幻のミシン工part2。

ついに使い捨てマスクの在庫が数えるほどになった。先日の後輩から将来のミシン工への意気込みはふだんの仕事よりも感じられたから、納期3日で発注することにした。金曜日に注文し、本日月曜日に受け取るスケジュールである。
「のちほど席までお持ちします」と、先ほど新しいジップロックに入ったマスクが納品された。

先日会議前に見せてもらったマスクよりさらに洗練されて、縫製もきれいだった。
これはいい。
だがしかし、彼は商品を売るうえで最も大切なことを忘れていた。これを入手した顧客の心の動きについて想像することだ。
なぜ君と私がペアルックなんだ。       社内で目立ちすぎるだろう。
全く同じ布ではないか。しかも、無難な白やガーゼ地とかではなく個性あふれるデニム地じゃないか。私は発注時に彼に伝えていた。ピンクや花柄はあまり好みではないので、シンプルでシックな感じでと伝えたはずだ。~の感じというのは、そのものと同じというわけではない。もし全く同じものがほしければ、同じものが欲しいととっくに伝えている。
私の日本語の説明が足らなかったのか。
しかも、耳にかかるゴムだけ私のは黒になっていた。ちがう。そのセンスはズレている。一部だけ色違いなんて余計に怪しい。
福山雅治にそっくりの新人とペアルックになるのとはわけが違う。いや、これは個人的に微妙な感情の動きなんだけれど。
同年代の我らがこんな全く同じ布マスクをしていたら、何とも思っていなかった人まで「あれ?」と疑問を持たれてしまう。
メルカリで同じ人から購入したんではないかと思われるかもしれない。
それはまぁいい。いや、いやかも。

かくしてこのマスクは会社では使えないことが決定してしまった。

温かいお気持ち、ありがとうございます。 そんな優しい貴方の1日はきっと素敵なものになるでしょう。