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とにかく打席に立ち続けることで掴んだチャンスと、anyが目指す未来/ #Gazelle起業理由ブログ

Gazelle Capitalは、日本を築いてきた国内産業にインターネットの力で変革・変化を起こし、新しい時代の中で産業を彼らと共に形を変えて紡いでいくための ベンチャーキャピタルです。
創業初期の起業家へ伴走型のサポートを行いながら、レガシー産業の課題解決を目指しています。
本ブログでは、弊社が投資している企業の代表者に、起業に至ったきっかけや、今後目指していきたい世界について語ってもらうインタビューを、連載形式でお伝えしていきます。
これをきっかけにレガシー産業の改革に興味を持つ方が一人でも増えたらと考えています。

第二回は、当社がシード期より支援しているany株式会社・代表取締役の吉田さんにお話いただきました。

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こんにちは。anyの吉田(@kazufumi0110)と申します。
社内Q&Aと社内Wikiでナレッジを一箇所に蓄積し、いつでも検索できるようにするための情報共有ツール「Qast」を提供しています。
最近ありがたいことにインタビューを受けたり、起業家を目指す方からよく受ける質問が「起業を志したのはいつ頃からか?」という内容です。
僕の場合は「any設立の3ヶ月前」。結構驚かれますが、本当です。笑
まだまだ偉そうに語れる立場ではありませんが、今後起業やスタートアップへ興味を持つ人が少しでも増えることを願い、そんな僕がanyを設立することになったきっかけや今後目指している世界についてお話できればと思います。

サッカー小僧が「起業」を選択するまで

振り返ってみると、僕の礎を作ったのは「とにかく打席に立ち続けること」「人との繋がりを大切にすること」。これらの積み重ねが今の僕に繋がっているのだと思います。

4歳から大学卒業まで、サッカーにのめり込んできた僕は、高校や大学を選択する時も「1年目から試合に出れそうか」を軸に推薦のオファーをいただいた中から学校を選んでいました。スポーツの場合、どれだけ練習で活躍しても意味がありません。大事なのは、試合という本番でいかに結果を出せるか。そう考えた時に、試合という実践の場にどれだけ立てるか=打席に立てるか、をこの頃から大切にしていました。

社会人になってからも、少人数のベンチャーで多くの実践の場がある環境を必然的に選んでいました。
就職先を探している時に相談に乗ってくれた元サッカー部コーチが普段はIT企業を経営している方で、その方からのアドバイスがきっかけでITの領域に興味を持ちました。当時まだ50名程度だった株式会社アイモバイルにご縁をいただき、メディア広告の営業としてジョインすると同時に地元福岡から上京することになりました。

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(アイモバイル時代の同僚と。最終日の送別会で贈られた動画で号泣。。)

「起業家」の概念を覆されたのはこのアイモバイル時代です。
2013年当時、スマホアプリが伸びていた時代に様々なお客様の広告マネタイズを支援していましたが、中には個人開発者の方も数多くいました。
それまで、自分の中では「起業」というとかなり高いハードルのある印象を持っていましたが、個人でも十分にビジネスが成り立たせることができるというのを間近で見たことにより、その印象が大きく変わりました。後に自分が起業することになるとは当時は思いませんでしたが、この時得た価値観が起業へのハードルを大きく下げたのだと思います。

当時の僕は、様々なメディア営業を担当する中でものづくりをする企業と出会うことが多く、自らもサービス開発に携わってみたいと思うようになりました。ちょうど取引先だったグッディア株式会社から声をかけてもらったこともあり、サービス開発の世界に飛び込むことになりました。

当時のグッディアは、無料のゲームアプリを量産し、広告で収益最大化を目指していくという特殊なビジネスモデルの会社でした。
ゲームアプリの種になりそうなものを企画し、つくり、育てる、という一連のフローを、とにかく数をこなしていくことが求められる環境でした。
アプリの企画会議が週に2度行われ、会議の度に20〜30のアイデアを出していました。そのため、映画を見ても買い物に行っても、食事をしても、どうにかゲームにできないかを常に考えていました。
アイデアの出し方とそれを形にする育て方など、ビジネスの勘所はこの時に相当鍛えられたと思います。

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(当時手掛けていたアプリの一つ「9回裏だけ野球盤」。テレビでプロ野球を見ていて、たまたま9回裏で劇的な逆転を見たことで思いついたアイデア。)

実際に自分が企画してリリースされたアプリの総DL数は500万以上。自分の頭の中だけにあるアイデアが世の中に出て、多くの人に使ってもらう感覚をここで養うことができました。
充実した日々を過ごさせていただきましたが、事業会社の中で新規事業を立ちあげていくには、(当たり前ですが)自分一人の意思や思いだけでは進まないことも多く、アイディアはあるのになかなか立ち上がらないという歯痒さを感じることも増えてきました。

“なら、自分でやれば良いのでは“

純粋に事業づくりの”手段”として起業に興味を持ち、そう思い立ってから3ヶ月後には登記の手続きを始めていました。

なんのために事業をやるのか?100の事業案を絞り出し、たどり着いた答え

起業当初はなにか大きなミッションやビジョンを掲げていたわけではなく、小さなチームで着実に事業展開していく方針でした。まずは収益基盤を構築するために、自身の”得意”を生かしてサッカーのWEBメディアの運営をスタートし、2017年にはマンガアプリをリリース。いずれも当時のサービスのトレンドであり、市場でトップを取りにいかなくても、一定数のユーザーや売上が獲得できるだろうと考えていました。

自分たちが食べていけるぐらいの収益を得ることはできていましたが、ある時ふと思ったんです。
「自分は何をやってるんだろう?なんのために事業をやっているんだろう?」と。
考えるきっかけとなったのは、子供が生まれたことです。お父さんがどんな仕事をしてるのか、何で生活できてるのか子供が考えた時に、誇れるモノを作りたいと思ったのがきっかけです。それが世の中の課題を解決して多くの人の役に立つような事業でした。

もちろんトレンドを追うことも大事ですし、そうした領域でしっかり収益を立てている事業は心から素晴らしいと思います。
しかし、当時の僕にはそれらの事業に対する熱い気持ちや欲がなく、「二番煎じ、三番煎じでもそこそこの売り上げが出れば良いや」と心のどこかで思ってしまっていたんです。そんな姿勢のまま事業を続けて行って良いのだろうか、自分が魂込めて取り組める事業とはなんだろうか。何度も自問自答を繰り返すうちに「社会的インパクトを作れる事業をつくりたい、そのためには何かしらの課題解決で貢献していきたい」と考えるようになりました。
そこからは一気にギアチェンジをかけました。社内のリソースを新規事業に集中させるべく、運用していたサービスを売却し、同時にどんな課題に取り組むべきなのか、文字通り100個ほどの事業アイディアを必死に考えました。

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(今のQastにつながる企画書の一部。)

その約100の事業案の中で残ったのが「社内での情報共有」でした。
かつての社会人経験の中で、社内で何度も同じ質問が飛び交っていたり、同じミスを複数の人が繰り返していたり、どこを見たら必要な情報が手に入るのかが分からず結局人に聞くしかなかったりなどと、モヤモヤするようなシーンを数多く経験してきました。
おそらくこの記事を読んでくださっている社会人の方のうち、多くの方が僕と同じような経験をしてきているのではないでしょうか。
一つ一つは些細なことかもしれませんが、積み上がれば大きな負債となります。そうした「情報のサイロ化」が社員の生産性を落とし、ひいては会社の成長スピードを落としている状況が、仕方ないこととして見過ごされていることに大きな違和感がありました。
もちろん世の中には当時から同様の課題解決に向けた社内wikiサービスがいくつか存在していましたが、調査してみるとエンジニアの活用に主眼を置いたものがほとんどだったんです。
目指している社内課題を解決するには、導入されるだけではなく、社内の文化として根付くレベルで活用されるものを作らなければ意味がありません。「どんな職種の人にとってもわかりやすいUIであること」「思わず活用したくなる”社内通貨”の仕組みを掛け合わせること」。その仕組みに勝算があると目をつけ、開発に取り掛かることにしました。

資金残高が一桁万円になった時も・・・anyの窮地を救ったのは

Qastは2018年のβ版リリース後、現在ではありがたいことに2,000社以上の企業様にご活用いただいていており、日本を代表するような大企業での活用も広がってきています。
こう書くと、すごく順調なように見えるかもしれませんが、全くそんなことはありません。(苦笑)
事業をピポットし、選択と集中を行いQastの開発に集中するも、しばらくは資金調達も最初は全くうまくいかずかなり苦しかったです。本当に一番辛い時は、預金残高が数万円になってしまったこともありました。
Qastをリリースするも、当然人を雇ったり広告出稿できるほどの資金はなく、投資家周りに奔走する日々でした。それまで事業開発に全力を注いでいたということもあり、資金繰りに関しては当時は本当に無知で、恥ずかしながらラウンドごとに投資家が違うということも知らずに片っ端からアプローチしていたんです(笑)
あえてトレンドを追うのではなく実需を満たすことを追求して選択した事業領域でしたが、調達のしづらさまでは想像ができておらず、かなり苦しみました。挫けそうになることも多々ありましたが、元々根がポジティブで、かつ負けず嫌いな性分から、”その分社会に認めてもらえるような高いクオリティのものをつくらなければ”と自身に発破をかけ続けていました。
そんな折にBonds Investment Group(当時はオプトベンチャーズ)の細野さんの紹介でGazelle Capital代表の石橋さんに出会いました。
当時の石橋さんはCROOZ VENTURESから独立してVC設立することを決めた頃でした。Gazelle Capitalは「創業前後の起業家を支援すること」、それゆえに「数字のみではなく実績や人柄などから総合的に出資判断する」という投資方針で、数々のVCに出資を断られていた当時のanyにとってまさに救世主のような存在でした。初めてシードラウンドの調達が決まった時の高揚感は今でも忘れられません。

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ちなみに石橋さんに、なぜ当時のanyへの出資を決めてくれたのか、その理由を聞くと「当時は自分も立ち上げ期だったので決して簡単な判断ではなかった」と前置きしつつも、長年一緒にやってける人なのか?という観点では、これまでの経歴や経験から「やりきり力」を感じてくださり、決断にいたったそうです。自分で言うと恥ずかしいですね。。笑

その後も、事業としてはしばらく苦しい時期が続くことになるのですが、Gazelle Capitalには資金だけでなく様々な方面で助けていただき、少しは未来が見えるようになってきた今日に至るまで、間違いなくanyにとって大きな支えとなっていただいています。
例えば日々の経営にあたっての相談に乗ってもらっていることはもちろん、投資家や起業家とのコミュニティへ誘ってもらい、自身の経営者としての世界が広がっていくのを感じています。そこから営業に繋がったこともありますが、なんと次なる資金調達へのきっかけとなったことも!
採用支援として候補者の紹介をいただくこともありますし、経営面でもAWSが無料で使えたり、様々なSaaSが低単価で使えるなど全方位で支えてもらっており、創業期の起業家が抱えるであろう様々な悩みのうちの一部を軽くしてもらえているので、より「やるべきこと」に注力できている感覚があります。

anyで目指す未来

現在anyは従業員数9名。まだまだ社員数としては駆け出しですが、無駄のない合理的な組織を追求しつつも、メンバー同士が前向きに業務に取り組み、協力し合ういいチーム作りができていると自負しています。

話がそれてしまうのですが、スタートアップって、サッカーとちょっと似ているなと思うんです。(笑)サッカーって、能力が高いだけの個人が集まっても勝てないんですよ。監督のサインに従って行動を決定する野球とは違って、サッカーはある程度の戦略はあれど、実際には各局面でのメンバーの判断に依存するスポーツなんですよね。そして、その判断が自分の個を押し出すような独りよがりなものではダメで、チームで結果を出すことを意識し、時には他のメンバーの足りないところをカバーするようなプレイも必要になってくるんです。サッカーのそういったチームの弱いところを補いながらも各自の強みを発揮するところが、スタートアップと通じると思っています。
抽象的な表現になってしまいましたが、僕はサッカーを通じて「チームワーク」の大切さを痛いほど学んできていて、だからこそanyでもメンバー同士の一体感を何よりも大切にしたいと考えています。

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先日、メンバー全員でプロダクトの今後についてディスカッションする機会をつくりました。例えば「どの機能をどのような優先順位で開発するか?」というお題に対して、エンジニアでは気づけなかったようなお客様の要望をカスタマーサクセスが意見してくれたり、「Qastのマーケティング戦略」について語る場でエンジニアがプロダクト開発目線での意見をくれたり。各々の得意領域を生かしながら一つのものを作り上げていく、「チーム」と言える組織になったのだと改めて感じて胸が熱くなった瞬間でした。

僕らは、「社内のナレッジシェアのあり方」を高度化していくことを目指しています。
かつて終身雇用が基本だった日本企業においては、ノウハウや知識を独占することが社内での優位性を保つ手段とされてきた背景があります。しかし終身雇用制度が崩れ、人材の多様性・流動性の高まる昨今の状況では、いちメンバーの情報の独占が非効率な業務を生み、ひいては組織の進化・発展を止めることに繋がりかねません。
適切なナレッジシェアの仕組みと、それをメンバーひとりひとりが能動的に行うことのできる文化づくりを提供し、組織のパフォーマンスを最大化させていくこと、それらを積み重ねていくことで世の中に活力を生み出すことに貢献していきたいと思います。

(先日開催された「第4回 社会課題の解決を支えるICTサービス大賞」にて、ありがたいことに「新型コロナ対応賞」を受賞しました!)

最後にanyからのお知らせ

社内の情報共有にのあり方にモヤモヤした経験のある方はきっと少なくないはずです。その原体験を生かして、世の中の課題解決に取り組んでみませんか?
今、anyは日々新しい変化が起きてエキサイティングな環境です!

少しでも興味をお持ちいただけた方、まずはカジュアルにお話ししましょう。
こちらからご応募お待ちしています!

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Gazelle Capitalはレガシー産業に革命を起こす起業家を応援しています

Gazelle Capitalでは、日本のレガシー業界を変革するスタートアップへの投資に力を注いでいきます。
農業・林業・漁業の一次産業から、建設業、製造業、不動産や保険、金融、小売、医療・ヘルスケアといった領域も含め、IT化により大きな革命を起こそうとしている創業前後の起業家をメインに、あらゆる成長支援を行っていきたいと考えています。

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