"名探偵" モーツァルトのミゼレーレ伝説

 モーツァルトは1770年4月11日、ローマにいた。前年の12月、父親とともにイタリアへの楽旅に出発。ヴェローナ、ミラノ、フィレンツェを経て春先、“永遠の都”にたどりつく。この地のシスティーナ礼拝堂でモーツァルトは、アレグリの合唱曲「ミゼレーレ」を聴いた。アレグリは17世紀、この礼拝堂で活躍した歌手で作曲家。この作品は年に3日、ここでしか聴けない秘曲だ。当時、「ミゼレーレ」の楽譜の持ち出しは固く禁じられていた。14歳のモーツァルトは、この曲をいちど耳にしただけでおぼえ、宿で楽譜に書き起こす。後日、それも持って礼拝堂を再び訪れ、秘曲の再演時に楽譜の誤りを確かめ、宿でそれを修正したという。

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