チバユウスケ



俺がバンドを始める理由になった男が二人いる。


一人は踊ってはわかりの国の下津と、チバユウスケだ。


二つ上の兄貴が、部屋で聴いていた音楽がリビングにいた俺のところまで響いた。

爆撃機のような鋭いギターに、喉を捻り潰したようなドスの効いた声が、俺の脳内をジャックしたのを今でも鮮明に覚えている。


どうやらその音はthee michelle gun elephantというバンドで、chicken zombiesのゲットアップルーシーという曲だった。


当時の俺は日本の音楽に興味がなく、まだ中学生のクソガキが何もわかっていないのに、日本の音楽はクソ!!!と自慢げな顔を言っていたのだが、それは完全に間違いだったということを一瞬にして理解させてくれたのが、thee michelle gun elephantだった。


それから、俺は兄貴にCDを借りて全曲MDにいれてたくさん聴いた。
ちょうどそのくらいの時に、ボーカルのチバユウスケが新しいバンドを始めたという情報を入手し、1stシングルのstupidを買った。

ギターがアベフトシじゃないことにがっかりしたが、イマイアキノブのギターも素晴らしかった。


the birthdayになり、チバユウスケのボーカルはさらに深みを増して、大人のエロさというか、歳を重ねてもロックンロールできることに偉く感動した。


中学生のとき一番聴いた音楽がミッシェルだと思う。

そのくらい衝撃と影響を受けた。


こういう歌を歌える奴とバンドがやりたいと思い、ミッシェルが好きな奴を集めてバンドをやったこともある。


タバコを吸い始めたのも、チバユウスケの影響だ。
当時中3か高1の俺は少しでも彼に近付きたくて、吸ったこともないラッキーストライクを吸い始めた。


本当に憧れた。


大人になりバンドがいい感じになり、2015のBAYCAMPというフェスに出た。

過去に出たイベントなんてまったく憶えてない。ましてや何年になんのフェスに出たかなんて記憶してるはずがないのだが、このフェスだけは覚えている。


初めてbirthdayと同じイベントに出れるということでこれは今でもおぼえている。


早々に出番を終えたのだが、俺はライブ前より遥かに緊張していた。
俺らの楽屋はbirthdayの隣の隣で、彼らはまだきていないのに、早く来ないかと気が気でなかった。

俺はギターにサインをもらうことを決めていたからだ。

俺の緊張も途切れたところで、birthdayが楽屋入りしたとマネージャーに聞いた。


俺はとりあえずトイレに行くふりをして中を覗いたら、そこにはチバユウスケがいるではないか。チバユウスケだけじゃなくて、クハラカズユキまでもいる。当たり前だが。


俺はまた一気に緊張してしまい、なかなか話しかけることができなかった。


トイレと楽屋を無駄にウロウロしていたら、クハラさんが声かけてくれた。


俺はすぐCDを楽屋に取りに帰り、
ずっと大ファンです!あなたたちに憧れてバンド始めました!全然違う音楽だけど、聴いてくれ!と言い、クハラさんにCDを渡し写真を撮った。

クハラさんにチバユウスケのサイン欲しいけど、話しかけにくいって言ったら、楽屋に入れてくれた。

そこで俺はすぐにギターを取りに帰り、チバユウスケにサインを求めた。
彼は無愛想ながらもデカデカとサインしてくれた。


めっちゃ嬉しかった。


俺はサイン貰った人は三人しかいないんだけど、そのうちの一人がチバユウスケ。


今でも貰った時のことを鮮明におぼえている。


その後birthdayが所属しているベイスという事務所に所属しているバンドとツアーを周り、その時にベイスの人に気に入られて、四谷にある事務所に遊びに行ったことがある。

四谷だっけ?代々木上原だっけ?まぁいいや。


そこでチバユウスケにまた会った。


ギターにサインしたこと覚えていてくれて、すごく嬉しかった。


その後、複数人で飲みに行った。


チバユウスケはビールをごくごく飲み、タバコをパカパカ吸っていた。


ただのファンだからかもしれないが、彼の全ての挙動がかっこよく、本物のロックンローラーはこうあるべきだと心から思った。
それは今でも変わらない。


正直たいした話はしていないけど、子供の頃から憧れている人とこうやって飲みに行けたことは俺の大切な思い出になっている。


その後何回か飲みの席で一緒になることが多かったが、憧れの人にはたいして話すこともないので、会話はあまり覚えていないが一つだけ覚えていることがある。


お前もロックし続けろよ


酔いで赤くなった顔で俺にこう言った。
ほぼ泥酔してる彼は覚えていないと思うが、俺はこの言葉が忘れられないし、この言葉があったから俺は音楽続けられたと思っている。


チバユウスケの訃報は本当残念でならない。

日本のロックを体現するような男だった。



あなたがいたから今の俺がある。
まさか死ぬとは思わなかったよ。


ミュージシャンが死んでこんなに悲しい気持ちになったのは初めてだ。


もう一度生で見たかった。あんたになりたかった。

もう一度あなたの声を聴くために、今爆音でCD流してる。
涙がこぼれそうだが、涙は出ない。


安らかに眠ってください。
天国でも最高のロックンロールを鳴らしてください。

ありがとうチバユウスケ!!!!大好きです

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