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幻のミシン工。

マスクがない。平日の朝イチにドラッグストアに並ぶと何とか買えるらしいが、それはかなり難しいので去年買った花粉症対策のマスクを大事に使っている。

先週のことだ。少し早めに会議室に入ると、forward。の彼がいた。ふと見ると紙製ではなく、デニム地のお洒落なマスクを着けている。そろそろ布のマスクに移行しないと、と思っていたところだった。

そのマスクいいね!どこで売ってるの?布のマスクを買ってみようと思ってるんだけど、なかなか素敵なデザインのがなくて探してたところ。
あ、これですか。嫁が作ったんです。
え?手作り?すごいねぇ。デザインも素敵だし、何より呼吸しやすそうな立体もいいし。beamsで売ってそうなデザインじゃない?
そんな…。beamsでは売ってません!

うん。知ってる。ちょっと言ってみただけ。

縫製もプロみたいな仕上がりだねぇ。すごいね!と絶賛していると、その声に反応した会議の参加者がわらわらと彼の周りに集まってきた。
おぉぉ、確かにこれは完成度が高い。売れるんじゃないか?作ったらいいよ!
彼はマスクを取り、(彼が作ったわけでもないのに)製造工程を懇切丁寧に説明し、その場は即席展示会のようになっていた。
布のマスクも今はすぐに売り切れちゃって入手困難だもんなぁ。ちょっと作ってみてメルカリでお試しに売るのはどうかな。それおもしろいなー。コロナショックの不景気はこれから来るし、ボーナスもきっと減るだろうし、これからは副業の時代だよ。みんなでマスク作って売ってみようよ。
そうだ。あなたは手先が器用だからミシン工になって縫えばいいよね。私はお裁縫はダメだから受注を取ってくるよ。ミシンがダメだったら、そうだなー糸切りする人とか。製品を出荷前にチェックする人もいるね。俺、実はミシン得意。などなど。

本気で考えてみると雇用っていろいろなところから生まれるもんだね。と、この春には新事業立上げの勢いで会話が盛り上がった。

あ、あの。でも。この前、中学生が手作りの布マスク600枚を寄付していたニュースが出ていたので、オトナの我々がマスクで副業って、ちょっと、あの、それは何というか世間的にというか道徳的にどうなんでしょうか。

うん。知ってる。ちょっと言ってみただけ(笑)。

温かいお気持ち、ありがとうございます。 そんな優しい貴方の1日はきっと素敵なものになるでしょう。