20世紀の「運命交響曲」演奏史

 交響曲の代名詞、ベートーヴェンの第5番「運命」。初演当時、多くの聴衆がこの作品をすぐには理解できなかった。理由はいくつかある。聴き手はたった4音の動機と、それがしつこく使い続けられることに驚いた。50小節に及ぶティンパニの同音連打の後におとずれる第4楽章冒頭の響きにも、耳を疑った。当時は教会音楽か劇音楽でしか使われなかったトロンボーンが、高らかに響いたからだ。

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