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9月の詩


2021年9月に書いた短い詩の記録です。


9月

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窓外の雨音に肩を寄せ
秋の夜長に備えて眠る
いずれ来たる独りをみつめて。


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肌の内側に這う秋を
捉えきれずに立つ夕べ
信号機 眼刺したる藍色に
追われるままに足早に征く


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身体の水分量に左右されて
体内気圧が変動する
月の満ち欠けに左右されて
戸惑い情緒が揺らいでいく
このおんなというせい


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黒光の路面を蹴り上げて
自重(じじゅう)を幾らか軽くする
後ろ髪に捕まるまいと


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秋の狭間の百日紅
滝 溢れ出で
化粧の残香を想う


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語る眼
騙る眼
片端の眼、
写す夢の夜 一夜だけ
暁の前に 掻き消えろ


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腕の重さに気を取られ
足元の滲みに気がつかず
靴底の 僅かにあいた隙間から
しんとり染みた秋雨を
受容れるだけの夕間暮れ


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うなされて見る夢は
いつも懐かしいあの頃で
私は幾度も飽きず
同じ間違いを繰り返す
夢の中でくらい 正解を出せたら良いのにと
目が覚めてからようやく思う

発熱の夢は
私を追い詰める


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湿った土が終わりを告げ
立ち消えの夏


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宵の風 浴びて
白けたあたまでもって手探る夜
何を探していたのかも忘れて
掘り潜る
束の間の夢


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にごれば息もしやすかろうが
澱めば手脚を取られるばかりで
真の呼吸を忘れた頃には
沈澱
息を殺すばかり


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救済を待つ
海はどこまでも碧く
空はどこまでも高く
どこへでも行けた
誇り高き愚か者よ
今もそこで笑っているか


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