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小道具愛を語・・?~コウテイ下田・前編~

作品ではなく、あくまでも小道具です!
コウテイのコントを見たときに脳裏に強烈な爪痕を残す数々の小道具たち。
作っているのは重力に逆らうヘアスタイルでおなじみの下田真生。
そんな彼に、日々生み出す小道具について聞きました。
ただし、あえて愛は語りま“せん”!

名称未設定のデザイン (1)

「今思えば、小さい頃から手先は器用な方でしたね。鹿児島の出水ってとこで下の方に行けば海だし、上の方に行けば山っていう自然に囲まれた田舎に住んでいました。家自体もおもちゃがあんまりなかったし、なんでも買ってもらえる環境ではなかったので、作れるものは自分で作るっていうのが染み付いてたのかもしれません。例えば、角材を拾ったりもらったりして削ってバット作ったり、新聞紙とガムテープを使ってグローブやボール作ったり、ベイブレード(現代版ベイゴマ)をひとつ買ってもらったのを分解して構造を調べて、画用紙を切り抜いて20枚ほどミルフィーユ状態に重ねたものの中に磁石を入れ込んでオリジナルのベイブレードを作ったりしてましたね。」

昭和ならいざ知らず、平成というモノが溢れまくっていた時代と逆行したハンドメイドライフを下田少年は送っていた。そして人は自然の中で育つと手先が器用になる。ということを身を以て教えてくれているよ、この人は!

「まぁ自分が欲しいものを買ってもらえなかったので、作るしかないという必然性ですよね。でも次第にそれが当たり前になってきたし、だんだん作るのが楽しくなってきてましたね。自分の思い描いたものを納得いくまでこねくり回しながら、カタチにしていくことのプロセスを子どもながらに堪能してたかもしれません。」

子どもの頃に培ったハンドメイド能力は、やがて大阪で開花することになるとは……あぁ人生はわからないものだ。
お笑いの世界に入った下田は九条とコンビを組み、コウテイが誕生する。と、同時に小道具作りが始まる……。

「はじめは九条からネタの打ち合わせをしていたときに“こんなん作れたりする?”って言われたんで製作してみたんですよ。そしたら九条が“すごい、お前器用やな”って言うて、ちょっとその時、僕、気持ち的に嬉しかったんやと思いますね。なんか認められたような(笑)。だからそれ以降、小道具を作る職人となりました(笑)。

九条からのオーダーって、いつもボヤッとした感じなんです。悪魔っぽいマスク頼むわって言われた時も、細かくこんなので、こんな風になんて指示はなく、とりあえず僕なりに悪魔を描いてみて、ミーティングして作り上げていきます。もちろん九条の思い描いた悪魔になるまで訂正しながら。大変なんですけど、あいつのこだわりに応えようと、そこは先ほども言った職人気質というか妥協したくないなと。結果、舞台にも繋がるわけですから。」

九条がクライアントで、下田がコントラクターという関係がコンビの中で確立している……。

名称未設定のデザイン (2)

「いろいろ作ってきてわかったのは基本、ガムテープと新聞紙があればなんでもできるってこと。心臓以外なら(笑)。自立する等身大の女性像とかも作りましたが立たせるのが難しいんですよ。だからしっかり骨組みを作ってなんとか納得できるものを完成させました。

でも一回、お菓子のカステラを3つ欲しいってオーダーがきたので作ったんですよ。そしたらお前、何でリアルな大きさでカステラ作ってるねんと。舞台ように大きく作らんとお客さんに見えへんやろって怒られたんで、そんなんやったら初めからちゃんと指示を出せ! お前が作れ! ってブチ切れしたことありました。」

とは言うものの、下田は今も職人として、九条というクライアントからのオーダーを受けている。ところでこれまで数多作った小道具はどうしてるのだろう。

「僕の部屋がすごく狭かったので、最初は九条の家に置いて保管してもらってたんですが、それもだんだん置き場がなくなったのか、捨ててました。」

え!? 捨ててる?

「はい。最初はまた作るのが面倒だなぁと腹立ちましたが、“またあのコントやるから同じもん作って”と言われれば、作らないといけないので新聞とガムテープを持ち出してせっせと小道具を仕上げてます。仮面は8個くらい、刀は20本くらい作り直してますね。まぁ一回やってそのまま使わなくなったものや作ったけどボツになったり、使いもんにならなくなった小道具は作りすぎて思い出せないくらいありますから、まだ作り直してる方がいいかなと。自分で考えて作ったものなら僕の作品なので残したいですけど、あくまでもコントの小道具でなんです。だから写真も撮らないです。人から言われたものを作れるスキルがあるだけなので。」

そこに愛はあるのか? と某CMのコピーのように問われれば、下田はNOと答えるだろう。そこはあくまでも小道具を作るコントラクターなのだ。
さて、そんな小道具作りに少し冷めた視点の下田だが、それでも作り上げたものには一家言あるようで。後編は愛を語ってくれるだろうか……。


To be continued?

■コウテイ プロフィール
2013年結成。NSC大阪校35期生。下田真生(左)、九条ジョー(右)。
揃いの赤いマオカラースーツの衣装が特徴的。
下田:ギャンブル狂で卓球と将棋が得意。
九条:アメブロでは短編小説などを執筆している。


コウテイINFO

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ライター/仲谷暢之
撮影/ポートワシントン・笠谷
写真提供/コウテイ・下田

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