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マッドババアキャラバン第一部〜マッドマックス2の聖地へ〜

正月休みを利用して最強の仲間がやってきた。今こそ長年の夢を叶える時。2018年12月31日から2019年1月5日にかけて、3人は南半球真夏のオーストラリアで革ジャンを着込み、マッドマックス2の聖地を旅する。
第一部はキャラバンの旅立ちから、聖地ブロークンヒル到着まで。

※旅行の記録は、キャラバンの楽しい思い出を綴った三部作、そして有用な情報だけをまとめた旅行ガイド編に分かれています。オーストラリアにマッドマックス旅行を計画している方は、最後に投稿予定の旅行ガイド編まで、しばらくお待ちください。

登場人物

マッドババアキャラバン
核戦争による文明崩壊後の世界が大好きな3人組。核戦争文明崩壊繋がりでFalloutシリーズも愛しており、聖地巡礼にいそしむゲーマー。名前の由来は最初の旅行からであり、キャラバンカーで旅するわけではない。今回はマッドマックス聖地巡礼にあたって全員革ジャンとブーツ着用。

ゲチャン: 筆者。マッドマックスが好きすぎてメルボルン近郊に在住。治りかけの帯状疱疹で全身が痛く、その皮膚には未だ水疱瘡菌を宿している危険人物。車が好きで永遠に運転できる為ドライバー担当。

アケさん: 旅行にあたりモルモットのモル・オーガイをお母さんに預けており、家出た瞬間からオーガイロス。運が強くゴリ押しでトラブルを乗り越えることに定評がある。アメリカ史が大好き。

アルカリさん: 1番好きなマッドマックスはサンダードームという異常者。綿密なプランニングと適当な相槌で旅行を管理してくれる。飛行機のカードが強いことで有名。戦車が好きでこの前ロシアに行った。

夏だ!荒野だ!マッドマックスだ!
今回の旅の計画はこうだ。メルボルン空港に集合し、途中にある街を経由し塩の湖を越えて車でひたすら走り続けマッドマックス2のロケ地を目指す。マッドマックス2のロケ地があるブロークンヒルとシルバートンはメルボルン市街から車で900キロも離れた砂漠のど真ん中のとんでもない僻地にあり、容易にはアクセスできない。
ブロークンヒルには小さな空港があり、各都市から飛行機で飛ぶと早いがマイナー航路なので基本的にチケットは高額。ちなみにオーストラリアの都市の中ではアデレードからアクセスするのが一番近く、陸路でも6時間ほどで到着できる。
ではなぜわざわざメルボルンに集合なのか?そんなのはメルボルンが初代マッドマックスの聖地だからに決まっている。一度の旅で1と2を同時に制するのだ。アルカリさんの愛するサンダードームの聖地には今回行けない。ごめんな。

1日目朝

12月31日朝。メルボルン空港にて集合。天気も良く、愉快な旅を予感させる。今日の最初の仕事は買い出しだ。なにせ我々がこれから向かうのはアウトバックと呼ばれる真っ赤な荒野。マッドマックス2をイメージすればわかる通り、快適な街を離れてしまえば水や食料の保証はない。
空港から車で20分ぐらいのところにあるサンベリーという町に立ち寄り、地元のスーパーで物資を買い込む。おすすめは大手スーパーColesやWoolworsだ。年末だろうが年始だろうが田舎だろうが夜だろうがだいたい開店しており、値段も良心的なのである。オーストラリアでは多くの飲食店が4時や5時で閉まる上、小さな商店は土日開いてないなんてことが多い。祝日なんかはスーパーも閉まるので特に注意が必要だ。
15リットルの水、トランクの高温に耐えるスナック、カップ麺、栄養補給のリンゴやトマト……。そしてもちろんガソリンだ。オシャレ女子のオシャレ海外旅行という感じがしてくる。好天に恵まれ早くも気温は上がってきたが、買い出しの時点で既に全員革ジャンを着用している。

俺がバカに見えるのか

さてこのサンベリーの近くには1つめの聖地があるので立ち寄ってみる。初代マッドマックスのクライマックスシーンが撮影された橋だ。映画のままの風景に興奮する3人。早速路肩に車を停め、マックスやジョニーになりきってあの名台詞「俺がバカに見えるのか!?」を連発。当然誰がどう見てもバカである。

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ちなみに後から聞いて知ったのだが、この場所は自動車専用道路なので路肩に車を停めて外に出て遊んだりしてはいけない。ある関係者の方はおまわりさんに見つかって罰金を払ったそうだし、危険なのであんまり真似しないでください。

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クルーンズ

次はお気に入りの町クルーンズに立ち寄る。日曜日でも開いているオシャレなカフェ、ビジターセンターに小さな博物館、トイレも完備されているのでドライブの休憩にはうってつけだ。クルーンズは初代マッドマックスの聖地であり、トーカッターギャングたちが大集合したあの街並みが今も残っている。クルーンズ駅は改装されてずいぶん綺麗になってしまったが、ナイトライダーの棺が届くシーンが撮影された場所なのだ。

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クルーンズを過ぎると本格的に東オーストラリアの田舎道の雰囲気が漂い始め、ここからしばらく大きな町はない。この辺りの道路はまだマッドマックス2というよりは1の印象が強く、視界は農地と林と牧草地が広がる緑の大地だ。

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今日の最終目的地はメルボルンとブロークンヒルのちょうど中間あたりに位置するミルデュラという街になるが、その前にもう1か所立ち寄るところがある。

塩の湖

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ここはレイク ティレル (Lake Tyrrell)と呼ばれる塩湖。撮影地とは直接関係ないが、塩の湖でマッドマックスといえば怒りのデスロード、見ておかない手はない。場所が場所なだけあって、ガイドブックには載っていない、なかなか穴場の観光スポットだ。Googleなどで試しに写真を検索してみてほしい。時間帯によってはオシャレでインスタ映えする写真が撮れるスポットに違いない。

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塩湖の表面に固まった塩を食っている奴がいる。山賊のアケさんだ。彼女は地面に落ちている全てのものに触る習性があり、変なものを口に入れることも多い。しかし彼女の「グラタンのはじっこみたいでおいしそう」との言葉に、私とアルカリさんの2人も「そうだな」と納得していた。グラタンの端っこは大量の発汗で塩分が不足しているであろう我々の体に染み渡った。塩は地面から染み出た鉄分とかも入っていそうな風味でおいしかった。大丈夫かよ。

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ハエがすごい。オーストラリアの田舎や農地、荒野にはハエがたくさんいるが、夏の塩湖は記録的だ。人生でこんなに多くのハエにたかられたことはなかったと思う。塩湖でなくても窓を開けて走ると車の中はハエだらけになる。荒野に車を停めて乗り込む時など、車の中にハエが入ってきてしまったら、諦めて窓を全開にして自然と一体化するか、または窓をほんの少しだけ開けて走ることで少しずつ追い出すことができる。

塩湖で雄大な自然を体感した後は、車に乗り込んだハエとともに一路ミルデュラを目指す。ミルデュラはアウトバックに向かう途中にある比較的大きな街で、農業やワインの生産が盛んな地域の拠点である。ここなら満足な補給と安全な宿泊が期待できる。

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2018年の大晦日はこの静かな街で過ごすことになった。今頃メルボルンやシドニーでは、年越しの花火が上がって盛り上がっていることだろう。モーテルの部屋のテレビをつけると、各都市の年越しの様子が中継されており、オーストラリア版のゆく年くる年みたいだ。疲れのあまり何度も意識不明になりながら、2人が日本から持ってきてくれたカップ蕎麦にお湯を注いで食べた。

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耳を澄ませば、なにやら外から花火の音が聞こえてくる。静かだと思っていたら、このミルデュラでも新年の花火があったのだ。最後の力を振り絞って音のする方向へ車を走らせると、やがて花火が見えてきた。駅前の公園には結構多くの人が集まり、花火を見ながら新年を祝っていた。

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2日目朝、ミルデュラ

1月1日。2019年の幕開けはオーストラリアの田舎街から。夏の日差しが降り注ぐ爽やかな朝。こんな日の朝食は当然、芝生でピクニックが1番だ。
街を少し散策してから昨夜花火を見た駅前の公園に落ち着き、持っている全ての食料を広げる。昨日塩湖で拾っていた地面の塩を持ってきたやつがいるらしい。普通の人間は地面の一部など食わないのでもちろん普通は食ったりしないが……。
長距離列車と長距離バスが発着する拠点ミルデュラ駅も、新年の朝は静かなようだった。

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アウトバックへの道

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ミルデュラを過ぎると、いよいよ風景はマッドマックス2の雰囲気になってくる。目に入る木や植物はまばらになり、いかにもオーストラリアらしい赤土の大地が広がり始める。荒野の一本道は250キロ先まで道なり。点在するカンガルー飛び出し注意の標識は、ここから100キロ200キロ先までもはや人間のテリトリーではないことを示している。

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動物の死骸をつついているのがいる。アケさんだ。オーストラリアという国は人間よりもカンガルーの生息数が多いと言われており、その多くはこうした荒野に住んでいるが、日差しの強い時間帯にはあまり活動しないため日中見かけるのは生きているものよりも死んだものが大半である。カンガルー飛び出しに注意すべきは明け方、夕方、そして夜間だ。彼らは車のヘッドライトに引き寄せられて道路に飛び込んでくるので、明るくなれば見飽きるほどの死んだカンガルーを目にすることになる。新鮮なカンガルーの死骸を観察していると、死んだ生き物って本当にマンガみたいに目が×印に見えるんだな、ということが分かってくる。
車にはねられたカンガルーたちは路肩に寄せられ、乾いた地面の上で白骨化してゆく。人里を遠く離れた大地の上で、アケさんは生命の営みを感じ取っているのだろうか。

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カンガルーのほかによく出現する動物といえば鳥だ。それも日本では野生で見かけることのない、カラフルなオウムやインコの仲間がたくさん生息している。このピンクの鳥は地元ではガラーと呼ばれる。ちなみにオーストラリアではこのような鳥たちも車に轢かれている。野生動物の事故は、交通安全と野生動物保護の両方の観点から社会問題になっている。

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アウトバックへと向かう一本道には珍しい野生動物のほか、赤かった地面の色が突然真っ白になる干上がった湖などもあり、意外と見るところが多く楽しめる。

ムンディムンディの丘

一行は明るいうちに目的地ブロークンヒルに到着した。宿で少し休憩した後、もうひと頑張り。シルバートンの先にあるムンディ・ムンディ・ルックアウトへ夕日を見に行く。デカすぎるオセアニア大陸の地図上ではブロークンヒルのすぐ近くにあるように見えるが、車で走ると意外と遠く、30分ぐらいかかる。しかしながらここまで900キロ近く走行してくると、30キロなどという距離は目と鼻の先に感じる。

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このムンディムンディの丘こそ、まさにマッドマックス2の冒頭シーンが撮影された地である。美しい夕日が見えるスポットとしても有名で、この日の絶景ポイントはトラックに乗った元気な親父や酒盛りを始める若者集団で賑わっていた。太陽に焼かれた地面は夕暮れを前にしてもまだ熱く、砂漠には熱風が吹いている。真っ赤な地平線に沈む夕日は幻想的で、オーストラリアのアウトバックを象徴するような風景だった。

鬱病のカンガルー

日が沈み、車に乗り込んで、モーテルへ向かって元来た道を引き返す。が、ここでは大きな問題があった。カンガルーである。前述の通り、カンガルーは太陽が沈んで涼しくなると平らな大地のどこからともなくノソノソと湧き出してくる。そして、おもむろに路肩に立ちあがり、胸の前に両手をそろえて通過する車両を観察し始める。その表情、虚無。彼らのどこか憂鬱そうな顔を見ていると、こちらまで不安に襲われるようだ。
その不安はすぐに的中する。念のため彼らを意識して昼間よりもスピードを落として走行するが、カンガルーたちはヘッドライトに反応し、車の横っ腹めがけて飛び込んでくるのだ。憂鬱のあまり自殺を試みるカンガルーの想像が頭をよぎる。

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余談だが、私はアデレード地域のカンガルー多発地帯を夜中にひとりで走り抜けたことがある。もはやナイトズーか、オープンレンジサファリパークのような状態だった。いつ動物が飛び出してくるかわからない道路というのは、走っていて生きた心地がしない。カンガルー飛び出し注意の標識があるエリアは、明るいうちに通り過ぎることを心がけるべきである。

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↑アカカンガルーは、おおざっぱにいうと、グーグルアースで見て地面が赤くなっている部分に生息している。ちなみに赤いのはオスだ。

なんとか無事にブロークンヒルまでたどり着き、この夜はモーテルでマッドマックス2を見た。翌日見に行く聖地の確認のつもりだったが、面白すぎて結局全部見てしまった。

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↑3人のお気に入りのシーン。

次回予告

マッドババアキャラバン第二部は、荒野のマッドミュージアム!ブロークンヒルに辿り着いたババアキャラバンは、砂漠の真ん中にブッ立てられた狂気のマッドマックスミュージアムを訪問。伝説のマッドオヤジが遂に登場!?乞うご期待。


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