「交響曲で我慢」から「交響曲最高!」へ ― ハイドンの《朝》《昼》《夕》

「交響曲で我慢」

 交響曲の起源と発展についてはこれまで、いろいろとかまびすしく議論されてきた。その多くは、スタイルや形式の類似性から「前交響曲」と言えるジャンルを洗い出し、その作者たちにスポットを当てる、といった手順を取った。そういった研究は貴重で、聴き手に新たな「耳」、新たな「思考回路」を与えてくれる。しかし、そういった研究をいくら重ねても、当時、交響曲を聴いた人々にとって当の交響曲がどういった意義を持っていたか、という点は明らかにならない。これには別建ての研究が必要になる。

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