいちばん過激な言葉なんでしょ?

ヤス:マジで過激だよね。まぁ、(下ネタをNGにしてたのは)“たまたま”そうしてたっていうだけですけど。

中野:え、“たまたま”っていう表現は大丈夫ですか?

ヤス:あ~! ギリNGだ。すみません、卑猥な言葉を使っちゃって。


――(笑)。

中野:今、陽気に返してくれましたけど、こういうボケをすること自体、そもそもダメで。普段だったら「お前、そんなことにつなげるなよ。そこ拾わなくていいだろ」って言われます。

ヤス:あはは! だって、全年齢にウケたいですからね。今、対象を絞ったほうがいいとも言われてますけど、僕は子供からお年寄りまで全員にウケたい。あとは、中野なかるてぃんというキャラクターをどう見せるか。面白い声、面白い動き、全員が笑っちゃえる要素を活かしていきたいですね。

中野:活かしてもらいたいです! 僕、今の衣装はドラえもんを意識してて、そこを目標に走ってるんです。ドラえもんみたいになんでもできる能力はあるけどドジ、っていうヤツでいたくて。

ヤス:それ、最高だな!

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――となると、ヤスさんはのび太くんですか?

ヤス:こんなオールバックののび太、いないでしょうけどね。

中野:もしかしたら、ジャイアンの家にやってきたドラえもんなのかもしれない。そうやって、ヤスさんの願いを叶えられたらいいですよね。


――2ヵ月後にはまた『Jimbochoグランプリ』が開催されます。

ヤス:そこまで、すべての舞台でウケ続けます。劇場でいちばんウケていれば話題にしてもらえますから。だから、めちゃくちゃウケ続けたいです。

中野:僕らの特徴が“めっちゃウケてる”になればいいかなと。だから、次もディフェンディングチャンピオンとして君臨したいです。

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■ナイチンゲールダンス
2017年結成。中野なかるてぃん(左)とヤス(右)のコンビ。


■撮影協力
ポーズ (pause)
東京都豊島区南池袋2-14-12 山口ビル 1F

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ライター/高本亜紀 撮影/瀧川寛
企画・編集/重兼桃子

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