【マンション建替え説明会で確認しなければいけないポイントは】
老朽化したマンションを建替える手法には、建物を取り壊して更地にして売却する「敷地売却方式」と組合員が自ら事業を行う「自主建て替え方式」のほかに、デベロッパーと共同で事業を行う「等価交換方式」と「権利変換方式」の4方式があります。その内の「敷地売却方式」と「権利変換方式」は、「マンション建替円滑化法」によって、事業を行うには組合員の5分の4以上の賛成が必要と定められています。
「敷地売却方式」では建替えで生まれるはずの「開発利益」は全て土地を買ったデベロッパーが取得します。「自主建替え方式」で建替えたなら、「開発利益」は全て組合員が取得して、全員で平等に分けられます。
「等価交換方式」と「権利変換方式」は、組合員とデベロッパーが共同事業を行う方式です。「権利変換方式」では事業の実施に先立って、開発利益の配分比率を協議して、合意した上で事業を実施します。「建替え決議」が合意の意思表示であって、この決議には法的拘束力が伴います。
「等価交換方式」での開発利益の配分は、組合員の持ち分(現在の建物の資産価額)とデベロッパーの持ち分(事業に要する投資額)との出資比率で行われますが、(現在の建物の資産価額)には建替によって実現する「開発利益」がほとんど盛り込まれませんから、デベロッパーに多くの「開発利益」が配分されます。
その配分を調節できる方式が「権利変換方式」です。建替後に一般市場で販売する床の価格(保留床価格)より低額の、組合員が先行取得する床の価格(権利床価格)を設定することによって、「開発利益」の一部を組合員に還元する方式です。二つの床価格の差が大きければ、その分だけ組合員への「開発利益」の配分が大きくなって、デベロッパーの利益がその分だけ小さくなります。
「建替え説明会」でこのようなことが、きちんと説明されているでしょうか。その説明をきちんと行うのには、事業に必要な資金計画と事業によって得られる収益計画を明らかにして、建替事業に係る「損益計算書」を作成しなければなりません。そして、その事業における組合員とデベロッパーの「利益配分比」も明らかに示したうえで、区分所有床の「還元率」を示さなければいけません。それが示されなければ建替え事業に賛成か反対か判断などできるわけがありません。
建築工事費が高騰中なので、デベロッパーとしても高い「還元率」を保証出来ないという事情はあるでしょう。しかしそれならば猶更「損益計算書」と「利益配分資料」をきちんと作成して、事業リスクの大きさとその影響の程度も明確に説明したうえで、賛否を判断してもらうのが良いでしょう。工事費が予想以上に上昇したり、従後建物の販売床単価(保留床単価)の大幅な変動があったりしたときは、双方が誠意をもって合意契約を、見直すことにしておけば良いのですから。
(注)還元率の計算は、組合員に全く資金負担が無い状態で(仮住まい補償も完全におこなわれた状態)で事業が実施されたときに取得できる、「建替え後マンションの専有面積」÷「建替え前マンションの専有面積」でなければいけません。建替え計画に「仮住まい補償」が無くて、各組合員の自己負担という条件で事業が行われると、還元率がその分高い数字で示されてしまいます。
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