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【ニュース紹介】エンダウメント運用にも迫る、物価上昇

 物価上昇の影響は、最近ではニュースや新聞記事で見かけない日はないほどで、その影響の広範囲さ・深度は推して知るべしですが、もちろん運用の世界も無縁ではありません。 運用目的によって考え方が異なる部分はありますが、運用にも様々なコストがかかり、それらのコストも物価上昇の圧力を受けています。例えば投資信託の場合ですと、購入時手数料・信託報酬・売買委託手数料などがこれに当たりますが、これら手数料によって人件費・システム・取引手数料・資料や報告書作成など投資信託の運用や販売にかかる全ての業務の対価が賄われています。また、そもそも運用成績が物価上昇に満たないと、資産価値は物価上昇に対して実質的に目減りしていることになり、これを機会コストと言います。 運用の成果はこういったコストに打ち勝つ必要がありますが、物価上昇によって運用に求められるハードルも上がっています。

 こちらの記事では、アメリカのエンダウメント(大学基金)におけるそうした最新の運用の状況が紹介されています。



(※上記リンクは、Bell Mediaのサイトへ移動します。)
(出典:Bell Media)

 エンダウメントとは大学基金のことで、主に卒業生などからの寄付金を元手に運用を行い、授業料や助成金に加えて運用益によっても大学の運営や研究費用を賄っています。 記事によれば、エンダウメント全体では2023年6月までの直近1年間のリターンは8.7%で、前年は-10.2%だったのでアップダウンは大きいものの、この10年間では年率6.1%のリターンだったとのことです。 一方で、6月に消費者物価指数は前年比+3%でしたが、Higer Education Price Index(高等教育のコスト価格指数)は同期間で+4.5%と、前年より鈍化したものの大学運営にかかる物価の上昇は一般より大きかったことが分かります。 これらインフレや大学運営にかかる支出をカバーするのに必要な運用リターンは、2023年は8.2%となり、2019年の7%から上昇しています。

 アメリカの大学といえば近年学費の高騰が続き、大学卒業までにかかる学費のローンに苦しむ人の増加が社会問題化していますが、運用成績いかんによってはさらに学費に影響を及ぼすこともあるでしょう。

 物価上昇のもとでは、運用成果に求める目線も上げていかないといけない、というお話でした。