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吉田たち「ネタの1分半くらいで、こらあかんなって…去年の『M-1グランプリ』で泣きました」


今年15年目を迎えた吉田たち。昨年、コロナ禍で開催された『M-1グランプリ』は2人にとって散々だったそう。その最悪だった気持ちを一新させ、年明けから向き合ってきた月イチ単独ライブを開催し、徐々に手応えとペースをつかんだ彼らが、いよいよ47都道府県漫才ライブを再起動するというので現在の心境を聞いてみました。

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——今年で15年目ですね。

ゆうへい:そんなやってたんやって思いますね。
最初の2~3年は雄平・康平、それから吉田って名前やってて仕事なんて全くなかったですから。昔あった劇場、京橋花月でやった「リプシンカ」って舞台でそれが吉本から初めてもらった仕事でした。

こうへい:吉本からのギャラもそれが初めてでした。だいたい新人のギャラって500円で50円引かれて450円スタートみたいなこと言いますけど、僕らは5,000円やったんですよ。まぁ芝居やったってのはあるんですが。

ゆうへい:いいスタート切らせてもらいました。稽古も入れての日割りにしたら大したことないですが(笑)。でも、その芝居の時に元りあるキッズの安田さんが今のコンビ名を付けてくれはったんです。稽古の時、それぞれの名前なんてまだ覚えてもらえてないので、「吉田たち、吉田たち」って呼ばれてた時に、安田さんから「もうコンビ名、吉田たちでいいんちゃうか?」って言われて「あ、じゃあそうしますって」言うて、そのまま今に至ります。

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こうへい:まぁ10年目ぐらいまではめっちゃ楽しかったですね。

ゆうへい:
思ってる通りに漫才で賞をいただけたりとか。

こうへい:賞も3つ4ついただけましたし、それに伴って舞台で漫才もいっぱいさせてもらえるようになりました。コロナ前まで1年に700ステージとかやらせてもろてたんで。なんばグランド花月やルミネよしもと、∞ホールも大宮よしもと、幕張よしもと、もちろんよしもと漫才劇場も。ほんとコロナ前までずっと楽しかったです。

——漫才師として変わった部分、変わらない部分は?

こうへい:僕自身、本当はコントをやりたくてこの世界に入ったんです。僕らのコントで整形外科のネタがあるんですが、ゆうへいが包帯で顔面をぐるぐる巻きのまま舞台に板付いてて、「あの、先生、僕、男前になりましたか?」って言うて「なりました」って答えると、ゆうへいが包帯を取って自分の顔を見て「え? 先生と同じ顔じゃないですか!」、「いや、僕、男前なんで」みたいなやりとりなんですが、それを知名度も何もない時に一度『キングオブコント』でやったんですよ。で、包帯を取った時に、客席がザワザワして、“どう言うこと? どう言うこと? マジック?”みたいな感じが広がってなんもウケなかったんですよ。

ナルシストの先生のボケとかもなんも。その経験をした何年後かにちょっと名前も知られた頃、劇場でもう一回やったんですよ。そしたら包帯姿で板付いてる時点で、“はいはい、取ったら同じ顔が出てくるねんやろ”みたいな感じで……そっからもうコントやってないんですよ。
双子という最大の武器が裏目に出たというか。それがまぁきっかけというわけではないですけど、漫才の方にシフトチェンジした感じです。でも双子やけどキャラの違いを出したくなるわけですよ。

最初は僕が茶髪にして髪長くして、ゆうへいは黒で短めでメガネかけてとか、ゆうへいはスーツ、僕は私服みたいな。で、双子ということを一切言わないで漫才を進めると、やっぱり顔が似てるのでだんだん客席がザワザワしてネタを聞いてもらえないという……。

ゆうへい:いろいろ試してみたものの、悩んでましたね。

こうへい:周りからは、珍しいなぁ、漫才でおらんしって言ってくださるんですけど、すごい武器あるのに使い方全くわからんみたいな。当時そんな状態でした。

ゆうへい:双子のお笑いでポップコーンさんやザ・たっちさんもいはりますけど先人たちがやってはったこととは違う双子のやれることを模索してました。

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——自分たちを出せるようになったのは?

こうへい:4~6年目、毎年50本くらい漫才作ってました。

ゆうへい:まぁ淘汰されてほぼ残ってないんですけど(笑)。

こうへい:とりあえず作った! そんな中で、双子なんですってネタ作るより、普通の会話でボケもしたい、センスあることを言いたい2人なんで、そういうことを芯にしつつ、そこに双子ならではのことも入れつつ、切磋琢磨していくうちに、ほんのちょっとわかってきたかなと。でそんな中で作ったネタで『MBS漫才アワード』で賞をいただけたので。少しは自分たちらしいものを出せたかなと。

ゆうへい:それとイベントでトークや、大喜利、ゲームなどのコーナーに出ることがあるじゃないですか、そんなとこで、例えば「じゃあ、次はゆうへい行こう」って言われて、代わりにこうへいが出ていくだけでウケるんですよ。ベタですけど僕らしかできない。「あ、こういうのが実はいいわけか」、「そういう使い方があるんか!」そういうのを発見、再発見できていったのは、でかいですね。今もなんばグランド花月に出た時、つかみで「僕ら33歳と34歳です」言うだけでウケるし、わかってもらえるし、双子ならではのシンプルなことでも結構ボケになるんやと言うか。こうふったらええだけやったんやって。

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——ゆうへいさんが一昨年、吉本新喜劇で活躍している井上安世さんと結婚されましたが、この結婚は漫才として影響した部分はありますか?

ゆうへい:紅しょうがの稲田ちゃんに「漫才のやりとり見てて、結婚したことで説得力ちゃいますね」って言われたんですど、エピソードとしての説得力はアイテムとしてあるのかのかなぁとは思いますね。

こうへい:確かに結婚してくれて良かったなと思います。双子、兄弟ってジャンルに結婚と別に家族っていうジャンルが生まれたんで。

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——コロナ禍での吉田たちはどう過ごしていました?

ゆうへい:ちゃんと会わなかったですね。

こうへい:そうっすね。奥さんの安世ちゃんが優しくて、僕が料理とかしないの知ってるんで、料理を作っては、ゆうへいが家に配達してくれたりしましたね。

ゆうへい:うちから自転車で20分くらい漕いで、料理だけ届けて。そしたら申し訳ないからって、安世ちゃんに渡してって、アイスクリームくれたりしました(笑)。

こうへい:そういう会い方でしたね。ネタ合わせはオンラインでやってました。

ゆうへい:でも正直オンラインでも、がっつりやってなかったかもしれないですね。ライブもないし、舞台もないし、やっぱりメンタル落ちてたんすかね。

こうへい:自分も去年が一番ネタを作ってなかったですね。

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ゆうへい:元々、芸人てこの世界に入る動機のひとつは、サボりたいってことじゃないですか、だからここぞとばかり怠惰に(笑)。そんな去年を約一年過ごしながらも、『M-1グランプリ』は開催されることになって、予選を受けたものの、準々決勝あかん感じの滑り方やって……。

こうへい:もちろんこのネタならいけると思って受けましたけど、僕的にはネタの1分半くらいで、こらあかんなってなるくらいあかんくて……。
そのネタをやるたびに、ゆうへいが全部収録してくれて、それを僕に送ってくれてたんですよ。で、予選終わって、改めて送ってくれた同じネタを収録した過去20回分くらいを聴き直したんですよ。全部あんまりでしたね。気づいてなかったですね(笑)。舞台でやる前は“うわ、これや~”って2人の中で盛り上がってるんで、冷静なジャッジができてなかったんでしょうね。去年は本番前にかけれる舞台の数も少なかったですし……。

ゆうへい:全部が良くない方向にバチーンってハマったようでした。少ない舞台なりにも、試行錯誤しながら足したり削ったりしながらやってたんですけど、結果あかんの寄せ集めみたいになってました(笑)。

こうへい:準々決勝はほんまに失敗しましたね。

ゆうへい:Youtubeにアップして欲しくなかったもんな。

こうへい:情けなくて、終わってからめっちゃ泣きました。

ゆうへい:あ、僕は泣いてないです。

こうへい:で、また改めて過去の20回分聴いて、やっぱりこらあかんやろって自覚して、笑いましたね。

ゆうへい:それぐらい自分たち的になかったです。

こうへい:最悪でした、去年は。

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——そんな『M-1グランプリ』が終わって、年明けて2021年はどう動こうと?

ゆうへい:まず終わった段階で毎月、単独せなあかんってすぐに動きました。
現在はすでに3回やってまして4月は緊急事態宣言が出たので中止になりましたが……。とはいえ、徐々に回を重ねるごとに良くなってきてるんじゃないかなと思ってます。ペースの勘も取り戻してきましたし。何より、去年は無観客とかもありましたけどお客さんが足を運んでくれて客席に座ってはって、反応がダイレクトにわかるっていうのはなんてありがたいんやろと思いました。

こうへい:僕は今年からほんまに言いたいことを言うようにしようと。去年もまぁまぁこんな感じのことを言うてましたけど、よりほんまのことを出していけたらと。僕はできるやつじゃないし、卑怯やし、意地悪やし、そういうやつなんでほんまは。そんな自分を出していけたらなと。リアルこうへいを。

ゆうへい:まぁとりあえずはお互いの思惑を入れながらコロナ禍の状況を見つつ、月一で単独をやっていって、夏に入るまでに2本くらいこれぞって言うネタができていれば下半期もいけるんで。去年よりは何か見えてくるんやないかと思ってます。

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——そんな吉田たち、月イチの単独とは別に『吉田たち47都道府県漫才ツアー』が復活しますね。

ゆうへい:一昨年から47都道府県に行こうと始めたんです。2019年に4ヶ所やらせてもらったんですけど去年は1月に神奈川県に行ったところで中止になってしまったので、今年はまず復活47都道府県ということで、6月26日(土)に神戸の神戸ポートオアシスセンターで、7月31日(土)に千葉県の千葉市民会館小ホールでやらせていただきます。やっと再開ということになったんですけど今は緊急事態宣言が発令されての状態なんで、ドキドキしています。無事に開催したいです。

こうへい:本当に! 内容は漫才とトークライブしての2本立て。本当は漫才はぶっ通しでやりたいんですけど。

ゆうへい:初めて聞いた! 僕もぶっ通し漫才ってのいいけどな。

こうへい:まぁ今回はトークと漫才で!

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■吉田たち プロフィール
こうへいとゆうへいのコンビ。
こうへいの趣味はサッカー/マンガ。ゆうへいの趣味はサッカー/TVゲーム/漫画。
2017年「第2回上方漫才協会大賞」大賞
2017年「第6回ytv漫才新人賞」優勝

■撮影協力
ル・プティ・プランス(大阪府大阪市北区中崎1丁目10−9)

吉田たちINFO


【公演情報】
タイトル:「吉田たち47都道府県漫才ツアーin兵庫」
日程:2021年6月26日(土)
会場:神戸ポートオアシスセンター
時間:開場12:30/開演13:00
料金:前売2,500円/当日2,800円

タイトル:「吉田たち47都道府県漫才ツアーin千葉」
日程:2021年7月31日(土)
会場:千葉市民会館小ホール
時間:開場15:00/開演15:30
料金:前売2,500円/当日2,800円

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ライター/仲谷暢之(アラスカ社)
撮影/渡邉一生
※撮影日:4月21日(水)


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