結果を出していく仲間たちを見るのは「恥ずかしい、悔しい、羨ましい」…大自然の“優しくない”心中

2022年3月2日 08:00

3月5日から13日まで、9日間にわたってよしもと有楽町シアターで大自然のトークライブ「焚火」が開催予定だ。ゲストを迎えてオチのない話をするライブには、ゆったりとした大自然のキャラクターが反映されているといえるだろう。だがそんな2人の心中は、近年、熾火どころではなく燃え盛る炎のように温度を上げている。次々と結果を出していく友人たちの背中が、大自然に火を点けた――。

有楽町劇場スタッフの愛が詰まった「焚火」

――3月に、よしもと有楽町シアターで9日間連続トークライブ「焚火」を開催するそうですね。これはどういう経緯で決まった企画なんですか？

しんちゃん：「焚火」はもともと僕らがやってるトークライブで、照明真っ暗にして舞台に焚火のセットを組んでその明かりだけでゲストとしゃべるパッケージなんですよ。

ロジャー：有楽町の社員さんが「森」をテーマにして自然の草とかを舞台上に据え置きにして、そのセットの中でライブをやる企画を立てていて。そこに「焚火」がぴったりだから9日間毎日やりましょう、と誘ってもらいました。

しんちゃん：「押さえちゃった」って笑いながら言われましたね（笑）。有楽町の照明さんが前から「焚火」がすごい好きで、別の劇場でやるときもわざわざ来てくれて凝ったセットを組んでくれるんですよ。木をつくってくれたり、上に星空つくってくれたり。前に「今度は流れ星流したい」って言ってたんで、今回も多分だいぶ豪華になると思います。

――夕方公演「東京森林浴」の出演者がそのまま夜公演の「焚火」に出る流れなので、ゲストが毎日多彩です。中には、しっかり話すのは初めての人もいたりするんでしょうか。

[B1]まとめポスター(森林浴焚火)

ロジャー：この中だと囲碁将棋さんはまだそんなにがっつり話したことないんで楽しみですね。囲碁将棋さんが、本当は我々がやったほうがいいコンテンツをやってるんですよ。

――あぁ、絶景漫才！　たしかに“絶景”と“大自然”は相性いいはずですよね。

ロジャー：あれ、いいっすよね。「くれ」っていいます（笑）。

しんちゃん：「大自然　漫才」で調べると囲碁将棋さんが先に出てくるようになってきて、ややこしいんですよ。

目標は100人寝かしつけ!? 毎回お客さんが寝るライブ

――そもそも「焚火」はどういうコンセプトのライブなんですか？

しんちゃん：「オチない話をしたいな」と思って始めたんです。でもそれって芸人からしたら不安なんですよね。だから、オチのない話をしてシーンとなってるときに焚火の音が鳴ってたら笑うんじゃないかってことで焚火を入れました。素の話をしようというコンセプトなので、わりと毎回、これまで聞いたことないような話を聞けたり素の部分が見れたりします。

ロジャー：でも「やっぱり芸人って芸人だな」と思うのが、全員オチつけるんですよ、結局。もうクセですよね。ただ、「これ面白いでしょ」って感じでめっちゃエピソードトークした人は失敗する傾向にはあるかもしれない。不思議と下ネタや下世話な話もあんまり出てこない気がします。

しんちゃん：答えのない話もしますね。「小学校のとき、女子って放課後何してたんやろう」みたいな。そういうのを芸人でしゃべってるのが面白いです。結構みんな空気に飲まれてくれて、前に金属バットさんに出てもらったときも意外と乗ってくれました。ただ、ランジャタイの国崎さんだけはずっと国崎さんでしたね。カラスぶん回してた。

ロジャー：僕が60分ずっとツッコんで終わりました。トークなんかひとつもしてない。それと、このライブの特徴としては、お客さんが寝ます。

――寝る!?

しんちゃん：毎回何人かいるんです。めっちゃ寝やすい明るさなんですよ、ほんまに。みんな声もあんま張らんし。

ロジャー：今回は冬に室内入って温まるし、最終公演だから時間も時間ですし、寝る人多そうですね。変な話ですけど、もう寝に来てもいいです。

しんちゃん：たしかにな、仕事終わりで疲れてたら。

ロジャー：世界初の寝落ちライブ（笑）。合計100人寝かすこと目標にしてもいいかもしれない。このライブは寝てくれていいんですよ。

――同じく3月からはYouTube「大自然チャンネル」が再始動、5月には単独ライブもあって、上半期は盛り沢山ですね。

ロジャー：そうなんですよ。YouTubeは野外で収録したいと思ってたんです。それがコロナの関係で延び延びになってたんですけど、ちゃんと動き出そうってことになりました。

しんちゃん：週1くらいを目指して、ネタとラジオ的な動画も上げることになりました。ネタ動画を上げるようになってからテレビのネタ番組呼ばれるのが続いたし、テレビの人たちが「YouTubeで見ました」みたいに言ってくれるんです。やっぱりちゃんと見てるんですよね。だからやっておいたほうがいいな、と。

ロジャー：単独のほかに、新しい企画ライブをやりたいという話もしてます。

しんちゃん：マネージャーが代わって、「やりましょう！」ってケツ叩いてくれるんですよね。僕ら、のんびりしてるんかな？　今までは新ネタライブもやってなくて普通のライブで勝手に新ネタおろしたりしてたんですけど、いろいろやっていきましょうって。

ロジャー：多分、自分たちのセールスポイントを押し出すのが僕らは下手なんですよね。定食屋で僕らが勝手にメニュー選んで出してるんじゃダメで、「ラーメンがうまい店」みたいに「ここに来たらこれが食べれる」っていう目的をつくってあげないと、ってマネージャーに言われました。言われたというか、説教に近かった（笑）。

しんちゃん：「どんな番組出たいですか？」「これは合うと思う」とかいろいろ話をしてくれます。

「このままやと周りの友達がみんな売れていなくなる」

――大自然さんのネタは“優しい笑い”が魅力だと言われることが多いと思います。ロジャーさんのツッコミのスタイルからそう言われているのかなと思うんですが、「優しい」と評されることに対してどう思っているのか、気になっていました。

ロジャー：そういう感じで「優しいよね」って言われたときに、「本質は見られてないな」って気持ちはありますね。優しく返すことが面白いとき以外は別に優しくしてないですから。たまにお客さんから「今日のあれは優しくなかったですね」とか言われるんですよ。

しんちゃん：えっ。

ロジャー：ライブの平場で、優しく返さないときももちろんあるじゃないですか。「そんな人だと思いませんでした」みたいな……。

しんちゃん：お客さんからしたらそう見えるのか。芸人からしたらめっちゃ優しいですよ。なんでもむちゃくちゃ付き合うし、見放さないしスカさないから。誰かが言ったボケに対して「……はい！」で終わらせるとウケたりするじゃないですか。でもそれって芸人からしたら「力のないMCやな」って思うんです。

ロジャー：それをやるのはむっちゃ簡単ですしね。

しんちゃん：そういうことしないから、優しいです。そもそも僕らも別に「優しいことしよう」ってネタやってきたわけじゃなくて、面白いことやろうって思ってやってるわけですし。そろそろ完成してきたんじゃないかと思ってるんです。2年くらい前からネタがだいぶ良くなってきたと思ってて。東京に来て良かったかもしれないですね。無限大ホールだとやっぱりダイタクが漫才えぐいんですよ。オズワルドやゆにばーすもいるし、すごい人らが近くにおって、しゃべる機会も多いからそこでだいぶ漫才に向き合おうという姿勢になりました。

――一方でこの数年は、同期のニッポンの社長・辻さんだったり、近い時期に東京に移ってきた男性ブランコやZAZYさんだったり、大阪時代に一緒に過ごしていた面々も賞レースで結果を残すようになってきました。そのあたりはどう感じているんでしょうか。

ロジャー：僕は正直、悔しくないと思ってたんですけど、死ぬほど悔しいですね。特に、僕がよう遊んでたんがロングコートダディさんとニッポンの社長と、滝音とかビスケットブラザーズとかさや香、からし蓮根とかなんで。「悔しい」の前に「恥ずかしい」が来る。恥ずかしい、悔しい、羨ましいの順番ですかね。『M-1グランプリ』の日は、敗者復活から最後まで全部ひとりで観てるんですけど、なんていうか、心の中では椅子に縛り付けられて「馬鹿野郎、おめぇ家にいるんじゃねぇよ」「この光景を目に焼き付けろ」って自分にやってる感じあります。そのときはメシも食うてないんですよ。コーヒーとタバコだけで「ふぅ……クソ、おもしれぇ」ってなってる。あの思いはもうしたくないんす、俺。

しんちゃん：たしかにな、グーッとくるよな。

――自分がそんなに悔しく感じるとは思っていなかった？

ロジャー：思ってなかったです。以前は普通に楽しんで見てたんですよ。霜降りが優勝したときからかな。あの年からそれが始まりました。粗品とむちゃくちゃ仲良くて、可愛がって一緒に遊んでたんで、強烈だったんです。「しんど!!!」ってなって、『M-1』終わった後に街を徘徊しました。

しんちゃん：僕ら、『新しい波24』（フジテレビ）に出てたんですよ。一緒に出てたのが霜降り、四千頭身、ハナコ、さや香とかで。さや香が最初に『M-1』決勝いって、「うわ、いった！」ってなって、そのあと霜降りが優勝してハナコも優勝して、四千頭身も売れていった。「何してんねん、自分」ってなりましたね。あんなに一緒にやってたのに。

ロジャー：そうね。その時期、唯一の心のよりどころじゃないですけど、先輩のロングコートダディさんがいたけど、その後ちゃんと決勝いってドーンとなってますし。

しんちゃん：僕は1年目の頃からインディアンスの田渕さんとずっと仲が良いんですよ。今もう3年連続『M-1』ファイナリストじゃないですか。「そろそろお前もやぞ」って期間に入ってて、実際去年はめっちゃ自信あったんです。でも準々決勝で「あれ？」ってなって、落ちたと思った帰り道に初めて田渕さんに泣きながら電話しました。だいぶ怒られましたね。「M-1で自信なくすな」「お前がおもろさで負けてるやつおるんか」ってずっと言われました。でも、このままやと周りの友達がみんな売れていなくなっていくんですよ。一緒におるためにそろそろ決勝出なあかんな、みたいな感じになってますね。

――今年は家の椅子じゃないところに居たいですね。

ロジャー：『M-1』のあの椅子に座りたいですね。

しんちゃん：あ、うまいこと言おうとしてた？

ロジャー：あれ？　勘悪い？

しんちゃん：（笑）

■撮影協力

オザキフラワーパーク
〒177-0045 東京都練馬区石神井台４丁目６−３２

■大自然INFO

『東京森林浴』『焚火』

開催期間：2022年3月5日(土)～3月13日(日)
会場：よしもと有楽町シアター
料金：『東京森林浴』　前売¥2,300｜当日￥2,500｜有料配信¥1,200
　　　『焚火』　前売¥1,500｜当日￥1,800｜有料配信¥1,000　
有楽町の舞台を「森」に装飾し、ネタ寄席を行なう舞台美術先行型企画公演『東京森林浴』。
広大な自然をイメージしたこだわりのセットの中で、普段とは一味違うゆったりとした気持ちでお楽しみください。
一部の出演者を除いて、『東京森林浴』への出演者はそのまま「大自然トークライブ『焚火』」に出演します！

▼各公演出演者情報はこちら
■3月5日(土)
『東京森林浴#1』17:30開場｜18:00開演
出演：THIS IS パン、ネルソンズ、大自然、ミキ、そいつどいつ、オダウエダ
『焚火1日目』19:30開場｜20:00開演
出演：大自然、THIS IS パン、ネルソンズ、ミキ、そいつどいつ、オダウエダ

■3月6日(日)
『東京森林浴#2』13:30開場｜14:00開演
出演：守谷日和、インポッシブル、TEAM BANANA、西村ヒロチョ、デニス、ダンビラムーチョ
『焚火2日目』15:30開場｜16:00開演
出演：大自然、守谷日和、インポッシブル、TEAM BANANA、西村ヒロチョ、デニス、ダンビラムーチョ

■3月7日(月)
『東京森林浴#3』17:30開場｜18:00開演
出演：うるとらブギーズ、スパイク、カゲヤマ、男性ブランコ、オフローズ、プール
『焚火3日目』19:30開場｜20:00開演
出演：大自然、うるとらブギーズ、スパイク、カゲヤマ、男性ブランコ、オフローズ、プール

■3月8日(火)
『東京森林浴#4』17:30開場｜18:00開演
出演：モノマネ三銃士（セブンbyセブン玉城、イチキップリン、こりゃめでてーなこう大）、囲碁将棋、ゆにばーす、サンシャイン、サンジェルマン、9番街レトロ
『焚火4日目』19:30開場｜20:00開演
出演：大自然、モノマネ三銃士（セブンbyセブン玉城、イチキップリン、こりゃめでてーなこう大）、囲碁将棋、サンシャイン、サンジェルマン、9番街レトロ

■3月9日(水)
『東京森林浴#5』17:30開場｜18:00開演
出演：しずる、ライス、サルゴリラ、メトロンズ
『焚火5日目』19:30開場｜20:00開演
出演：大自然、しずる、ライス、サルゴリラ、メトロンズ

■3月10日(木)
『東京森林浴#6』16:30開場｜17:00開演
出演：佐久間一行、バンビーノ、オズワルド、トニーフランク、ブラゴーリ、ピュート
『焚火6日目』18:30開場｜19:00開演
出演：大自然、佐久間一行、バンビーノ、トニーフランク、ブラゴーリ、ピュート

■3月11日(金)
『東京森林浴#7』17:30開場｜18:00開演
出演：コマンダンテ、ダイタク、ダイヤモンド、コットン、マリーマリー、軟水
『焚火7日目』19:30開場｜20:00開演
出演：大自然、コマンダンテ、ダイタク、ダイヤモンド、コットン、マリーマリー、軟水

■3月12日(土)
『東京森林浴#8（1回目公演）』14:30開場｜15:00開演
出演：とにかく明るい安村、おいでやすこが、チョコレートプラネット、ZAZY、オフローズ、三匹
『東京森林浴#8（2回目公演）』17:30開場｜18:00開演
出演：グランジ、ピクニック、ジェラードン（かみちぃ、アタック西本）、やさしいズ、世間知らず、オドるキネマ
『焚火8日目』19:30開場｜20:00開演
出演：大自然、グランジ、ピクニック、ジェラードン（かみちぃ、アタック西本）、やさしいズ、世間知らず、オドるキネマ

■3月13日(日)
『東京森林浴#10』16:30開場｜17:00開演
出演：アイロンヘッド、大自然、ニッポンの社長、スクールゾーン、ぼる塾、ヨネダ2000
『焚火9日目』18:30開場｜19:00開演
出演：大自然、アイロンヘッド、ニッポンの社長、スクールゾーン、ぼる塾、ヨネダ2000

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ライター／斎藤岬　撮影／越川麻希(CUBISM)
企画・編集／かわべり

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