銀翼のハヤブサ3:デカールの声を聞く
「デカールと話せる」なんて、ついに頭がおかしくなったか近寄らんとこ... と思われるかもしれないが、実はできる。
というか、熟練の職人さんなら「モノと会話できて一人前」と思っている人が多いんじゃないだろうか?
デカール用品にも色々あるけど、凹凸に沿って柔らかくするならマークソフター、セッターには糊が含まれていて、蒸しタオルや半田コテで温めた綿棒を使えば便利そうだ云々。模型専門誌からの耳学問で知識はあるけど、実際に自ら試して身についているモデラーはそう多くないように思う。
たとえばこの画像のように、筋彫りや凹リベットにデカールを馴染ませる。簡単そうに思えて実は難しい。いや、難しそうだと思って軟化剤やら綿棒やら使いまくって躍起になるから、柔らかくなった日の丸がビヨーンと歪んで楕円になるなんて悲しい事故が起こる。
何度も繰り返して痛い目に遭っているうち、「ああ、こうすれば上手くいくじゃん!」と正解のセオリーに気がつく。それは偶然か、はたまたネットや雑誌から情報を得たものか、あるいは師匠や仲間からの助言によるものか、きっかけは様々だろう。
それは『簡単』だが、難しいと思い込むがゆえに『難しい』
じつはそんなに頑張らずとも、適量の軟化剤を隙間に流して半日待つだけでデカールは馴染み、地の塗膜と一体化して多少ひっかいたぐらいでは剥がれなくなる。もちろん量が多すぎれば周囲の塗膜まで侵されてシミが残り、メーカーによってはフィルムが溶けてしまうこともある。
「あのう、過敏体質なので少しだけ水で薄めてもらえると助かります」とか「ご覧のとおり小さくて流されやすいもので、量は控えめでお願いします」とか「そろそろ柔らかくなってきたよ、気泡を押し出すならこのタイミング!」とか、状況を注意深く観察して、デカールが発している『声』を聞き、それぞれの段階で最善手を打てば、あとは自然に収まるところに収まってくれる。
世に名工と謳われる職人のように、熟練した料理人のように、すべきことをベストのタイミングで力まずにやる。己の力を過信しない。素材のちから、マテリアルの力を信じて活かす。こんなちっぽけな模型からでも学ぶことは多い。
なんか柄にもなく難しいことを書いて力尽きてしまったので、残りのキャプションは簡単に
フラップやラダーなど動翼部分は、マスキングしてつや消しクリアーを混ぜたグレーで塗り分け。
キャノピーは青空の色を吸い込んだと仮定し、クリアーブルーを少々混ぜて塗装。別パーツになっている枠の接着は、セメダインのハイグレード模型用が便利だ。
接着力が弱いと思われがちだが、じつはかなり強力なので、色々なところに使える。水で薄めて筆塗りもできるし、ちょっとしたはみ出しも拭き取れる。放置しても乾けばほとんど目立たない。
デカールに付いてきた増槽パーツもせっかくなので使わせて頂こう。取り付け位置はそれらしいモールドがあった箇所に、0.7mmの穴を開けた。
茶色く塗った排気管を所定のスペースに接着しようとしたが、意外と入りにくく、あちこち削って調整する必要あり。取説のタイミングに従うべきだった。
主脚の取り付けはかなりグラつき、ピタッとは決まらない。接着面積も限られているので、流し込みタイプの接着剤をダボと穴の両方に塗ってよく溶かし、ガラス板の上で角度を決めたら1日放置してしっかりと固めた。
左翼に差し込むピトー管は、真鍮パイプを入れ子にしたもので置き換え。直径は0.4と0.6mmで半田メッキで銀色に仕上げた。
ヘッドレストの本体とパッドの枠を追加しようと洋白線を曲げたが、後部キャノピーを付けたら全く見えなくなった。
アンテナは手持ちの金属線がミニマム0.08mmで少し太いなぁと思い、自分の髪の毛を測ったら0.06でちょうどよかったので採用。わずかにテンションをかけながら黒パンチで接着し、ニッパーで余分を切り取った。
以上、長々とお読み頂きありがとうございました。他の完成写真はブログのほうでご覧ください。