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なぜオーストラリアに行くことになったのか

映画や車が好きだった。父はバイク乗りで、子供のころはよく一緒に映画を見た。大人になったある日ネット上で見かけた一枚の写真をきっかけに、世界にはマッドマックスファンが集まる世紀末なイベントがあることを知る。マッドマックス2みたいな荒野が日本の外にはあるのか……。イージーライダーとかも好きで平らな一本道みたいなものに憧れがあった。マッドマックスや北斗の拳を再読したり世紀末ゲームをやったりして、世紀末にハマり、友達もできた。マッドマックス新作公開のうわさも出たり消えたりしていた。(新作は現実になり、怒りのデスロードとなった)

年末年始に近所のホテルでバイトをしていると、同じくバイトに来ていた同い年の青年に出会って意気投合。彼はもうすぐオーストラリアに行くらしく、話を聞いていると年齢さえ若ければオーストラリアには案外簡単に住めることがわかる。オーストラリアってマッドマックスじゃん。いつか行こうと思ってたし、せっかくだから住もう。数年後の2018年、本当に住むことに……。場所はマッドマックスということでメルボルンにした。とはいえマッドマックスにはこだわらず、英語の勉強や海外での就労経験などを得ていこうという事になった。

メルボルンに着いてみると思ったよりマッドマックスの気配がない。メルボルンの映像博物館にインターセプターのレプリカが展示してあるぐらいで、情報が得られそうなところもない。メルボルンの大きなコミコンに行ってみるも、マッドマックス関連のものは皆無。
時間がある日はメルボルンの聖地を訪れてみるが、現地にいるのにインターネットしか情報源がなかった。これはまずい。フェイスブックやTwitterは信用していなかったし、海外に住んでいることがバレると海外イキリ呼ばわりされて虐められるかもしれないので沈黙を貫いた。
インターネットを見ていると、今まで何度も何度も見ていたメルボルン聖地巡礼のブログがあった。マッドマックスのイベントを日本で企画したり、怪しいグッズを販売しているマクラウドのシラトモさんという人で、ホームページに連絡先が載っている。きっと1番詳しい日本人に違いない。というわけでさっそく少々様子のおかしいメールを送った。「メルボルンに来たのでマッドマックスゆかりの地やイベントなどを見てみたいが、情報がなさすぎるので助けて」みたいなことを丁寧に書いた。
メールはすぐに返信があった。今まで曖昧だった現地の情報を細かく教えてくださり、さらに来年はマッドマックス1の40周年記念なのでメルボルン近郊で大きなイベントがあるということも案内してくれた。
最初にゲットしたワーキングホリデービザは1年。しかし盛り上がるのは来年ということがわかった。オーストラリアでは僻地で3ヶ月間奴隷労働(?)するとビザを1年伸ばせる制度があったので、それも視野に入れなくてはならない。

オーストラリアは日本に車を輸出しないので日本では見られない珍しい車がたくさんあり、景気が良いのでフェラーリやランボルギーニのようなすごいスーパーカーがそこら辺を走っている。また、日本から近いので日本の昔のスポーツカーもかなり多い。私はイニシャルDや湾岸も大好きなので、会う人全員に車の話をして情報を広げつつチューニングショップや車のイベントに出入りした。大小様様なモーターショーでは、必ず何台かインターセプターのレプリカが展示されていることも発見した。

最初にホームステイした地元の家族のお父さんはフォード・ファルコンを持っており、私が車大好きなのを知るとわざわざ離れたガレージから出してきて乗せてくれた。日曜日に教会に行くとドーナツを無料で食えるしXCファルコンでドライブできるので、毎週ついて行った。

マクラウドさんからの連絡で、40周年記念イベントは現地ガイドとして連れて行っていただける事になった。日本からファンが大勢参加するので、ちょっとしたツアーみたいになるとのことだった。

英語の学校に行ったりカフェとかでバイトをしていたが、2年目のビザを取るために農場で労働する事に……。しかしアクセス優先で選んだ為ロクでもない農場を引き当ててしまい、4ヶ月近くロクな給料が出ないタコ部屋奴隷労働に……。人生で最悪の4ヶ月となって病気になったりガリガリに痩せた。

2019年になるとマッドマックス40周年ということで、去年までマッドのマの字もなかったメルボルンでついにマッドマックスが盛り上がり始める。

1月には友達のマッドババアキャラバンが来豪、夢だったマッドマックス2の聖地ブロークンヒルへのロードトリップを果たす。

2月にはマクラウドさんツアーが来豪。40周年イベントに同行する。このツアーでメルボルンに住むスタントライダーのデイルベンチ氏とのご縁が繋がり、以降何度もお会いする事に。

3月にはメルボルンにあるIMAXシアターでマッドマックス怒りのデスロード特別上映。この頃には晴れて2年目のビザを手にし、毎日車を運転できて給料が良く土日が休みの職に就く。この土日休みのおかげで全てのイベントに参加可能になった。

4月にはサイエンスワークスで初代マッドマックス特別上映。
5月にはドライブイン上映と、ドーナツバイクのイベント。
8月にはホワイトナイトのマッドマックスショー。
9月のコミコンではデイル氏とナイトライダーのヴィンス氏を手伝って、マッドマックスブースのスタッフとして参加する栄誉に与った。

11月、2019年も終わりに近づいた頃、40周年の集大成のような大きなマッドマックスコンベンションが日本で開かれた。主催はもちろん、あのマクラウドさんだ。オーストラリアで出会った多くの関係者の方が日本に招かれた。私はちょうどその頃オーストラリアを離れ、別の国に来て新たな文化を学んでいた。日本のイベントには参加できなかったのだ。

オーストラリアに渡り、最初はただ、ロケ地や車が見られたらラッキーぐらいに考えていた普通のファンでしかなかった私が、多くの方の助けによって本当に貴重な経験をすることができた。まさか自分が、近所に住んでるナイトライダーと飯を食いに行くようになるとは、想像もしていなかった。日本のファンの方々には車やバイクのプロフェッショナルがたくさんいた。オーストラリアに来る前よりもマッドマックスが大好きになった。

というわけで、特にご縁をつないでくださった日本のマクラウドさん、メルボルンのデイルさんには感謝してもし足りません。
せっかくいろいろやったので、何か残そうと思い、イベントごとにブログを書いています。日本語の現地情報として誰かに楽しんで頂けたら喜ばしいことです。

唯野ゲチャン


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