短編小説『ありがちな勇者一行 VS 魔王』

その結果起きたのは……「民衆は巨悪を倒した者を次の悪と見做す」という事態。
ただし、あまりに即物的な形で……。
「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「Novel Days」「ノベリズム」「GALLERIA」「ノベルアップ+」「note」に同じモノを投稿しています。


「魔王よ、貴様も、これで終りだ」
 全世界を恐怖と混乱のズンドコに突き落とした魔王も、傷だらけになり、自分の宮殿の玉座の間の床に膝を付いていた。
 再生能力も追い付かず、魔力もほとんど残っていないようだ。
 目の焦点さえ合っておらず、立ち上がろうとするも……失敗し、ただ、人間の体重の十数倍の重量の魔剣を床に落しただけだった。
 かつては、どんなドラゴンのモノよりも巨大で禍々しかった翼もボロボロになっている。
「もう……これまでか……。だが……」
「いかん……何か、呪文を発動させようとしているぞ」
 勇者一行の魔法使いの声。
「その前に終らせるッ‼」
 勇者のその声と共に、勇者一行は、持てる最強の攻撃魔法を放ち……そして……。
「終ったのか?」
「らしいな……」
 魔王の姿は跡形もなく消えていた。
「だが、奴が最後に使った魔法は何だったんだ?」
「それが……妙なんだ……転移門ポータルの魔法だ」
「逃げようとしていたのか?」
「わからん……だが、あの状態では逃げる事すらおぼつかない筈」
「まあ、いいさ。これで終ったんだ。帰ろう……人間の世界へ……。俺達の故郷へ……」

 その頃、人間界最大の都では、魔王が最後に開けた転移門ポータルから放たれたによって、途方もない被害が発生していた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?