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「クリエイターの活動を持続可能にできないか」というでっかいテーマに試行錯誤した話

はじめまして、まんぼです!
「いい仲間といい創造をする」を信念に、普段は広告代理店でクリエイティブプランナーをしています。

今回、GEKIの担当プロジェクトが区切りを迎えたので、半分備忘録までに綴ろうかと。
区切りといっても世の中に出すのはこれからなので、まだ結果はほぼ出ていないのですが…
「でっかいことに挑戦しようとするときのはじめの一歩って、こんな感じなんだ!」と参考になればうれしいです。




【背景】そもそもなぜ担当したのか

GEKIの代表、力さん(作左部 力さん)とは学生時代にストリートダンスを通じて知り合い、社会人になってからもお仕事をさせていただいたりと、長らくお世話になっていた。
ただここ1-2年は連絡しておらず。去年の夏、突然インスタのDMをいただき、渋谷で会うことに。

力さん「GEKIの中長期的な投資として、自社事業だけでなく、社会問題に取り組みたい。そのためにガンガン引っ張ってくれる人を探している。だから、どう?😀」と。

「どう!?」と話のデカさと誘い方のライトさとのギャップに戸惑いつつ、偶然にも、私自身そろそろ会社に依存せず、個人でどこまでできるかチャレンジしたいなと思っていたのと、単純にこれまでお世話になった力さんに何か貢献できたらうれしいと思い、挑戦することにした。


【活動開始前】「条件は3つ、あとは好きにやっていい」

事前に力さんから伝えられた条件は3つ。

  • 年内に形にする、年度内に話題にする

  • GEKIらしいアウトプットにする

  • 社会問題に対してクリエイティブなアプローチをとる

他は、うじさん(氏家 健吾さん)が監修することだけ決まっていて、「あとはまんぼの好きにやっていい」と。

それだけ信頼いただいているのはありがたい。
ただ、好きにやる分、条件を確実に達成する必要がある。
そう考えると、自分の力はあまりにも足りない。
ということで、まずは広告代理店で深い信頼のあるIさんを仲間にいれさせてもらった(Iさんに相談したときなんと心強かったことか…!)。


【社会問題】個人クリエイターが食っていけない

去年の11月頭にキックオフ。
改めて条件をふまえ、「GEKIらしい」「社会問題」とは、から始めた。

「GEKIらしい」について、こちらは分かりやすい。
GEKIのミッション「誰かの生きる理由を創る。」を目指すことだ。
GEKIではこのミッションの元、全員が突き動かされている。

「社会問題」について、こちらは無数にある。
そのため、いくつか社会問題を並べた中から、自分たちがより強く共感できるものを探した。

結論、「個人クリエイターが食っていけない」これに全員が深く頷いた。
(「社会問題」というと、人種差別や少子高齢化など、世界・国規模のものを扱われることが多いため、小さな規模に感じるかもしれない。しかしこの問題は、一見個人的なものに見えるものの、国内に広く根深く蔓延しており、日本の未来を左右するものでもあると考えている。詳しくは次の章で。)

例えば、私自身、個人で細々とイラストレーターをしており、実績づくりを優先しようとすると、予算にあわせ見積もりの減額は当たり前、時に本来いただきたい額の1/10でも引き受けることがある。
もちろん自分で納得した上での選択であるし、おかげさまで実績につながっている。
ただ事実として、稼働に対しての対価はいただいていない。

また自分たち以外、例えばX(旧Twitter)においても近しい声が見受けられた。
個人クリエイターが、知り合いから「お友達価格でやってよ」「え?お金取るの?」などのパワーワードを投げられた話、ある企業からかなりひどい条件を出された・扱いをされたという話、など。

一つ一つの事象に対する原因はさまざまで、実績以外で技量を図る術がほとんどない、周囲のクリエイティブへの理解を進める機会が少ないなど。他にもいくらでもあるだろう。

ただ、これらが原因で食っていけないクリエイターは無数におり、最悪の場合生きる理由を失う人さえもいる。
このひとつの事実は、間違いなく目の前にある。

そこで、これら2つを掛け合わせ、「個人クリエイターが食っていけない」を社会問題として、「クリエイターの生きる理由を創る」をゴールとして設定した。


【コアアイデア策定】クリエイティブを持続可能に

そして立ち上げたのが「クリエイティブを持続可能に。SAVE CREATIVE PROJECT」である。

「持続可能」という言葉は、SDGsのおかげかよく耳にするようになった。
しかし、SDGsのためにクリエイティブを活用されること、つまり「クリエイティブ”で”持続可能に」はあっても、クリエイティブの活動自体を持続可能にする動き、つまり「クリエイティブ”を”持続可能に」はなかなか見かけない。

さらに、前章の「日本の未来を左右するもの」について。
個人から国全体に広げて考えると、少子高齢化がすすみ課題先進国と言われている日本において、今後労働力は減る一方。
となれば、一人一人の生産性を上げる必要があり、その鍵は「クリエイティビティ」であると考えている。

ゆえに、今後、個人としても国としても、クリエイティブの持続可能性を向上させていく動きが必要なのだ。
そこで「クリエイティブを持続可能に」をコアアイデアに。加えて、今後人を巻き込んでいくためのアイコンとして・複数施策を展開していくための傘として、プロジェクト化。
これが「クリエイティブを持続可能に。SAVE CREATIVE PROJECT」である。

ビジュアルイメージ。今後ロゴ化の上、このロゴを掲げている団体
=個人クリエイターにとって安心・信頼の象徴となることを目指したい。


【具体施策考案】「時給」は受発注両者の共通感覚

プロジェクトの施策第一弾として、「食っていけない」を改善するため、まずは個人クリエイターが自身で対価をより意識する必要があると考え、「見積書」に着目した。

見積書は本来、自分が行ったことに対して対価をいただく、これを発注者と約束するためにある。
しかし、自分や周りの個人クリエイターを振り返った時に、ここをきちんとすりあわせられていないケースが多いと感じた。
例えば、想定稼働に対して予算が少ない場合でも目を瞑り受注する、なんとなく「一件いくら」で受注する、など。

原因として、個人クリエイターつまり受注者、さらには発注者も、相場を知る機会が少ないことが大きいと考えている。
相場がわからないと、なんとなくの予算だし、なんとなくの見積もりとなり、対価ではなく「ただ予算に対して金額が高いか、低いか」の判断に陥ってしまう。
ひいては、対価を正しくもらえず「食っていけない」となる。

そのため、受発注者ともに相場を正しく把握し、対価への意識を強化する仕組みが必要だと考え、受発注者の架け橋となるプロダクト「見積書」に着目、以下を施した。

①見積書に時給欄を追加

例えば「イラスト1点いくらか」これにパッと答えるのは難しい。
イラストの内容は?サイズは?納品形式は?納品日は?修正は何回まで?など条件次第で大きく変わるからだ。
これがイラストのことをよくわからない発注者や、経験の少ない個人クリエイター(受注者)であればより難しいだろう。

ただし、「時給」であれば多くの人が共通の感覚をもっている
イラスト1点が3万円、これが高いか低いかはパッとわからないが、時給が3万円であれば高い、300円であれば低い、これはわかる。

この共通感覚を利用し、見積もりに時給欄を追加することで、おのずと自分で時給を設定、これが対価への意識強化につながると考えた。
時給設定後は工数を記載するだけ、これで対価が反映された見積書が完成する。

これにより、今回はこれくらいかな?と感覚的に価格設定・受発注していたところを、受発注者共通の基準をもとに設定・交渉・判断できるようにした。

②見積書の呼び名を「対価書」に変更

①の仕組みに加え呼び名を変え、「対価書」とすることで、見積書を「対価を約束する書」という認知に変えた
これにより安易な値下げ・値上げを抑制し、「何をもってこの対価なのか」根拠のある価格設定と両者のコミュニケーションを促進する。


機能面でのプロトタイプ。今後ビジュアルデザインにもこだわっていきたい。
ネーミングは「時積書(じつもりしょ)」(=時給を意識する見積書)という案もあった。


【モニター調査】想像以上にいい反応をいただいた

プロトタイプができたところで、実際に使ってどうか、身の回りの友人や知り合いにモニター調査をさせてもらった。

結論、想像以上にいい反応をいただいたと捉えている。
以下にその一部を紹介する。

▼対象者:20代クリエイターもしくはクリエイターに発注する事業者 13名
(ご協力いただいたみなさま、本当にありがとうございます・・!)

「対価書を使用することで、自分の時給を意識するようになりましたか?」に対し、
8割近くが「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と回答。
ありがたいことに、「自身の時給≒対価に関する意識の変化があった」という声が多い。
意外な声として、
「発注側としても助かる」「仕事とプライベートの境界がはっきりする」などの声も挙げられた。

もちろん改善すべき点も多くあった。
「移動時間など時給換算しづらいものはどうしたらよいか」「これまで含めていた"お気持ち代"の説明がつきづらい」など。
これらは、プロジェクト再開の際に検討していきたい。


【現在と今後】SAVE CREATIVE PROJECT・対価書の拡大

昨年末、「SAVE CREATIVE PROJECT」「対価書プロトタイプ」を形にしたところで、GEKIの経営方針で一区切りとなった。

今後再開した際には以下を検討しており、条件である「話題」を狙う。

  • 調査をふまえた対価書のアップデート、および、SAVE CREATIVE PROJECTと合わせたリリース

  • SAVE CREATIVE PROJECTに共感してくださる企業さまの募集

  • GEKIが実際に対価書を用いて発注

  • 対価書の企業コラボ(クリエイターの費用面で問題を抱えやすいスキルマーケットサービスなどと相性が良いと考えている)


【最後に】今後も、いい仲間といい創造をしていきたい

2ヶ月ちょっととほんのわずかな時間だったが、たくさん学びがあった。
具体はあまりにも個人的なので割愛するものの、普段代理店に勤めている分、事業側の動き方や考え方はとても勉強になったし、両者の違いを肌で感じることができた。

また、GEKIは「誰かの生きる理由を創る。」のミッションの元、本当に全員が突き動かされている。その姿を目の当たりにできてよかった。

おかげさまで、自分の信念「いい仲間といい創造をする」を全うする活動ができたように思う。
いつの日か、再開することを楽しみにしています!

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