終わりの始まり

  * * *

「篠崎様、篠崎様はいらっしゃいませんか?」

とある銀行の窓口で客に呼びかける声、しかし、誰も席を立とうとしない。

「篠崎様」ともう一回呼びかけるが誰も席を立とうとしない。いや、この銀行の待合の椅子に腰掛けているのは初老の男1人しかいない。行員はその男に向かって声をかけていた。しびれを切らした行員は男に駆け寄って声をかけた。

「篠崎様、先程からお声をおかけしているのですが」

男はそう言われると、徐に顔を上げ行員を睨みつけ、こう言った。

「私は篠崎ではありません」

「???」行員は目を疑った。男は払い出しの申請をその行員に出し、待っていたのだ。その申込書には「篠崎」と書かれており、この男の名前はどうみても「しのざき」としか読めない。行員はそう思っていた。

「でも、この書類に書かれていた文字はどう見ても『しのざき』様ですよね」

その直後、行員はその男の言葉に耳を疑った。

「私は『しのざき』ではない」

「そうは言いましても、これは『しのざき』としか読めないのですが」

男はハッと気づきながら、冷静に

「お姉さん、それはね『しのざき』ではなくて『んのざき』って読むの」


  *  *  *


チャールズ・ブロンソンは生前、ある日焼けで有名な男と数日間過ごしたことがある。しかし、男は彼から呼ばれる名前に戸惑いを隠せなかった。

とある日、千葉の印旛沼で釣りをしていて、頃合いのいい時間に鰻を食べようと、チャールズを連れて行った。鰻屋は印旛沼の北にあるとある駅の傍にあった。その駅名の看板を見てチャールズは嬉しそうにこう言った。

「う〜ん、マンザキ」


  *  *  *



最近、最後に「ん」が入ると負けなるというルールが廃れつつある。

このことで一番困っているのはちりとりを作っている会社だろう。


 *  *  *


キリマ ンジャロ キリマ ンジャロ 白く輝く山

キリマ ンジャロ キリマ ンジャロ 白く輝く山

コーヒーはキリマ ンジャロ コーヒーはキリマ ンジャロ

ケーキはモランボン

モランボンは生きている

…ん?


 *  *  *


ん〜、もう終わりかな。

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