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ソロキャンプで悟ってしまったキャンプにおける重要なこと

先週の休みは諸用で石巻の友人宅にお世話になった手前、二週連続のノーキャンプは避けたいバースデー


オッサンを意識して早、数十年が経ち誕生日に対する思い入れなどとうの昔に失っている枯れぎわの男は…それでも妻の看病にこの1日を費やすか?

それとも満を持し、単独で荷物を積み込みハンドルを握るのかを迷う。

…悩みに悩んでいる姿を見たか見ないか妻が言った


「私は大丈夫だからソロ行っておいで!」

「それともソロは怖いの?笑」

まさかの挑発 笑

ありがとうとゴメンを心の中で繰り返し後ろ髪を引かれる思いで出撃を決めるに至った。

これだからうちの妻(アイツ)はスゲーんだよな…と口遊みながら


積荷を終えてアクセルに足を載せても行先は決まらない。

さて、蔵王の麓で温泉でも楽しもうか?

いやいや春先以来のソロだし思いっきり突拍子もないトコに幕営するか?

妄想しながらも結局宮城県丸森町の大好きな大好きな不動尊公園にステアリングを切っていた。

ある程度の設営を完了するや否やベルギービールを開栓し


各サイトごとに設置されたU字コンロに火を入れた。

枯葉の着火剤は真っ白な煙を上げながら私を歓迎するかのように勢いよく熱を放った。


先々週は見事な紅葉を見せていた不動尊公園だったがすっかり葉も落ち冬枯れの景色に様変わり共有の喜びの少ないソロキャンプにはうってつけの雪を待つ時節

誰一人として人の姿のない営地にバトニングの音が響く


2本目のベルギービールをグラスに注いだところで止みそうにない雨が降って来た。


トイレに行こうと近道のためにジャンプしたりすると足底がジーンとなるくらい寒い11月特有の冷たい雨、こんな事だから妻に雨男だなんて言われちまう…そう思った顔はニヤけていたと思う。

モタモタしてるとせっかくためた熾火が死んでしまう


ソロだから、とにかく簡単に済ませよう、そんな思いとは裏腹に結果タープを張る事にした。

たかが誕生日それも一人で過ごす誕生日を、とびきりの記念日だなんて1ミリも思っちゃいないが焚火にあたり極上の酒を飲み、そんな時間の価値を体感したかった。

キャンプにおける最大の意義はアウトドアで当たり前に実現する美味い飯を食う事や美味い酒を飲む事よりも置かれた環境と最小のエクイップメントによって最大化される不便を不便と思わない自分である事。


腹が膨らむので飲む酒はウィスキーハイボールに変えた。ベルギービールの度数が高過ぎて頭で考えるよりも酔いが回ったのがその理由の一つ。

このキャンプ場を象徴する木造の橋が今日も美しい。

妻にはいつも反対されて選べなかった場所を今回選んだ。ここはいつも見ず知らずのソロキャンパーが幕営している場所。

憧れがあったとは言わないが…ソロキャンパーとなったこの日の私が選ぶに値する動機は充分だ。


腹はさほど減ってないが…ツマミぐらい準備しようか。コンビニの弁当でも良かったのだけれど外飯を調理出来なかったならキャンパーとは名乗れない…

…以前出会ったとにかく格好いいキャンパーさんが言っていた。

調理を含めてキャンプじゃなきゃルンペンと変わらない。

あの人なりの解釈だが、私の理解も遠くない。


でも…こんな発想しか出てこないのが私のキャンプ脳、つまり今日は暖かいものを食えればいい 笑


加工肉を炙り焼いてる間のツマミはタバコ


たった一人の野営地で早々に寝てしまうのを何としても避けたかった。

そこで、今回は自家焙煎のアイリッシュコーヒーで明るいうちに覚醒を


トボトボと湯を注ぎ入れ


アイリッシュウィスキーを20ml入れた所で閃き(ひらめき)があった。

本来なら泡立てた生クリームをフロートさせシュガーinで正式なアイリッシュコーヒーとなるのだが…激甘いキャプテンモルガンスパイストラムをフレーバーとして使う


たった15mlのこれが激ウマ!
やんごとないくらいに酔うけれど…
カフェインの効果で眠くなる事はない

これだからキャンプはやめられない


そうこうするうちに夜の帳が下りてきた。


”酒は人類の最大の敵かも知れない”


“だが聖書はこう言っている”


“「汝の敵を愛せよ」と”


20世紀を代表するシンガーでありアクターだったかの有名なフランクシナトラはそう言った。


酒呑みは何かにつけて飲む理由とそれを正当化するこじつけを思いつく。

ソロキャンパーとなった今宵の私はシナトラに背中を押してもらい二日酔いという罪を覚悟しつつ頭の中で自己責任にならない工作をした。

シナトラのこの言葉は今宵の深酒の十分な動機付けの一つ。


TRIPLE DISTILLED = 三回蒸留はアイリッシュウィスキーJAMESONの特徴的製法なのだそうだ。

それを物語る味わいはくどくなくスッキリまろやか何杯でも飲めそうだがアイラモルトの様な常習性はない。


腹も落ち着き一人マッタリと寛ぐ時間に満足感が込み上げるもののもう少し食べ足りない気分だった。


どーれこの一杯を飲みながら取り掛かるか


と言っても大した事は出来ないし準備もない
ジャガイモを厚目にスライスして


塩胡椒で強めの下味を付けたらスキレットに油を引き火にかける


再び取り出だしたる加工肉、コンビーフ

私にとっては子供の頃こいつの回し方を失敗して開かなくなり親に叱られたトラウマ食材、いい歳になってどうやって失敗したのかその度、検証するのだが思い出せないでいる。

失敗する事はなくなった今この缶詰を開栓するたび毎回嬉しさが込み上げるという陽性のトラウマ。


ジャガイモと同様の厚さに切ったコイツをスキレットにドカッと入れ


コンビーフの脂が溶けた頃、ウィスキーを20mlほど流し込み更なる香り付けにアイラモルトも5ml程度入れ蒸し焼いたら。

ジャガイモとコンビーフのウィスキー蒸しの完成だ。


アイラモルトの独特の芳香(ピート)がクセになる今夜の二品目。ウィスキーベースなだけに合わないわけはなくウィスキー好きのウィスキーによるウィスキーのためのソロキャンプオツマミ


2ターン目は味を変えコイツが主役前回キャンプで余ったやっすいカレー粉、パンチの効いたスパイシーな香りを楽しんだ。


たいした食事でもないのに美味かったりすると途端にテンションが上がる。

電波の関係で妻とは交信が途絶えている事もいつしか忘れてしまっていた。


対岸の奥にある管理棟に明かりがついてるせいでたった一人だというのにこの営地の孤独感はほとんどゼロ

久々の完ソロで味わう一人酒がとにかく美味かった。

楽しんでるなぁ俺。


こうしてソロキャンプの夜は更けていく。

体力のあった若い頃、夜が楽しく寝たくなかったり家に帰りたくなかったりしたものだが…ソロキャンプの夜は眠くなったなら

そこがTHE END


たった一人の楽しい夜眠くなるために必要なのは炭水化物。焚火コンロで沸かし続けた湯をようやく使う事に…湯を沸かすそれだけで満足があるのが完ソロだよな…としみじみ


アルコールで麻痺した満腹中枢にトドメのどん兵衛は食後15分ほどで睡魔を届けてくれた。

朝までグッスリなソロキャンプで悟った事

「出来ること」が増えるより
「楽しめること」が増えるのが良いキャンプ


それがキャンプ


2016年11月 拙著

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