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高校時代(パンツ編)

「高校入学(孤高の変態、ラオウとの出会い)」

(前回の続き)

中学生時代、学校から帰ってきては、友達と麻雀するか、MONDO TVを見る。
夜はご飯を食べたらひたすら東風荘で麻雀を打つという、中学生にして既にもうダメな生活を続けながら中学校を卒業し、俺は高校に入学する。

高校の入学式を終え、俺は1年3組だった。
そして、初めてクラスに入った瞬間、ヤバイクラスに入ったと感じた。(その高校時代がそもそも結構ヤバかったのだが)

やたら髪の色が派手なヤツが何人かいる。

ライオンみたいな髪型した金髪の男子は教室に入るや、一時間目の授業から昼休みになるまでずっと寝てるし、女子はやたらギャルみたいなのが多い。

ギャルとかいうかコギャル

高校デビューとかそういう次元ではない。
小学校からデビューしてましたぐらいの貫禄がある。

指定の制服を着用する事になっていたのだが、そいつらのスカートが限界まで短い
1人ぐらいスカート履いてなかったんじゃないかとも思う。

恐らく受験が終わるまでは落ち着いていたのだろうが、受かったと分かるや否や全力を出したのだろう。

結構真面目だった俺は、入学するちょっと前に一応髪の毛をかなり短くしていた。

しかしヤツらに、入学直後はちょっと控えめに行こうとかそういうのはない。むしろ逆。
最初から100%、フルスロットル。

入学式でちらほら派手なヤツを見かけたが、明らかにこのクラスに集まってしまっている。


だが、一番気になったのが、後ろの席の男であった。

先生が一番前の席の人にプリントを配り、それを後ろの席に渡していく作業はみんな経験してきたと思う。

しかし、俺が後ろ席のヤツにプリントを配ろうとすると、そいつはそのプリントを全身全霊の力を込めて取るのだ。

そんなに力を込めてプリントを取って、一体誰が得するのかというぐらい力を込める。

その時の腕の振りは、真柴のフリッカージャブを連想させた。

それから毎回プリントを渡すたびに、紙で指を切ってしまうんじゃないかと不安になった俺は、プリントの先をチョンとつまむ感じで渡す方法にシフトした。

怒ってるのか何なのか分からないが、ここまで全力でプリントを取られると恐怖でしかない。

次はフリッカージャブが俺のテンプルに飛んでくるのではないかと、プリントが一番前の席の人に配られるたびに憂鬱になっていた。


また、そいつは授業中にやたらと消しゴムを落とすのだ。

しかもキン消し。(キン肉マン消しゴム)


使うのがもったいない上に文字が消えにくい」事で有名なあのキン消しを実戦で使ってるヤツを初めて見た俺は、度肝を抜かれる。

そいつが何度もキン消しを落とすため、俺の席の方にも結構転がってくるのだ。

転がってくる度に、さっきと違うキャラクターになったりしててちょっと笑いそうにもなったが、笑ってヤツの機嫌を損ねたらフリッカーが飛んでくるかもしれないと思い、耐えた。

(ヤバイクラスに入った上に、後ろの席に得体の知れないヤツがいる…色々大丈夫なのか)

とか思いながらそのキン消しを俺が拾って渡すと、聞こえるか聞こえないかぐらいの声でボソッと、

おうす

みたいな事を言って無表情で受け取るのだ。めっちゃ怖い。

そいつは、見た目が北斗の拳のラオウに似ていて、いかにも一匹狼という雰囲気を出していた。

ムダにガタイがいいし、常に眉間にシワ寄ってるし、プリント本気で取るし、キン消し使ってるしで色々怖かったので、コイツとは一生関わりたくないと思った。

クラスが決定した時にはもう、クラス変えはまだなのかという気持ちになっていた。

この時ばかりは、麻雀の事は頭から離れていた。


その日の午後、なんかの集会で新一年生が体育館に集められた。

出席番号順に並んでいたので、俺の後ろにはラオウがいた。

そこで、校長先生の話を寝そうになりながら聞いていた時だった。

急に後ろから凄い勢いで両肩を掴まれる。
ビックリして後ろを振り向くと、


「おいお前あれ見ろ!主に黄色だぞ!早くしろ!」


まともに会話すらした事もないのに、めちゃくちゃ興奮した様子で、ラオウが急に俺の肩を両手で揺さぶりながらこんな事を叫んできたのだ。

(な、なんだこの人…ヤバイぞ…)

肩を揺さぶられ、グラングランしながらも、そいつが指差してる方を向いてみた。
すると、思いっきり見えていたのだ。


体育座りしてた女子のパンツが。


そしてそのパンツの色が、主に黄色だったのだ。

ヤツはそれを発見し、興奮を抑えきれなかったのか、ほぼ初対面の俺にそれを報告してきたのだ。
詳しい色まで。

結構人見知りする俺でさえも、その時ばかりは無意識に叫んでいた。



「お前!でかしたぞ!」

気がつくと、俺らはその場で全力でハイタッチをしていた。(バカである)

ちょっと前まで一生関わりたくないと思ったヤツと、一瞬で親友になってしまったのだから人生何が起こるか分からない。

ラオウと仲良くなった後、色々話を聞いた。

俺「でもさすがにキン消し落としすぎじゃない?俺短時間に3回ぐらい拾ったんだけど」

ラオウ「隣の席の女子のパンツが見えるんだよ」

なんと、授業中にやたらキン消しを落としていたのは、それを拾う際に、隣の席の女子のパンツを見るためだった

この男、暇ありゃパンツを見ている

ラオウの隣の席には、ちっちゃくて清楚な感じの可愛らしい女子が座っていた。

その女子の足元付近にキン消しを落とす事で、それを拾いに行ったと見せかけてパンツを見ていたのだ。

俺の方に転がってきたキン消しは、言わばミスショット。数打ちゃ当たる戦法。

その女子はコギャル達の中にいると、その清楚さがさらに際立ち、たしかにパンツを見たくなる気持ちも分からなくはないのだが、何しろ行動が早い。

やろうと思った瞬間には、もう動き出してるタイプ。

そして、任務の遂行のためならどんな汚い手でも使う。

見た目はラオウだが、性格はジャギだった。

パンツが見たくなれば、そいつはその都度、隣の席の女子の足元を狙ってキン消しを落とした。

いい位置に飛ばなければ、数分後にまた落として何度もチャレンジする。

ヤツは眉間にシワを寄せながらも熱い表情で語る。


「アシュラマンが一番いい位置に飛ぶ。」

だんだんやかましいなと思い始めてきたので話題を変え、プリントの件についても聞いてみた。

俺「なんであんなに人殺す勢いでプリントとるの?毎回めっちゃ怖かったんだけど」

ラオウ「?」

ピンときていなかった。

なんとこれに関しては、あれが彼のデフォだったというのだ。どう考えてもおかしい。

つまりヤツからしてみれば、みんなフリッカーでプリントを取っている事になる。

ある意味パンツを覗く以上にヤバい。

パンツを覗く事に特化しすぎたせいで、他の部分が疎かになってしまったのだろうか。

今までコイツの前の席になったやつがかわいそうだと思った。


「孤高の変態ラオウ、その2」

その後、夏になり、水泳の授業が始まった。

高校生という事もあり、さすがに男女は別々に授業を受ける。

男子が水泳の時は、女子はバレー。
女子が水泳の時は、男子はサッカーといった感じだった。

俺は、プールに入ってしまえば楽しいのだが、着替えるのがめんどくさいのと、最初に入る瞬間めっちゃ冷たいのがイヤで、水泳の授業はあまり好きではなかった。

その水泳の授業は、基本はプール内で自由に遊ぶだけだったが、最後の水泳の授業の日は50メートルのタイムを測らなくてはいけなかった。

そして、その水泳の授業最終日に事件は起きた。

授業ギリギリの時間になり、プールに向かおうとした時、ラオウに止められた。

「今日の授業は受けない方がいい。保健室に行くぞ。」

訳もわからず、俺は保健室に連れて行かれた。

体調が悪いとか言ってプールに行かず、2人で保健室で休んだのだ。

ただ俺も、50メートルのタイム測るのは結構だるかったし、ラッキーぐらいな感じに思っていた。

すると授業終了後に、体育の先生が保健室に来て、

「君達は来週の放課後、プールで1時間補習だ。人が多いからタイムは測らなくていいぞ。」

と告げられた。

そして次の週、俺とラオウは補習のため放課後にプールへ向かった。

めんどくさい着替えを終え、プールサイドに到着すると、そこで信じられない光景を目の当たりにする。

プール内に、ウジャウジャいるのだ。



スク水のコギャル共が。



俺はまた叫んでいた。

「お前!謀ったな!」

プールサイドで2度目のハイタッチである。

ラオウはこれを狙っていた。

水泳の授業は補習授業のみ男女混合で受けるという有益な情報を、事前に先輩から聞いていたのだ。

しかも50メートルのタイムは測らなくていいという二度おいしい展開。

さらに、ラオウはなんとゴーグルを持参してきたのだ。しかも2つ。

今まで水泳の授業で、ラオウがゴーグルを付けている姿など一度も見たことがない。

だが用意してきたのだ。満を辞して2つ。

持つべきものは友である。

ラオウ「善は急げだ。」

俺らはすぐにゴーグルを装備し、飛び込んだ。

放課後で少し気温が下がっていたが、この時ばかりは最初に入る瞬間の冷たさは感じなかった。

そして、2人でひたすら潜った。

その時は火事場の馬鹿力の要領で、息を止める時間が一回の潜水につき10秒ほどプラスされていた。

人生でここまで息を止めた1時間は、この時以外ないだろう。


また、その頃になるとラオウは、キン消しを使わずにパンツを見る方法を習得していた。

隣の席の女子に直接、

パンツ見せて

と言って、ダイレクトにパンツを見るのである。無駄な過程はない方がいい。

俺はその現場を見て、シンプルイズベストとはこう言う事を言うのかと驚愕した。(驚愕しながら俺もパンツ見てた)

驚くのはそれだけではなく、パンツを見られた隣の席の女子が少し嫌がりつつも、まんざらでもない表情をしているのだ。(全員変態である)


「ラオウとの麻雀」

パンツの話でテンションが上がってしまい前置きが長くなりすぎたが、このラオウも中学生からちょこちょこ麻雀をしていたらしく、その内俺の家で一緒に打つようになった。

高校一年が終わる頃には、俺、ラオウ、ラオウの隣の席の女子、ライオンみたいな髪型の一番前の席の男子の4人で麻雀を打っていた。

なんでこの面子になったかは、さらにくだらない話がnote2話分ぐらい必要になるので省略する。
色々あってこうなった。カオスな面子。

ラオウは、特に戦術本を読んだりする訳ではなかったが、麻雀を打つ事で麻雀を覚え、鋭い鳴きを多用した。

また、深く考える訳ではなく、なんとなくでハイテイずらしや一発消し、形テン押し等を行っていた。

ジャギの性格が麻雀にも色濃く投影されている。

つまり彼は強かった。

もちろん、一緒に打ってる女子のパンツを定期的にチェックする事も欠かさない。

高校1年が終わり、クラス変えでバラバラになっても一緒に麻雀を打ち続けた。

俺は東風荘とリアル麻雀の繰り返しで、雀力は確実に上がっていった。

そして、ずっとフリー雀荘に行ってみたいと思っていた俺は、高校3年の終わりにラオウを連れ、初めてのフリー雀荘へと向かった。

駅の近くにある、明らかな場末の雀荘的な感じの所だったが、俺らはよく分からないのでとりあえず入った。

18歳超えてれば大丈夫でしょという軽い感じで入店するも、店員さんが、俺らが高校生っぽい事やあまりお金を持ってない事を察したのか、やんわりと卓に入る事を断られてしまった。

だがその後、飲み物を出してくれて、フリー雀荘がどんな所か軽く説明もしてくれた。
(今思うとめちゃくちゃいい店員さんであった。)

結局フリーデビューとはならなかった。

その後、高校を卒業した俺は仙台の大学に進学する。

ラオウとはバラバラになってしまったが、その後しばらくは定期的に連絡を取り、地元に帰ってくるたびにヤツと麻雀をしたり飲んだりした。

久々に集まるたびに、高校の思い出話で盛り上がっていた。(大体パンツの話)

しかし、その後ラオウが結婚(隣の席の女子と)してからは忙しくなったのか、ほとんど一緒に遊ぶ事がなくなってしまった。

かつてパンツを見るためだけに生きていたラオウは、なんだかんだで勝ち組になったのである。

やつは何かしたいと思ったら、それが正しいかどうかはさておき、後悔の無いよう、何でもすぐ行動に移す男であった。

死ぬ時は、我が生涯になんちゃらとかいって昇天するだろう。

一方で俺は大学進学をきっかけに、負け組のレベルをさらに上げることになる。

続く。

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