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微積分法と親指奏法 ― クープランとバッハ

 「火事と喧嘩は江戸の華」と言う。だからといって江戸っ子が「火事や喧嘩」のたびに大喜びしていたわけではない。火事も嫌だし喧嘩もしたくない。しかし、17世紀初頭には100万人を越えたとされる大都市・江戸では、ひしめく木造家屋が焼け、行き交う人々がいさかいを起こすのは避け難いことだった。避け難いことだからこそ、自戒を込めて「火事好き」「喧嘩好き」と喧伝した。「華」といって強がってみせた。

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