水槽にとけて延びる絵の具みたいな金魚の朱をみる。不誠実に、記憶をぼやかしつつ生きていく。玄関には年季の入った傘が立て掛けられていて、ひとつの季節の終わりを告げている。夕暮れが濃い。時間が延びていく。淡い孤独のなかで浅い呼吸を続けるだけの。ことばに灯を。これから訪れる永い夜に灯を。

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