東海地区大学野球静岡リーグ 静岡産業大学対日大国際関係学部一回戦観戦記
5月8日、静岡県の東海大松前球場へ東海地区大学野球静岡リーグの観戦に行きました。
この日の第1試合は静岡産業大学対日大国際関係学部だったのですが静岡産業大学の武藤投手が10.1イニングを投げて被安打、自責点共に0ながら敗戦投手になるという珍しい出来事が起きました。
スポーツ紙や静岡新聞でも記事になっていたのですが、せっかく現地でこの試合を見ていたので思い出せる範囲で綴っていこうと思います。
優勝を争う2校と2人の投手
この試合が始まる前の時点で首位日大国際関係学部は11勝1敗、これを2位静岡産業大学が10勝2敗で追うという状況でした。静岡産業大学が逆転優勝するにはこのカードで2連勝するしかありません。
もう1敗もできない静岡産業大学は武藤一輝投手(4年・加藤学園)を先発に立てます。開幕当初は2回戦での先発が続いていましたが好投を続け5週目からは1回戦の先発を任されました。
1勝すれば優勝という日大国際関係学部の先発は大石亮人投手(4年・報徳学園)。今季負けが付いたのは5月3日の東海大学海洋学部戦のみ、4月3日の静岡理工科大学戦ではノーヒットノーラン達成という絶対的エースです。
優勝のかかった大一番でエース同士の投げ合いなんて期待するなという方が無理というもの。予習は両投手の防御率をチェックした程度ですが試合前からわくわくしてきました。これだけでもう朝3時起きした甲斐があったってもんです。
武藤一輝投手
さて、静岡産業大学の武藤投手。立ち上がりから三振と内野ゴロの山を築き、5回まで一人のランナーを出さないピッチングを見せます。6回にツーアウトから四球で初めてのランナーを許しますが後続を三振に切って取ると7回、8回は共に打者3人で終わらせます。松前球場のバックスクリーンは得点表示のみでヒット数は表示されないのですが、さすがにここまで来ると客席もざわつき始めます。9回にはこの日2人目となるランナーを四球で出すとバントで二塁に進められ一打出ればサヨナラのピンチを迎えますが、ここもセカンドゴロで切り抜け武藤投手はヒットを打たれないまま9回を投げ抜きます。奪った三振は12を数え、外野まで飛ばされたのも2回だけという完璧なピッチングでした。
大石亮人投手
一方の日大国際関係学部の大石投手。初回にストライクゾーンを捉えきれない場面が目立ちスリーボールまで行ってしまうこともありましたが(序盤、マウンドに違和感を覚えていたみたいなのでそのせいかもしれません)、2回以降はテンポ良く投げて静岡産業大学打線を淡々と抑えていきます。5回に一死一二塁のピンチをピッチャーゴロのゲッツーで凌ぐと6回以降は完全に波に乗り、許したランナーは2人のみ。無安打ピッチングの武藤投手に負けない素晴らしいピッチングで9回零封、試合はスコアレスのまま延長に突入します。
9回終了、タイブレークへ
今まで何度もノーヒットノーラン未遂に立ち会いながらノーヒットノーラン達成には立ち会えていない私。武藤投手のノーヒットノーラン達成を見たい気持ちもありましたが、大石投手に失点する気配が全く無かったので正直記録の達成は厳しいというか…延長も続投してヒットを打たれるパターンのような気がするなあ、と思いながら9回終了後のグラウンド整備を眺めていました。記録達成よりもこの2人の投げ合いでどうやったら決着が付くのかが予想できなかったのでそっちの方に興味を持ちながらスコアを付けていたことを覚えています。
延長10回からは無死一二塁継続打順のタイブレーク方式で試合は進みます。あ、ここまで書いてなかったですが先攻が静岡産業大学、後攻が日大国際関係学部です(超今更)(構成力仕事しろ)。
10回表。大石投手は先頭打者のバント処理の際の一塁送球が逸れてしまい無死満塁のピンチを迎えます。しかし続く8番大崎選手を三振、9番袴田選手を一塁ファールフライ、1番谷川選手をセンターフライに仕留め静岡産業大学にホームを踏ませません。
10回裏。3番客野選手がバントでランナーを進めると武藤大崎バッテリーは4番服部選手との勝負を避けることを選択、申告敬遠で一死満塁にすると5番赤羽渉選手の代打野口選手をセカンドライナーで打ち取り更に飛び出した二塁走者の長沼選手もアウトにして被安打0を継続したままこちらも無失点で切り抜けます。
11回表。先頭の2番望月選手への2球目に二塁走者の袴田選手が飛び出してしまいキャッチャー牽制でタッチアウトに、その直後に一塁走者の谷川選手が今度は大石投手の牽制球に刺されタッチアウトになってしまいタイブレークのランナーがいなくなってしまいました。打席の望月選手もライトフライに倒れ静岡産業大学はこの回も無得点。個人的にはここで試合が動き始めたように感じました。
11回裏。6番大坪選手の送りバントを処理した武藤投手は三塁へ送球しますがこれがセーフとなってしまい無死満塁にしてしまいます。11回表から続く静岡産業大学のミスの連鎖。どうにも嫌な感じに思えてきてしまいました。
続く7番原選手。2球目でスクイズを仕掛けますが投球はウェストまではいかないものの外に外れるボール球。原選手は懸命に体を伸ばしてバットに当てファールにします。そして3球目、ストライクゾーンに入ってきたアウトコースのボールを原選手は捉えます。上がった打球はレフトへ。角度があまり付いていなかったこともあってかレフトの都築選手は後退しながら捕球、この体制を見た三塁走者の服部選手はホームへ突っ込みます。静岡産業大学もレフト→ショート→キャッチャーの素晴らしい中継を見せますが球審の手は大きく横に広がり、この瞬間日大国際関係学部の春季リーグ優勝が決まりました。静岡産業大学の武藤投手はゲームセットの瞬間までヒットを許すことなく、サヨナラのホームインもタイブレークのランナーだったため自責点も付かないまま敗戦投手になってしまいました。
あとがき
もう一敗もできないという状況、時折ランナーを許しながらも崩れることなくホームを踏ませない大石投手の好投、そして武藤投手のノーヒットピッチングが静岡産業大学にとってプレッシャーとなって延長11回のミスに繋がり、綻びが出た。個人的には勝負の分け目はここらへんかなあという気がしました。
…なんて偉そうなことを言いましたがそもそも延長10回までお互いがっぷり四つでゼロを並べ続けたことがこの試合のクオリティを物語っているわけで最後にミスが出たからと言ってそれらが全部吹っ飛ぶとは思いません。いつかどこかで綻びは出るもの、それが勝負事です。
noteの観戦記を見てもらえば分かる通り、ロースコアのゲームや投手戦が好きな私にとってこの試合は本当に私好み。言うまでもなく今年のベストゲームノミネートです。素晴らしい試合をありがとうございました。
おしまい
余談
武藤投手と大石投手の壮絶な投げ合い、そして優勝決定を見て私はどこか心ここに有らず状態になってしまいました。
そんな中、始まった第2試合の静岡大学対東海大学海洋学部。静岡大学打線が東海大学海洋学部のエース翠尾投手を初回から攻め5回終了時点で7点差を付け7回コールド圏内に持っていきます。静岡大学先発・吉田投手はサイドハンドから丁寧且つ巧みにコースを突くピッチングで出したランナーは5回の四球のみ。
いやいやいやいやまたノーヒットピッチングで見ている方もハラハラするパターンかいな(^_^;)…と思っていたら6回からは石田投手が登板。私の周りにいたスカウト集団が一斉にカメラを回しスピードガンを構える中で打者3人相手に2奪三振にセンターフライと完璧なピッチングを見せます。
6回表に更に加点した静岡大学が8点リードで迎えた7回裏には井手投手が登板。こちらもプロ注らしくスカウト集団の撮影会は続きます。ワンアウトから四球を与え出塁を許しますが後続をセカンドゴロに打ち取り最後まで東海大学海洋学部にヒットを許すことなく7回コールドで静岡大学が勝利を収めました。
継投とコールドの参考記録扱いとは言えノーヒットノーランになるはずですしマスコミ大好きプロ注も投げているのに全く記事になっていないので、余談程度ではありますがこっちの試合も記しておきます(笑)。
今度こそおしまい